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第二話「初めまして、前世の僕」

「過去に囚わるより、今を羽ばたきたい。」ー卒業生代表・津神凛斗(17)ー

 

 違和感。彼女が話した言葉の意味が僕には、分かる。

 

 思い描く『普通』に躓く筈のない『何か』。


 その答えを矢田都乃果は知っていると言うのか。

 

 「少し話そう。遠出君。」

 僕から少し距離を取り、彼女は髪を掻き分けた。

 「私、一年生の頃にいじめを受けてたの。授業中に後ろの席のいじめっこから生ゴミを投げられたり、下駄箱の靴に画鋲を入れられたり、トイレ中に水をかけられたり。

まぁよくあるいじめだったんだけど。」

 「・・・」

 「自分の何が気に食わなくてこんな酷いことするんだろうーってずっと考えてたけど分からなかった。考えれば考える程自分の存在意義が見えなくなって。」

 「それで不登校か・・・」

 冷たい表情をしていた矢田は少しだけ表情が柔らかくなった。 

 「御名答。それから部屋に篭って、更に考えて考えて。思い詰めた末、自殺しようと決意したんだ。」

 「自殺?」

 「そう。自殺。バカだよね。本当に自殺する勇気ある人間なんて、もっとえぐい人生の人達だったろうに」

 「急に第三者目線だな、矢田。悪いが、まるでさっきまで自殺を考えていた人間の思考じゃないな。」

 下校のチャイムが響く仲、彼女はにやけていた。

 雰囲気が相待って、気味が悪い。

 本当に魔女だ。


 「そうだよ。これが私の持つ『違和感』。私が『普通』じゃなくなった瞬間。」

 次の彼女のセリフは僕の感じる違和感を加速させた。


 「『死ぬ事』を考えた瞬間、私の中で、『死んだとき』を思い出したの。」

 

 唖然と佇む僕。場の空気間はまるでブラックホールかの如く彼女に吸い込まれた。

 

 「・・・言ってる事が理解できないぞ。何の話だ。」

 「『記憶の断片』と言うのかしら。この場合は、えーっと、あーそうだ。最わかりやすく言うと『前世の記憶』ね」

 「というと・・・」

 「『転生』したってこと」


 転生==今日こんにちでは異世界系二次創作などでよく使用される言葉だ。

 

 「私は矢田都乃果として生まれ変わったいたと気づいたの。私の前世の名前は『三ヶ島咲みかじまさきーーー」

 (みか・・・・じ・・・・ま・・・?)

 その名前は初めて聞いた。だけどどこか懐かしい響きに戸惑ってしまった。

 「やっぱり聞き覚えがありそうね。遠出君」

 「誰だ・・・お前・・・・・」

 矢田は奏多の肩に手をやった。


 「あなたのおかげで確信がついたわ。遠出君、あなたも『転生』してるわ・・・」

 「いえ、あなただけじゃない。『2年2組全員が転生している』かもね・・・・」 


 ー2年2組。37名。ー

  

 『クラス全員、転生者ーーー』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「矢田都乃果(16)」

 ・小さいながら会社を経営している社長の父と、一人娘だった母を持つ。

 ・幼い頃から視力が悪く眼鏡を着用している。

 ・趣味は読書。また実家で飼っているゴールデンレトリバーと遊ぶのが日課。

 ・中学入学後、一人教室で読書している姿を揶揄わられた事から始まり、いじめの標的になっていく。

 ・高校は自分の事を誰も知らないであろう学校を目指すが根暗な性格により面接で不合格。受験に失敗。

 ・最悪な事に、いじめの主犯格と同じ私立に通う事になる。

 ・2年春、自殺を考える様になる。

 ・首吊り自殺を企てるが失敗。その際に、前世の記憶の断片が蘇る。



 「私が今持っている記憶の断片は、

 『前世の自分の名前・死因』と『一部のクラスメイトの名前』ー」

 

 矢田は話を続けた。

 「最初は、「他にも誰か、私と同じ転生した人間」がいるんじゃないかという安直な考えから始まったわ」

 「身近にいるかもと学校に顔を出すようにして、クラスの様子を伺ったわ。教室には入らなかったけど。私の存在が過度な刺激を与える可能性を考えていたからね。」

 「その結果、前世の記憶、『三ヶ島咲』の記憶から当時のクラスメイトに似た言動をする人物が何人か見つかったの。まるで前世と今世、ふたつの性格が表裏してるみたいで・・・」


 奏多は不意にとある人物を思い出した。


 「剣崎守・・・古川文香・・ 」

 

 「遠出君、その二人の特徴は?」

 「剣崎守は、ラガーマンの様に堅いが良い。金髪でオールバック。見るからに男の中の男って感じだが、時々口調が女々しくなる。弱音を吐くタイプじゃないが、体育となると急激に自信をなくしている。」

 「もう一人の子は?」

 「古川文香も同じだ。普段は髪が腰まで伸びており、見た目は清楚系だ。だけどごく稀に何年か前のギャルみたいな話し方をする時があるな・・」

 (あと千歳曰く彼女は僕に興味があるらしいが・・彼女の憶測だから言わなくていいか)

 「なるほど・・・」

 矢田は少し考えた後、目つきが鋭くなった。

 「『信濃美月しなのみずき』と『錦戸海夢にしきどまりん』の特徴に当てはまるわ、その二人」


 『信濃美月』。体育が苦手な女の子で常に前髪を気にしていた。友達付き合いは比較的良い人種だったが、友達の愚痴を他人に言うタイプの子だったらしい。

 『錦戸海夢』は金髪ロングの女の子。クラス内カーストも上位で、裏では危ない物に手を出していたり、実は物凄く乙女な子だったりと様々な噂を持っていたと聞いたーー


 この2名は、『三ヶ島咲』のクラスメイトだーーーーーーーーー


 「それに私の前世に聴き覚えがある遠出君−。やはり間違いないようね」

 奏多の顔色が少し暗くなった。

 「・・・まぁ、信じられないが、こんな偶然、あってたまるかよ。・・だけど俺の中の『違和感』の正体がわかった気がする」

 「その違和感を君は感じていたという実態。君ももしかして」

 「・・・・・本当、おかしな話だよな。三ヶ島。」

 奏多の様子が一転した。まるでゴミを漁る鴉だ。

 「あなた、名前は?」

 (ーありがとう矢田。君のおかげで少しばかり懐かしい過去を思い出したよ・・)

 鴉は翼を広げ、己の強さをアピールするかの様に答えた。


 「俺の前世の名前は、『津神凛斗つがみりんと』だ。」 

 

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