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Unverziert【満つ】


Unverziert ウンフェルツィールト(装飾音無しで)(独)


ヴェルーリヤが気が付くと、そこは森だった。子供の頃、まだ命を狙う敵など居るとも知らない時にラズと遊んだ森を思い起こさせたが、そこでは無かった。もっと静謐で、懐かしく、厳かだった


ヴェルーリヤが導かれるように歩いて行くと、木々は開け、その空も見えない程に繁った枝の天井の下に美しい大樹があった。その根は清らかな水を湛えた湖に浸され、木の幹は内側から仄かに蒼白く光っていた


ここは聖域(サンクチュアリ)だ。自分が思い出した事の無いほどの深い記憶が囁いた。ここが在ると知っていたが、それがどこか、どうやって行くのかは知らない。だがここに居ると言う事は、己は死んだのだ。何故、どうして。今まで片方が死ぬともう一方も死んだ。だが今回は外からの死に至るような要因は無かった

ラズと離れていたから…。それしか考えられない



「ヴェル…」

名を呼ぶ懐かしい声が聴こえた。振り向くとラズワードが居た

「ラズ、貴方…戻ったのね」


寸前まで考えていた事を忘れた。当たり前のように、歩み寄り、口付けをし、二人は抱き合った

周囲には笑い声が聴こえる。双青の都の民だ。その声と気配が二人を取り巻き、さざめくように満ちる。目を閉じると、何事もなく未だ島で人々の営みがなされているのかと思われた。だがそのひと時が過ぎると、声と気配は消え、誰もいなくなったのだと思い知らされた


亡くなった人々の命がここを通過しただけだ


やはり国は滅んだのだ。ヴェルーリヤは涙を流した

ラズはヴェルを抱き締め、その髪を撫でた

「済まなかった、貴女を守れず」

ヴェルーリヤは思い出し、気が付いた。対たるラズワードと離れている期間が一定になると、自分達は死んでしまうのだ。ひとつの命で出来ている対の性質だ


命の大元たる姫神を守る役に徹する為に、王にならずに隊長の人格を作ったが、その方法では離れている事に限界があったのだ

己がラズワード隊長と離れる事を極度に恐れていたのは、そう言う訳だったのだと悟った


「ここは大元か」

「ええ、我の内側…」

ヴェルーリヤは答える

「これからどうすれば良い」

「貴方はどうされたいの」

ラズワードの問いに、ヴェルーリヤは尋ねた


「機会を得たい。もう一度興そう、かの国を。目指すものはそこに在る。命がそのものとして暮らせる国を」

「それが貴方の願いなのね」

今度はラズワードが尋ねる

「貴女は何が望みだ」

「我が望みは貴方と共に在る事」


ラズワードは少し考え込む

「だがそれでは全てを解決は出来まい。彼らが命を疎かにする理由が満たされねば」

ヴェルーリヤは微笑んで頷いた

「満たされましょう。全ては満たされましょう。それが(ことわり)。全ての(よし)無き事の由が無きものと知れたなら…

尽きらば満たされ(つい)となりましょう」


そして大元は彼らを送り出した


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