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第98話 紙

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 今日も瓦版『リブラ新報』が販売されている。内容は「西の村のリーグさん宅!炎上か!?」という見出しで、細かく見るとリーグさんの子供達が竈の残り火を持ち出し、刈った雑草を燃やそうとしていた所に突風が吹いて、火の粉が自宅に幾つか当たったという内容だ。紙面は火の元への注意喚起と火災への警戒を呼びかけている。


 うん。火事は怖いからね。火の用心の啓蒙をするのは大事だねと思う反面、わざわざ瓦版で発表する内容かよコレ?大袈裟じゃないか。東○ポよりもな!という相反する感想が込み上げる。

 まあ……注意喚起は必要だな。保存っと。


 とか思いながら保存(キープ)の魔法をかけた頃、新報を広げている書斎に来客が来た。

「やあ、楽しんでいるかい?ダンジョンくん。いや、準男爵ラビリンシア閣下とでも言うべきかな?」

 図書館の奴だ。一番最初に仲が良くなった友人だ。遊びに来てくれるのは嬉しいものだ。いつだって歓迎だ。

「準男爵とか嬢とかやめてくれよ図書館。偉く振る舞うつもりは無いさ。図書館族魔王さまに対してな」

 私も笑顔で言ってやる。

 2人でアハハと笑いながら、図書館の奴が本題を切り出した。

「おや瓦版だね?領主くんの街は凄く先進的だよね。君のダンジョンや図書館で読み書きが出来るようになった領民が、その裏に木炭でメモを取り始めているんだ。紙の存在は文化を100年は進ませているよね」

「いや、私は紙なんかダンジョンから出してないぞ」

「だろうね。ちなみに近隣のモンダナエ子爵領やマルソン侯爵領も紙なんか無くてさ。庶民は木の板に重要事項を書き記しているんだよ」

「木の板?」

 私は驚いて瓦版を見る。これは明らかに紙だ。木の板ならむしろ版画の材料だろう。

「そうなんだ。紙なんて使っているのはこの領内だけなんだ。ちょっとご挨拶に行こうよ」

「リブラ新報にか?」

「いいや。紙を生産している『賢者』くんにだよ」

 この地域に「賢者」と呼ばれる人が居るのは知っている。

 ブラキウム丘陵の入口にある森に住まい、人目を避けて暮らしている。この地方の豪族に連なる者だそうだが、正体は不明のままだ。

 まあ人間(ヒューム)なんぞ恐れる理由は無い。別に挨拶に行くのは吝かではないが……

「相手の賢者さんの迷惑にはならないか?」

「ならないさ。なにせ賢者くんは客好きだからね」

 物知り顔の図書館の奴に言われるまま、わざわざ馬車を用意して賢者さんのもとに向かう事になった。

 どうも奴も会った事も行った事も無いようだ。

 大丈夫大丈夫。笑いながら付近に有る38開拓地に向かった後はひたすら歩いて森を歩く。ただ、ある程度歩くと木の樹齢が変わってくる。

 林業に勤しむ人が居るのは知っているが、それはこの深部ではない。開拓地近くを細々とやっているだけだ。この領内は森が少ない。森は大事にされている。

 主に広葉樹のブナが生えているのだが、これは紙の材料になる。しかし「賢者」さんが独りでやってる訳では無かろう。

「ほら。あれが賢者くんの住まいさ」

 別段難しい造りでも無い小屋と紙漉き工房がそこには有り、人ではなくゴーレムが多数働いている。

「うわ。賢者さんはゴーレムマスターなのかな」

「そうかもね。多分あれが賢者くんだね」

 指した先にはここ唯一の人間(ヒューム)がいる。これが賢者さんなのだろう。

「あ。人だ」

 訪問者が有る事が珍しい感じなようだ。

「初めまして」

 私が挨拶すると、賢者さんから紹介が有った。

「やあ僕は一級賢者のレルトと申します。三年前に検定試験に合格したんだ」

 賢者って検定試験有るんだ。それは知らなかった。

「検定試験?」

 賢者さんは私の聞いた事には一切答えず、不思議な事を言い出した。

「今日の出会いを大切にって『今日のうらない』で言ってたからね。歓迎するよ」

 そう言い出した賢者さんは、実のところダンジョンに来る子供達と似たようなお年頃の男の子だ。

「今日のうらない?ああ、朝の遠画の魔道具で見せてるプログラムですね?」

「そうそれそれ。君も見てるんだね?仲間じゃないか」

 何故か私の頭を撫でながら更に続けた。

「検定試験受ける?『賢者検定せめてこれだけは』とか『一発合格一級賢者検定』とかまだ持ってるよ」

「え?そんな本まで有るんですか?」

「有るよ。羊皮紙だから高価で増産できないからね。写本の為に紙を生産してるんだ」

「その紙を増産して色んな事に使って貰ってるんだ。面白いよねリブラ新報とか女性週刊誌とか」

 

 賢者さんはやけにおしゃべりだ。本来ならお子さま年齢なこの賢者さん。紙の製法は隠したいけど自慢したい。そんな所だろうか。

「まあその紙の増産を期待しながらもっと面白い使い方を提案したいんだ」

 と言いながら図書館の奴が本を2冊ばかり取り出した。

 ソンツーという人物が記した兵法書とランチェスター戦略についての書籍だ。

 どちらも軍事に使う書籍だが、思いの外様々な場面に有用な書籍だ。

 更に図書館の奴は昔のリブラ新報をパタパタと折り曲げ、折り紙を作った。

「なぁ?別段紙の製法を根掘り葉掘り聞こうという訳じゃないんだ。紙の有用性を知って貰いたいから来たんだ」

 賢者さんと図書館の奴はやけに意気投合している。

 コイツら、楽しそうだな。

 読んでくれてありがとうございます

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