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第十八話「宣戦布告」

「見る者は下。また見られる者は上。世の中の序列は目線を変えた瞬間に書き換わる」ー武田・G・ドモン(17)ー


 黒板に書かれている文章。明らかにいち個人を陥れる攻撃。

 嫌がらせ、なんて甘いものじゃない。


 「遠出君、これって・・・・・」


 「あぁ、完全に奴からの挑戦状だ」


 まだ時刻は7時半。

 クラスの半数以上は教室には来ていない。

 

 「な・・・何これッ・・・どういう意味・・・・?」


 千歳が疑問を抱いている。

 ○○○は思った以上に策士だ。

 『爆弾魔』。この一言を添える事により、まだ見ぬ『記憶持ち』を発見し、自分の懐に誘い、自分への宣戦布告とも捉えられるように仕組んだのだ。


 矢田はすぐさま黒板に向かい、消してくれた。


 「あなたたち、こんなくだらないイタズラ魔に受けない方がいいわ」


 久々に聞く矢田の声に怖気ついたのか、生徒達はいかにも何も見ていない様子で自分の席へと戻っていった。


 (すまん矢田。助かったよ)

 (仕方ないわ。無関係の人まで絡み始めたら、余計な蛇足が増えるだけだもの)


 この場は矢田が顔を立ててくれたおかげで助かったが、次の手を控えてる筈だ。

 のんびりとはしていられない・・・・。


 「遠出君。大丈夫・・・?」

 「問題ない。千歳、間に受けるな」


 千歳が心配そうに僕の顔を伺った。


 「それならいいんだけど・・心配で」

 「本当に大丈夫だぞ。ありがとうな」

 僕は千歳の頭を撫でた。

 その様子を横目で矢田が見ている。


 「何してる遠出君。千歳さんの頭ちゃっかり触っちゃって。遂にそこまで落ちぶれたのね」

 「今日教えようとしたんだが、千歳は僕の彼女だ。昨日付き合った」


 矢田は引き攣った表情で僕を見る。

 矢田の後ろから勢いよく広川が飛び出してきた。


 「おいみんな聞いたか!?あの、堅物奏多くんに彼女ができたそうな!!

 しかもしかもぉ!?お相手は千歳さんだぁぁぁ!!!」

 広川の一言でどこから沸いたか分からないが、フラッシュモブが集まってくる。


 「ふゅーふゅー!!こんな奴が爆弾魔?

 まさかだろ!?こいつぁ千歳のハートを爆発させちまっただけだぜぇ!?!」

「ちょっ・・・・・ひろかわくん・・・・」

広川、僕はお前のそういう所は嫌いじゃない。

 だが、もう少し千歳に気を使ってやれ。


 (まぁなにはともあれ、場の空気は帰れんじゃないかしら?)

  (そうだな矢田。これはチャンスだ)


 奴は僕達を攻撃してきた。

 名前を出して世論を味方に付けようとしている。

 これは宣戦布告とみていいだろう。

 だから僕も刃をむける。


 

 

 その日の夜、僕は矢田をとある場所に誘った。

薄暗い廃墟。人気はないが湿っぽさもない。

 数ヶ所の部屋があり、それぞれ大きな額縁落ちている。

 写真か何かが飾られていた様子だが、額縁の中身はすでに撤去されている。


「お待たせ。遅くなったわね」

「大丈夫だ。よく来てくれたな」

「ちょっと待って。なんで彼もいるのよ」


僕はその場所に千歳と、運動会で僕と争った陸部エース・武田を呼んでいた。


「失敬だな。それはこっちのセリフだ。不登校魔女め」

「百歩譲って千歳さんは分かるけど、何故このバカも連れてきたのよ」

「バカとは尊敬の意味合いを兼ねて呼ぶべきなのだよ?バカも一種の天才の括りなのだからね」

「まとも風に話してる所が馬鹿なのよッ・・・」


 イラついてる矢田を見ながら、武田は微笑み、前髪を掻き分けた。


 「あの、遠出君。私達を呼んだ理由って何?」


千歳が質問をした。


 「僕と矢田はとある事情から未解決事件を追っている。訳を説明しても信じて貰えないと思うが、これから説明する。

 そして、千歳、武田。

 君たちは僕と矢田の協力者になって貰いたい」

 

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