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Rinforzato【梟と烏】

Rinforzato リンフォルザンド(その音を急に強く)(伊)



5、命の無い者が何故生まれたのか

「どうして、命のある者と無い者が居るの。命無いのに動いて喋って考えるの?」

颯雅がそう尋ねると、心の中で声が聞こえた


亡久ぼうきゅうよわいは命の泉に含まれず

深淵の久しさはとこしえに永遠の螺旋を育む

命あるものは愛と並びし永遠を行くもの

その光輝はふかしものなり


どういう意味?と内に訪ねた

「命のないものは歳を重ねても生きてはいない。命の深淵は常に永遠の螺旋を愛と共に歩む。その輝きは誰にも(見えないし)解らぬ程、素晴らしものだ」


颯雅は凛に聞こえてきた事を話すと、凛は少し沈黙し、誰かの声を聞いていた


「命がないものを生み出したのは颯雅君だそうよ」

「えぇ、僕!」

「そう。だからその理由と目的を思い出しなさいって」

いや、そんなこと急に言われてもと思ったが、考えてみることにする。するとまた声が聞こえ始めた


遥か昔、命が当たり前でその尊さが分からなかった頃、あるものが作り出された。その目的は命の尊さを教える為に作ったのだが、一部の人々は私利私欲の為に使い出した


颯雅は凛にその話をする

「そうなんだ。それを私利私欲で使わなかった人々と格差が出来たそうよ」

「支配と支配される?」

「そうみたい。他人の命を吸い取って自分の物にすると、能力が上がることがわかったそうよ」

「うわ、その先は人類の歴史だね。命の奪い合いか」

颯雅は嫌な想像をすると、凛は頷いた

「そうして命のあるものとないもの生まれた、ということか。だとすると、そのあるものを作ったのが、僕という事?」

「そうなるわね」


颯雅は自分のやった事は理解出来だが、ならどうすれば良いのかは分からなかった

「どうすればいいの?」

「今はわかれば良いって」


------------


6、鬼の正体は何か


鬼は一種のウィルスや菌に引き起こされる病気である。その感染は接触や空気ではなく、人の心に供給される愛からの光が覆い隠され届かなくなる事によって起こる。それは古代文明で命の改変をする技術を習得した者達が本来の運命と生死に逆らい生き続ける事に執着した事で、生き長らえる目的に特化したものに己を改変した事で生じた。それが菌やウィルスなどの微細な生命体である

彼らは自分達の為に働くものとして、命が無くても命があるかのように動ける生命体をも作り出した。一種のホムンクルスである


7、人工生命を生み出す方法


肉体を何らかの方法で作る。ただそれでは肉体はただそれなだけで、植物人間のようなものだ。意思を持って動きはしない。袋である。そこに(から)の「()」を入れる。それは人間の一般社会常識、人の営みの全てが入っている。ただそれでも通り一遍の行動をし、話すロボットの様なものである。そこに命令を吹き込む。特定の目的を。それによってその人工生命はあたかも自分の意志で判断し、行動しているように見える



---------------



「え、何それ。まるでSF小説じゃないか。誰がそんなの作ったの。それにどうやって命があるかどうか見分けるんだ」

「今は滅んだ古代文明よ。…どうやって見分けるのかしら」

「凛も分からない?」

「…愛を感じるかどうかよ」

颯雅は黙って凛を見詰めた

「だからあなたにも愛を感じて、聴こえるようになって欲しいのよ」

凛も颯雅を見詰め返した


給仕が空になった皿を下げに来る。給仕が立ち去ると、颯雅は尋ねる

「どうする?何か飲む?」

「いえ、もう出ましょう。でもその前に」

凛は手帳からもう一枚のレポート用紙を取り出した

さっきもう一枚挟まっているなって思って、嫌な予感したんだ

渡された用紙にはこれまたびっしりと細かな文字が並んでいる


「それは颯雅君に自宅で取り組んで欲しい課題なの。取り組む方法も書いてあるわ」


------------


2枚目

課題

1、聴く事(自分の心を。愛の声を。自分の望みを)

2、話す、表現する事(自分の感情と気持ちを。愛を)

3、受け容れる事(自分自身を。自分が今までやって来た事を。)

4、愛を受け容れる事(我が愛に愛されている事を。愛を感じている事を)

