Rinforzato【救済】
Rinforzato リンフォルザンド(その音を急に強く)(伊)
颯雅は凛にすがって泣いた。凛は颯雅を抱き締めた。泣く颯雅を見るのは初めてだった
凛は颯雅がショック状態で、このまま返す訳にも行かないと思った
「颯雅君、どうする?帰れる?このままうちに泊まる?」
颯雅は黙って頷いた
凛は颯雅の携帯電話を借り、自宅にかける。電話に応答したのは母だった。凛は母に簡単に事情を話す。颯雅が何か精神的にショックを受けて自分に会いに来たので、このままにして置けない。連れて帰って泊まって貰いたいと相談した
咲雪は取り敢えず、連れて帰って来なさいと言い、電話を切ってからさて夫をどうしようかと考えた。幸い夫はたまたま会議が長引いてまだ帰宅していない。兄の東実生羽に電話をして、凛に聞いた事情をそのまま話し、誠時が邪魔しないよう助けてくれるように頼んだ
十分程経つと凛が颯雅を連れて戻ったが、その颯雅の様子を見たら、凛の言う通りだと咲雪は思った。
凛は颯雅を連れて二階の自分の部屋に連れて行き、ベッドに寝かせ、自分も隣に横たわり颯雅を抱き締めてその髪や背中を撫でる。そのうちに泣き疲れた颯雅は眠り始めた
その寝息を聞くと凛も安心し、しばらく自分も目を瞑っていた
凛が颯雅が眠ったのを見届け、そっとベッドから抜け出し階段を降りると、居間には東と咲雪が居た
「どう、彼落ち着いた?」
「うん、今眠ったところ。東さん来てくれていたんだ」
「いや、誠時君をどうにかしてくれって言われて。ちょっと外に連れ出して愚痴聞いて酔わせた。もう寝てるよ」
「ありがとう、助かる」
「それで結局どうしたの」
「うん。今日行った所で、昔のトラウマを思い出して、パニックに陥ったみたい。明日朝もう少し話聞いてみるけど」
凛は東をちらっと見た
「ああ、じゃ、凛の出勤遅く調整しようか。凛は何時に保育園来る」
「…午後より過ぎても良いかな。その場所に一緒に行ってあげたいの」
「ううむ、まあ大丈夫だろう。サツキさんが夕方から用事あるって言うからそれに間に合えば。終わり次第来てくれるかな」
「わかった。何時に着けるかわかり次第連絡するわ」
咲雪は二人の会話を聞いて、母である自分よりも兄の方が分かり合えているように見えると思ったが黙っていた
「じゃ、大丈夫そうだから俺帰るよ」
「本当にありがとう、東さん」
ソファーに掛けてあったジャケットを手に取る東を、凛は玄関まで後をついて見送る
廊下で東は凛に顔寄せると耳打ちした
「前世の事は言ってないからな」
凛は微笑んで目で感謝の意を返す
東が帰ると凛はキッチンで水飲み、咲雪にお休みなさいと声を掛けると、また二階に登って行く
その後ろ姿を見ながら、咲雪はちょっと寂しいなと思った。兄には言うのに、私には言わない事があるなんて
咲雪も、自分の寝室に向かう。明日の朝はどうやって夫をなだめよう、と思いながら
颯雅は目を覚ました。辺りは暗く、知らない部屋だった。隣に寝ているのが凛だと気付いて驚くと共に昨夜の出来事を思い出す。夢にまで見た凛とのベッドインがこんな形になってしまい、赤面する。今は何時だ。壁に架かる時計は夜光で、目を凝らすと何とか見る事が出来た。1:40。深夜か。何だか凛に迷惑掛けてしまった
思い巡らせていると気配を感じたのか凛が目を覚ました
「あ、起きてたの?」
「ご免、凛、迷惑掛けちゃった…」
「大丈夫よ。父は母と東さんが何とかしてくれたみたい。颯雅君は落ち着いたかな」
「うん…」
東さんまで引っ張り出したのか。本当に申し訳ない。
凛は颯雅の頰に軽くキスをする
なんて素晴らしいシチュエーションなんだ。これでムラムラしない方がおかしいだろうと思ったが、身体と心は全くそれどころではなく、無反応だった
「大丈夫、薔薇と実穂高がやってくれるから、颯雅君もあなたの我が愛に頼んで」
「何て頼めば良い」
「消化出来ないものを整理し、受け入れられるよう導いてくださいって」
「わかった…」
目を閉じて心の中で言われた言葉を繰り返していると、凛はその颯雅を抱き締め、その髪や背中を撫でた
そうすると、また涙が込み上げて来る。凛は颯雅の涙を拭き、子供をあやすように抱き締めた。凛の温もりの中で心と身体は安心するようだった
「颯雅君明日の予定は?」
「夕方からバイト」
「わかった。うちでゆっくりして行ったら良いわ」
「うん…」
また颯雅の意識は微睡みに引き込まれる
表層意識が活動していない方が愛は働きやすい
愛は颯雅の心を抱き締め、そのばらばらに砕けていた心を修復した




