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第91話 マリア・ビブロテカーリオ作/人間再生 より その子を紹介しておこう

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 その女の子について分かっている限りの事を話しておこう。

 名前はイリーナ・レンヌ。出会った時は17歳らしい。らしいというのも、この子自身が孤児出身であり、拾われた年齢が分からないからだ。

 そのような孤児出身者の多くは敵国から略奪した子供であるケースが多く、孤児施設という名の奴隷育成工場で一括して面倒を見るようになっているようだ。そしてそれを人権とかそんなもの関係無く無駄遣いしようという訳だ。

 本人以外の口から取材は簡単に出来た。

 孤児部隊というのは戦場の戦列歩兵を司るのにうってつけだの他にやれる事が無いだのと散々な言われようの部隊だ。

 彼女自身物心付いた頃からその孤児施設に居たらしい。

 孤児施設での扱いも相当な物で、後々語った話なのだが、仲が良くなった人物が居たのだそうだが、農園での除草作業の折り、その人物が鎌で手を酷く切ったそうだ。

 手当とかそう言う事は分からなかったが翌日以降その人物を見た事が無いというのだ。そんな話は日常茶飯事だったと言うのだから酷い話だ。それ以来鎌で手を切るとどうかされると身体で認識したようだ。それがまさか4から5歳と思われる時期の思い出なのだそうだ。

 大体10の頃から軍事訓練を始めたそうだが、泣いたり叫んだりした者は殴られ、逆に必要な時に『はい』と答えないものも殴られたそうだ。要するにこの子が習得した言葉は「了解」のみで、その後所属を答える練習を積まされたようだ。

 酷い話だ。楽しいも嬉しいもこの子は認識出来ずに成人年齢になってしまったのだ。この子を育てた孤児施設の奴らを見かけたら本気でぶっ飛ばしてやりたい!この教育者へのご褒美だ。くれてやるから受け取れ!

 本人が思い出す限りと亡国共の記録を追って調べた限り、どうも出会った時から半月前に起こった『第22次アキルド峠の戦い』の折りのようだ。

 相変わらず戦列の最先端で槍を指示に合わせて突き出していたところ、右手を大きく負傷し、使い物にならなくなったようだ。

 戦場医師にしばしば有るそうだが、その腕を切断し、彼女の場合そこに無理矢理槍の義手を取り付けられたそうだ。

 ダンジョンさんの所に居る医師達に言わせると、その義手の装着について「発想は我々の斜め上、技術は我々の遥か下」だそうだ。

 

 どのみち長く生きられないのは医師達も分かりきっていたようだ。

 そこで最期の任地として国境警備に回されたようだ。腕の切断箇所はだんだんと化膿し、やがて立っている事すら出来なくなった。

 彼女はそれを死ぬという言葉では考える事が出来なかったのだそうだ。

 それを『草や石になる』と、表現していた。それはよくみる光景だったに違いない。何人もの味方がそうなっただろうし、本人が何人もの敵兵をそうしたのだろう。

 割とヒトの死にドライな性格をしているし、誰とでも仲良くなるが本人から群れを作る事はしない。それは結局本人がどう思っているのかは知らないが『関わると皆死ぬ』とか『死神』とか思っているのかも知れない。

 

 先日子供達がやるように、画用紙にクレヨンで絵を描く動作を真似ていたが、それは黒だけをいつまでも手に取り、ただ紙を塗りつぶしていた。これは本人に色と明るさが無い世界で生きていた事の証なのだという。

 私に言わせればそんなことで良い訳が無いのだ。ここに人間として産まれ落ち、やがて病を得て召される迄に私達は楽しい物も嬉しい事も未来への夢も沢山持っていて良い筈なのだ。

 それなのにこの子はそんなことすら身に付けていない。ましてや数も言葉も分からない。どうやらそのような事すらも教わっていない。

 そんな子はやがて陸続とやって来るのだ。

 そんな子達に笑顔を!幸福を。そして自立を。

 せめて私の手を広げられる所に来た子達にそれらを提供したい。

 その決意のきっかけをくれたのはこの子なのだ。何よりもこの子に沢山の『人としての当たり前』を知って貰いたい。

 

 その子なのだが、子供向けの玩具にも興味を示し、絵本では色合いに興味を持ち、書いてある文字に興味を寄せた。約一月彼女は他に目を向けず図書館に通い詰め、だいぶ言葉も覚えた。

 当初は図書館の門の前で立哨をして待っていた。険しい顔もしていたが、近頃は門の脇に置いたベンチでニコニコして待つようになった。

 付き添いの介護人とも話をするが、病院の中でも笑い顔を見せたり喜んだりも見せるようになったそうだ。大きな変化だと喜んでいた。

 それでも彼女はどこに行くにも独特の軽装備の皮鎧(レザーアーマー)を脱ぐ事は無いそうだ。それは夜に寝間着に着替えた後から再び装着する程念入りで、それはどこでも同じだ。で……実はかなり臭い。

 これを脱ぎ去る日が来れば、また新しいこの子になれるのかも知れないが、その道程は私には今のところ分からない。

 臭いは我慢してこの子にはできる限り付き合おう。

 この子が自立出来るその日まで。

 読んでくれてありがとうございます

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