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果

「原罪を背負いし漆黒の……」


 何度も聞いたこの詠唱。本来勇者である自分が担うべき火力を担ってくれているその魔法。


 驚異的な再生能力を持つ魔王を一撃で仕留める為の聖剣の能力を引き出せず、彼女に頼るしかない自分が情けなくてたまらない。


 今まで魔王に対して全てが致命の一撃となり得る聖剣を使いこなした勇者達はその殆どが魔王に辿り着けずに死んだ、実は生きていて裏切っていた者もいたが。


 歴代の勇者に大きく劣る僕がいてもなお、いまだ誰もなし得なかった魔王討伐に王手……いや、詰めろをかけている。


 しかし、本来聖剣でしか倒せないと言われている魔王に対して、聖剣を使えない僕が挑むなんてあまりに無謀。


 聖剣を使えたとしても、急所に当てれば勝ちというだけ。字面だけなら有利そうだがそんなことはない。そもそも金属の棒が急所に当たれば大抵死ぬ、人類はもともと全てが致命傷となり得る状況なのだ。ワンサイドゲームがワンチャンのゲームになるだけである。


 そのワンチャンの変わりを彼女の半分以上の魔力を消費するーーーつまり、一発しか撃てないーーーこの魔法が務めているのだ。


「知っているぞ!その魔法、確かに我を斃しうることは認めよう!人の身でそれを使えることに敬意を示そう!だが!瞬きする程の時さえも惜しいこの場で発動に数分の隙を曝すそれはあまりに愚か!」


 そう、このようないわゆる究極魔法と言われる類のものは歩くことすら困難な程の集中を数分間以上求められる。彼女も初めて発動したときは3日間飲み食いも眠ることもせず、死にかけだったという。彼女はオムツって偉大だね〜なんてなんともなかった風に言っていたが。

 この戦場には似つかぬて(・)く(・)て(・)く(・)と拙い歩き方で最低限守られやすい位置に動く彼女、僕らも必死に守るがそれでも彼女はほんの数秒で傷だらけになった。これを一分以上……どう考えても無理だ。それでもこれに賭けるしかない。それを分かっているから彼女も誰にも許可を求めずに詠唱を始めたのだろう。



「………悠久の時を刻みし玉葱の………」


 どれだけ経ったのか分からない、30秒か、一分か、数日間戦い続けたのかと錯覚してしまいそうなほどだった、両足が折れ、肩を剣で貫かれ壁に縫い付けられた、血を流しすぎて視界が霞む。

 それでも彼女は詠唱を続ける。覚束ない足取りで致命傷を避けながら千切れた四肢の断面を簡易的な魔法で焼いて止血している。紛れもない神業だ。そしてこれ以上の時間稼ぎが不可能なことを認めて唱えた


「エクスプロージョン」


 しかし、なにもおこらなかった


 そして魔王が僕等が動けないことを認め、再び話し始めた。


「30秒で究極魔法が撃ててたまるか。結局、いつも勇者は死ぬ。我はあと何年生きればいい……いつになったら死ねる!?」


 なにを言っているんだ……訳がわからない。ただ、きっと何もできずに僕らは死ぬんだなって思った。心が折れて、意識が遠のく………。


「安心しなよ、魔王……案外近い未来、お空のベットでおねんねすることになるよ。なんなら、添い寝してやってもいい。もう、気付いてるだろ?お前と私達じゃ勝利条件が違うんだ」


「そうか……そうだな……これは避けられない。どういう理屈か知らんがあれは究極魔法ではなかったのだな。ただ、これでは城どころか国ごと吹き飛んでしまう……」


「守れよ、お前の民だろ。まともな問答もできない程に生きすぎたお前の最後の仕事だ」


「あぁ……」


ーーー極大魔法 メテオーーー




 魔法使いちゃんより


 あなたがこれを読んでいる時、私はもうこの世にはいないでしょう。なんて、書く必要もないのですが。憧れていたセリフなので♡

 もしかしたら私が死ななくても魔王を倒せる方法があったかもしれない。私の寿命を代償にしなくてもあなた達を守れる可能性はあったかもしれない。それでも、これを選んだのは私です。あなたのせいではありません。気にしないでください。

 いえ、気にしないでくださいは違いますね。きっと優しいあなた達は気にしてしまう。でもそのせいであなたの幸福を壊してしまうのは私の望むところではありません。一生私のお陰で生きていることを感謝しながら、幸せになってください。あなたの記憶にこびりついていられるのならきっと私も幸せです。


 最後に、嘘ついててごめんなさい。きっと私の独断であなたには大きな負担をかけてしまったでしょう。皆さんには秘密にしていましたが私の切り札は時間こそかかりますが、詠唱はいりません。ただのロマンなんです。

 きっと究極魔法を詠唱し、騙して大変な思いをしまったと思います。かくがくしかじかで内緒にしてたのですがこの場で謝らせてください。


                  私の勇者様へ



勇者パーティーである意味があまりなかったので主人公と勇者の二人にしました

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