5、道と記憶を受け容れる事



-----------


用紙の下段には、「心を軽くする方法」が書いてある。凛が自分で色々やってみて、これが効果あると思ったやり方だ

「さっぱりわからないよ。やってみるけど、出来るかどうかもわからない」

「良いの。先ずはやってみて。そうすれば何が引っ掛かっているのかも具体的になるし、それにメールくれれば一緒に考えるわ」

「一人でやるのか…」

「一人じゃないわ、あなたにはあなたの愛が付いているの。だから先ずは愛と話せるようになって欲しいの」

「凛が話してるみたいに話せると言うの?」

「もちろん。だって颯雅君だって急に何か自分では無いものが話す事あったじゃない、前回だって」

そう言えばそうだ。どうしてその事は忘れてしまうんだろう


「今日ここ出た後どうする?」

「もう一軒行きたいところがあるのよ」



「ここよ」

「ふくろうカフェ?」(颯雅視点のふくろうカフェ)


外観は普通の喫茶店と同じだ。凛が入り口の扉を開けると歓声を上げた


入り口の近くにはガラス越しに何羽ものフクロウが長い棒に止まっていた。動かないの剥製かと思ったが、よく見ると少しだけ動くので本物だとわかる。二人はお店の人に案内されて席に着くと、飲み物を注文した

「随分たくさんいるのね」

凛は目を輝かせている。このお店は店内を梟が移動せず、人が梟のいる部屋へ移動するそうだ。その中で撫でたり手に乗せたり出来る

「ちょっと見に行こう」

凛は早速ガラスケースの前に行く。梟たちは一斉に凛の方を見て、反応を示す。凛は一羽づつの前に行き、語り掛けるように眺めると、今まで動かなかったのが不思議な位にフクロウは頭を動かしたり、足を動かしたりしている


颯雅がガラスの前にいくと、一羽の梟の前に立った。何だか凛の時とは違って視線が冷たい。すぐにフクロウは視線を逸らして颯雅を見ようとしない。颯雅は諦めて隣のフクロウの前に立つ。だがそのフクロウも冷たい視線を投げると、視線を逸らす

「凛、僕を見ると何故か視線を逸らされるんだけど」

凛が颯雅のところに来ると、途端にそのフクロウは視線を戻し凛を見て身体を揺らす。こいつらきっと雄だ、雄に違いない

「こいつら俺に嫉妬している」

「そんなことないよ」

「いや、間違いない。見てよ、リア充に冷たいあの視線」

凛は声を上げて笑う


それから席に飲み物が来たので、少し休んでから、フクロウのいる部屋の中へと移動した

そこでも凛は大人気だった。凛が部屋に入っただけで、何故かフクロウが明らかに興奮している。係の人も随分楽しそうだねと言葉を掛けながら凛の手にフクロウを乗せた


颯雅はやはり嫌われていた。誰も颯雅を見ようとしない。係の人が颯雅にフクロウを渡すと、そのフクロウは明らかに嫌そうに仕方ないから乗ってやったとでも言いたげだった





ふくろうカフェから出て二人はまた歩く。凛はちょっとだけ楽しそうだ。動物と触れ合えて嬉しかったのだろう。颯雅はちっとも楽しくなかったが、と思い心の中でフクロウなんか嫌いだと呟く

颯雅は凛を見る


凛に対し、抱いている気持ちは最初から変わらない。でも凛が急に大きく見えて、自分が不甲斐ないような感覚になった。凛の言う通り、あの課題に取り組めば凛と並ぶ事を引け目を感じずに居られるのだろうか

ぎゅっと凛の手を握ると、凛は振り向き、優しく目を合わせ笑う

うう、可愛い。敵わない

もう何でも言う通りに致します、着いて行きます。わんわん


“こら、汝は犬ではあらぬ”


何だか声が聞こえた気がした


駅に着くと柱の陰で、別れの前に手を握る。ああ、でも今日キスしたじゃないかと思い、勇気を出して軽くちゅっと凛の口元にキスをした。凛は嬉しそうな顔をして颯雅に抱きついた。人目あるかな、と気になったが、颯雅も凛の身体に手を回した。凛が颯雅の耳元で囁く

「さっき、面と向かうと恥ずかしくてちゃんと言えなかったんだけど、キス気持ち良くてびっくりした。それで私颯雅君の愛に飢えているんだってわかった。だからもっと心が近づけるようになりたいの」

そして颯雅の頰にさり気なく唇を押し付けた


颯雅は喜びを抑えられない

「わかった。あの課題やってみるよ。ありがとう」


凛はすっと身体を離すと、別れ際に言った

「じゃ、沖縄の日程も、わかり次第メールしてね」

手を振る凛に颯雅も手を振り返す

そうしながら、颯雅はしっかりと愛の掌で転がされて目覚めに誘導されて行くのを知らない


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