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Rinforzato【副音声】


それから二日ばかり過ぎた

颯雅の頭は凛に渡された課題の事で手一杯だった。実穂高分体の声と心の声は交互に語り掛けて来ては課題を手伝ったり、何か大事な事を解説してくれる。颯雅は段々と自分自身を受け入れ始めていた


“頭がある理由は何だと思う”

「理由?生きられないからだと思うけど」

颯雅は当たり前のことを聞いてくる実穂高の問いに疑問を持った。理由もなく聞かれる事はないはず。なら、頭は要らないのか?

“確かにな。頭は必要ない”

「どういう意味?」

“物理的な話ではない。身体は身体自身が動かすから、頭は必要ない。むしろ身体を制限している”

「物理的でない頭や頭脳があるの?」


“汝の(みだ)りがわしい妄想はどこからくるのだ?”

実穂高は颯雅を揶揄うように問う。颯雅は赤面する

“それを誰が頭に記録し引っ張り出す?条件反射などと言うなよ”

確かに自分だと思うが

“頭や頭脳だ。本来必要ないものを記録として貯蔵し、ある条件下になるとそれを引っ張りだす。それは何故だ?目的はなんだ?”

理由?目的?颯雅は考えたがわからない


“我に続けて言ってみよ。凛に濫りがわしい妄想をしている事を認める。それを頭、脳、頭脳、思考、怒りが行うと認める。そこに隠された意図があると認める”

颯雅はオウム返しで宣言する。ちょっとスッキリした


“だが、これ位では汝の妄想は果てぬ。奥が深いからな。表面が一枚なくなった位だ。宣言の内容を自分で良く考えてみよ”

そんなに奥が深いのか。颯雅は落ち込んだ。俺っていやらしいのだな。

“何、落ち込む事はない。奥が深いのにも理由があり、それが分かれば凛を如何に愛しているかもわかるだろう”

実穂高は笑って答えた。颯雅は理解できなかったが、凛を愛している事に繋がるのだと思うと少し気楽になった

“ほれ、先程の事を考えてみよ”


颯雅は宣言した内容を思い返す。妄想した事を認める、は理解できる。頭、脳、頭脳、思考って何だ?これが妄想を引き起こしているのか?

“そうだ”

実穂高が答えた

“それらは汝の行動を制限する”

「どうして?人は頭脳や頭で行動しているのではないの?」

“そうだ。だが本来、身体が行動するのには必要ないものだ。なら汝の本来の行動を決めているものは何だ”


颯雅は考えたがわからない

“命と真心だ。身体はそれに従い行動する。頭や頭脳はそれらを制限する為に作られた”

「なら考えて行動することは本来の姿ではないと言うこと?」

“そうだ。先日それを体験しただろう。ゼミとやらに遅刻しなかったのは、真心のままに行動したからだ。頭や頭脳は知らない、わからない事を拒絶する。汝がもし、いつも降りる駅の3つ前で降りなければならないとあらかじめ知ってたなら、何をする?”

「まず、地図で経路を調べ、その時間を計算するかな?」

“そんな面倒な事をせずとも真心に従えば全て教えてくれる。汝は何故そのような面倒な事をするのだ。その理由は?目的は?”


颯雅は頭の中が真っ白になった。実穂高が言っている意味はわかるが、理由を問われると答えられない

“汝は固まったな。それが理由だ。頭や頭脳にとって都合が悪いからその先を考えさせない。頭や頭脳が存在する証拠であり、目的だ”

「つまり、それらがあることを気づかれると不味いとう事?」

“そうだ。汝が真心のままに行動されるとそれらにとって存在意義を失うからだ”

颯雅は普段から自分が当たり前と思っていることは、当たり前ではないのかもしれないと思い始めた



颯雅は沖縄旅行を楽しみにしながら、ゼミとバイトに精を出した。凛に対する(みだ)りがわしい妄想は相変わらず健在だったが、実穂高や心の声によって、段々と対処の仕方がわかるようになってきた


「この妄想を外そうとすると、別の考えや新しい妄想が生まれるのは何故だろう?外れたなら無くなるのではないの?」

颯雅は実穂高に訊ねる

“確実に外れている。だがそれは何層にもなって複雑に絡み合っている。簡単には無くならない”

自分が妄想していることを逃げたり誤魔化さず素直に認められるようにはなったが、そこまで執拗に妄想するのは何故だろう?と思った


“良い視点だな。何故だ?”

颯雅は前に付き合った彼女と比較してみる。その時もなかった訳ではないが、ここまで執着していなかったように思う。人によって違うのだろうか?

“確かに違うな。ならその以前の彼女とやらと凛は何が違う?”

「対だから?」

“その通りだ。冴えておるな”

対だから執拗になるのは何故だろう?と颯雅は考える。凛を大切に思えば、妄想は減りそうなものだけど

“前に話しただろう。脳や頭脳にとって不都合だと”

「もしかして、対を大切にすることが脳や頭脳に不都合なら、それを大切だと意識させないようにする事が目的ということ?」

“そうだ”

颯雅は何かわかってきたように思った。真実が隠されているなら、その目的と理由があるはずだと。それは何?

“汝が己で見つけ出せ”

実穂高はそれ以上、教えてくれなかった


颯雅はたくさんの課題をこなしながら、あることに気づいた。何かに気づいて外そうとすると、それを妨害する事が起きるのだ。気づいて外そうとすると、突然部屋の片隅にある汚れや片付いていないものが気になったり、身体が痒くなったりする。また、どうでもいいことを考え始める、などだ


“よく気づいたな。その通りだ”

「これも頭や脳の妨害?」

“そうだ。それだけではないがな”

「どうすればいいの?」

“覚悟を持って決意せよ。強く思う事は愛へと通づる。妨害されようがされまいが、進む決意が必要だ。汝の感じられる朧げな方向は間違っておらぬ。そこに真実がある事を我が保証しよう”

颯雅は決意しようとする


“事ある毎に決意せよ。一回では足らぬ。汝が妨害され、流される度に決意していけば、先へと繋がる”

うわ、大変だ

“汝の器が大きい故だ”

実穂高は笑いながら答えた


それから颯雅は寝る度に様々な夢をみるようになった。過去や現在、学校などの身近な場所からどこだかわからない場所まで色々だ。朝起きると実穂高から何を手放すべきか話をされ、また外すと夢をみる、という繰り返しになった。颯雅はその理由を訪ねた


“外したからと言って消える訳ではない。それが外せるようになったに過ぎない。外すべき事を認識し、味わえば、それらの目的は終わり消滅する。良かったな、夢が見られるようになって”

「もしその夢を見なかったら、そのままだということ?」

“そうだ。体験は汝の願いから生まれ顕現する。それは物質的に現れる事もあるし、夢のような形で現れる事もある。体験は受け取らなければ終わらず、姿と形を変えて何度でも現れる。受け取れば終わり、次の願いの体験が顕現する”


「それって、受け取らない限り死んでも来世で現れるという事?」

“そうだ。その者の体験はずっと進まず、そこに踏み留まることになる”

「何か重大な事を簡単に言われている気がするけど?」


“これが愛のことわり

颯雅は何も言えなかった


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