第十九話「協力者の集い」
「生まれ変わりこそが、人類の再スタートなのだ」ーとあるカルト教団団員の一言ー
「ちょっと待ってよ、千歳さんはともかくその男は」
「実は僕たちはーーーーーー」
話を遮ろうとする矢田を差し置いて僕は話し始めた。
未解決事件の真相を探っていること。
僕たちが転生していること。
相手も『記憶持ち』だということ。
千歳は何がなんだか分からない様子だ。
それが一般的な反応だ。だがそうじゃない。
僕が敢えて千歳に話をしたのは理由がある。
「・・・2組全員が転生者か・・。
だから遠出君と矢田さんの様子が変わったんだね。
そして。私が遠出君に呼ばれた理由ーー。
私も『記憶持ち』だからって事であってるよね?」
そう。2組全員とは「彼女含めて」の話だ。
「察しがいいな相変わらず。
千歳、今まだの話を聞いて何か思い出した事はないか?
前世の話をトリガーにして『記憶持ち』になる人が多いんだが・・・」
「・・・・残念なことに何も思い出せないなぁ」
「やはりか・・何か思い出したらすぐ僕に教えてくれ」
千歳はまだ『記憶持ち』にはなっていない。
仮になったとしたら奴らに目をつけられる。
そうならないように、僕が彼女を守る。
「ちょっといいかな・・・・・遠出奏多。俺は2組でも何でもない。
無関係だ。それなのに何故俺を誘ったんだ?」
「『2組じゃない』からだ。アッチもおそらく他クラスの協力者を用意していると僕は読んでいる。情報操作のためにな、僕の評判を落とすと言う目的で」
武田は僕の方へ近づいた。
「訳はわかったが、もう一度聞くぞ?何故『俺』なんだ?」
「お前は本気で僕と戦った。そこで感じたんだよ。『武田』と言う人間の本質をな。自分に降りかかる神羅万象に逃げずに真っ向から本気を出す。いわば『手を抜かない男』。だから惚れたんだ」
「ふんっ・・・・」
満足そうに前髪をかき分けた武田は下がった。
「遠出君、少し暴走が過ぎないかしら・・・・?」
「僕らはもう観覧席から見てられないんだ、矢田。わかっただろ今日で」
「そうだけども・・・・最近あなたが何を考えてるか分からなかってきたわ」
「あまり僕に気を使うな。お前はお前の好きなように動けばいい」
「良くないわよ!!!!!!」
矢田は珍しく叫んだ。
「私たちは・・・・協力者なのよ?二人を連れてきた事だってそうよ・・・
私に一言話してくれたっていいじゃない・・・・・・」
「それは・・・」
僕の肩にポンと手が乗った。
千歳だ。
「矢田さんに謝って遠出君。私、まだ何が何なのか整理してできてないけど、二人だけの絆は感じたよ?その絆を壊しちゃダメだよ・・・?」
「千歳・・・・・・」
千歳に説得され考えた。僕は矢田を『信用』していなかったのかもしれない。
彼女を思うばかり一人で先走り過ぎたのだ。
「悪かった矢田。もう少し信用する努力をするよ」
「・・・・・・・・・。ほんと、余計な一言が多いわね」
怒りながら矢田は振り返って、近くの机に腰をかけた。
きっと彼女は僕を理解してくれているのだ。それくらい信用してくれている。
僕もちゃんと向き合わないといけない。なんだって協力者なんだから。
「仲直りは済んだかいぃ?魔女ちゃん」
「済んでないわよ。その意呼び方直さないと殺すわよ」
「おー怖い怖い。ところでだ、遠出奏多。今君たちが持っている情報を教えてくれないか?手を貸すにあたって共有は大事だろうぉ?」
「あぁもちろんだ。僕たちが知っているのはーーーーーーーーー」
僕は千歳と武田に伝えた。
ー遠出・矢田が知っている情報ー
①2組が全員転生者ということ。そして当人含む数名が『記憶持ち』として前世の記憶を思い出している。
②近元学(海原力)は敵側についている。
③『津神凛斗』は未解決事件の主犯格の可能性がある。
④矢田都乃果(三ヶ島咲)と古川文香(錦戸海夢)の関係性。
「こんな感じだ。まだ手探りではあるが。」
「遠出君。これって・・・・・」
「気づいたか千歳ちゃん」
「そうよ二人とも。この情報には『穴』があるわ」
③に関しては正確な情報ではない。他情報とは違い、アリバイがないのだ。
「これは近元が教えてくてたものだ。つまり、『偽の情報』の可能性だ」
「だけど遠出君自身思い出してない限り、この説も0%じゃないんじゃ・・・」
「実はここにくる前、そう、教室で宣戦布告を受けて思い出した事があるんだ。
『こんな風にすぐからかってくる切れ者』がいた事を。」
「そいつの名前は?」
「『黒場啓』。前世のクラスの中で一番頭の良い人間。IQ200越えの男だった」
「黒場啓・・・・・・思い出したわ!!その男は確かとあるカルト教団を潰そうと計画していたって話を聞いた事がある」
「ヤバいやつだな・・・その前世のクラスの連中ってのは頭おかしいやつしかおらんのか・・・・?」
あの武田が少し引いていた。もう一度言おう。あの武田がだ。
「思い出したか矢田も・・・・・」
「遠出君、私たちの敵って『黒場啓』なのね?」
「おそらくな。そいつがリーダーと見て良い。そして今僕たちがいるこの場所こそ、奴が過去に手を出そうとしたカルト教団の教会だ」
よく見るとチラホラ写真が落ちている。本棚には書類のような物がある。
「『黒場啓』の情報を集めよう。まずは手始めに『黒場啓と教団の関係性』についてだ」




