第二十話「あらゆる繋がり」
「運命感じちゃうかも。それとも必然?」ー鷲尾菜々子(17)ー
一つ気になる事があった。
『黒場』はなぜカルト教団に目を付けたいのかー。
第三者から見れば少なからず普通の高校生だった青年が犯罪まがいな事をしでかしたのかと疑問を抱く。
事件に教団が関わりがあるかもしれない。
僕達は手分けして何か情報がないか、調べてみた。
建物には四部屋ある。
僕達が集まり話をしていたのは中央にある広場的な部屋。
集会場と言った方がイメージがつく。
その部屋に連なる様にそれぞれの部屋が独立している。
中心の部屋以外の2つの部屋には入れた。
1つは見渡す限り部屋と表現するよりは牢屋に近い。
部屋の中央に区切る様に柵が設けられていた。
「高校生の私達なら逃れる高さだった」
見に行った矢田は話した。
もう1つの部屋は教室の様なものだった。
学習机や椅子が散乱している。
この部屋に入ると異臭も広がっていた。
「まるでこがした匂い」
ここを見つけた千歳は語った。
最後の部屋には鍵が掛かっていた。
「最後はここだけだな。」
「まさか、手掛かりがないなんてね。」
各部屋には写真や書類らしき物が落ちていたが、長年の廃墟のせいか。そもそもの黒く劣化している物ばかりで他は落書き等でまともに読み取れる物はなかった。
「さっきの部屋の匂い・・そして黒ずんでいる写真。火事にでも遭ったみたいだよね・・・」
「火事か。それならその『黒場啓』って男がやったんじゃないかぃ?」
「教団の建物に放火をして恨みを晴らしたとでも?」
「それって本当に『黒場』さんなのかな・・・?」
千歳が頭を抱えた。
「焦がした様な匂いと部屋全体の黒ずみと劣化。少なからずさっき私が見た部屋がその火事の現場なら、私は教団を狙っていたとは思えないような・・・・。
教団自体を狙うなら中央の部屋、今私達が居るところに火をつけるんじゃないのかな?」
今この中央の部屋にいる3人、千歳・矢田・武田は周りを見渡した。
「・・・私の目にはただ腐れて劣化が進んでいる様に見えるわ。武田君はどう思う?」
「同感だね。この部屋に異常性が感じられない。
むしろ部屋の構造上、放火をするならここ以外ないだろぅと思うがね。」
武田はポケットからくしを取り出し、自身の髪をといた。
「仮に『黒場啓』が教団をターゲットにしているなら中央部屋、今この部屋にするべきだ。
そんな事、頭の良い奴が分からないなんて事はないだろうねぇ。
ここはキリスト教会の建築に沿って話すならいわば『集中型(有心型)』に近い構造をしている。
中央に祭壇が配置され、それを囲む様に円形になっているんだぁ。
そして極め付けはこのタイプの教会は構造上、内部空間を欲しているんだよ。部屋全体が中央に寄ることによって密閉感が出でしまうからね。だから集中型の教会は装飾に力を入れていなんだ。」
「・・つまり、大惨事を招くなら普通はこの部屋に放火するはず。火が広まりやすいから・・・」
千歳と矢田は顔を合わせた。
「武田君・・・・。意外と頭良いのね・・・」
「分かったかいぃ?伊達に陸部エースを名乗ってはないのだよ」
「それ、理由になってないよ・・・・。
でもこれで更に分からなくなったね。」
千歳はその場にしゃがみ込んだ。
(そもそも本当に『黒場啓』が火を放ったのかしら・・。
火を放つ・・・『放火魔』。嫌なものが繋がるわね・・。)
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僕は1人、鍵の掛かっている部屋の裏側にいた。
裏口があるかもしれないと考えたからだ。
「まさかここで会うとはな。奇遇ではなさそうだ」
「本当。運命感じちゃうかも・・。それとも必然?」
「仕組まれた運命だな」
矢田に少し似ている様でどこか違う雰囲気を持つ少女。
僕は知っている。
「なんでここに居るんだ?鷲尾菜々子。」




