表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/60

Ruing【追う者】

ruing ルーイヒ(静かに)


「待て!」

そう叫んでも、その声の通じる相手では無いのだ

追いかけている相手は図体がでかく、重そうな身体を引き摺るように大通りを走り去って行く

俺は走って追いかける。身軽に壁を走り登ると、そのまま大きい敷地の屋敷の塀の上を走る。


それが襲おうとしていたのは牛車だ。牛車は異変を感じたのか、止まり、中から誰かが降りて出た。高烏帽子と服装から平安時代の公家に見える。牛引きは刀を抜いて襲い掛かる大きい影に向き直った。

自分でもとんでもない速さで駆け抜けて、其奴(そいつ)の居る地点に向かって行く。背に担いだ剣に手をかけ、抜く。抜き身は白く輝いて、夜の闇に関わらず閃く。反射するような光は周囲に無いのに。そしてそのまま塀から飛び降りる。結構な高さなのだが

「我が致す、逃げたもう」

身体の重さごと刀に掛けて鬼に斬りかかる

鬼…

その大男は確かに鬼だ。二本の角が額に生えて、焦点の合わない目でよだれを垂らしている。正気の人には見えない


鬼は虫でも払うかのように俺の振り下ろす刀を払うが、その手はざっくりと斬れた。ぞっとする。肉を斬り掌の骨を砕く感触と手応えが伝わる。だが俺自身は怯まない。多分夢の中の俺はこう言う事に慣れているのだ


逃げろと言ったのに、牛引きと公家の男はそこに立ったままだ。俺は舌打ちをする。助太刀など、足手纏いだ

だがその公家の男が祈るような素振りをすると、鬼はぴたりと動かなくなった

その状況を不思議に思っている間に、牛引きは抜いた刀を振って鬼の喉を真横に斬り裂いた。案外呆気なく鬼は倒れた


「助かったぞ。逸彦殿」

「何故我を知る」

訝しんで俺が答えると、公家の男はふふと声を控えて笑った

「覚えて居らぬのか。実穂高だ。先だって宮中で会うた中に居ったぞ。我が舞を見たであろう」

えっと思ってその烏帽子の男を見る。成る程、舞は遠くから見たが、小柄だし、身のこなしに品があるし、きりっとした眉の形と白い肌の色を良く覚えていた。美しい舞だと思った


夢の中の俺はもう鬼退治が終わったので、今晩休む木を探す事へと興味が移っていたのだが、俺自身はその美しい顔立ちに見惚れて、ずっと見ていたいと思った。どこかで会ったような気がしていた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