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ようこそ旅のお方

作者: 雉白書屋

 やあ、そこのお兄さん。旅のお方だね? この街に初めて来たんだろう? ちょっと、こっちに来てこの年寄りの話をお聞きよ。いい場所があるんだ。とぉーってもねぇ、ひっひっひ。  

 いいかい、まずこの先にある「ビリー・ブー」って看板を出しているバーに入るんだ。「ブー」っていうのは、別にバーの綴りを間違えたわけじゃない。正式な名前は「ビリー・ブーツ」。その最後の部分が掠れて読めなくなっただけさ。バーの名前がブーツ? って思っただろう? そのバーの店主の先祖が名のあるガンマンでねぇ。といっても、優れていたのは銃の腕じゃなくて、飲みっぷりのほうさ。彼は自分のブーツになみなみと酒を注ぎ、どちらが先に飲み干すかというブーツデスマッチの考案者なのさ。どうだい、反吐が出るだろう? ま、詳しい話は店主から聞くといいさ。興味があるならね。

 それで、重要なのはここからさ。その店でまず酒を一杯と、ミルクを注文するのさ。それから、店主にわかるように三回テーブルを叩く。すると店主が頷いて、店の裏口を通してくれるのさ。先を進むと「エリー・ザ・ピップス」という服屋がある。なあに、売り物は婦人服ばかりだが、あんたに女装しろってんじゃない。ふふふっ、そこで一式そろえて女装し、舞踏会に出た男の話があるけどね。まあ、それはいいとして、ああ、気になるなら店主に話を聞きな。それで、そこでハンカチを一枚買い、店を出て左に進むと「エポラ」という花屋がある。そこで店主が勧める花を三本買って、ハンカチに挟むんだ。歳のいった婆さんが店主なんだが、背筋はまだピンとしてて、花屋のくせに、いつもタバコを咥えているんだ。でも、その昔は美人で、いくつも修羅場をくぐってきたってんだよ。まあ、見りゃ納得するだろうねぇ。 

 それで、店を出て左に曲がると、今度はボロい木造の家が見える。そこに入って、ああ、構うことはない。鍵は開いているよ。そう、気にすることはないんだ。あんた次第だけどねぇ……。そこはね……ゴーストハウスなんだよ。ああ、嘘なもんか。まあ、行ってみればわかるよ。それで、大事なのはね、その家に入って、地下に降りてこう唱えることさ。「イサンカサンプシンララルア」とね。三回だよ。

 それで、家の裏庭に門があるから、そこを通って右にしばらく歩くと今度は石像がある。その石像が向いている方向に進むと、「ロイアー」って料理店がある。腹が空いている頃だろうから、そこで好きなものを頼むといい。ただし、合言葉を忘れずにね。合言葉は「ヒッグス」だ。その店の肉料理は特別でねぇ。ひひひ、どう特別かは店主に聞くといいさ。

 その後、店を出て左に曲がり、その先を行くと……何があるかって? それは行ってみてからのお楽しみさ。しかし、あんた、メモを全然取らなかったねぇ。記憶力に自信があるのかい? まあ、あたしほどじゃないだろうけどね。年寄りにしては大した記憶力だろう? え? そうでもない? ふーん、そうかい。もう一度聞きたくても言ってやらないよ。え? 会うのは二度目? ああ、全部回ってここまで来たわけだね。そうかい、じゃあこの街を楽しめただろう? ほら、じゃあここに金を入れていきな! つべこべ言わない! あたしたちはこれで稼いでるんだよ!

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