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第88話 新規雇用メイドさん

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 メイドさんの新規雇用には領主さんのお母上さんがやけに熱心だった。これは領主さんに早く孫を作って欲しい一心で、今度はメイドさんに『お情け』を貰わせる作戦に出たらしい。しかし難民には殆どお年頃な女性なんて居ない。

 難民の前は13歳で徴兵され、65まで妊娠以外では休職出来ないからだ。

 要するにここに居る難民の女性は12歳以下65歳以上。それにお情ける訳にも行かないだろう。

 お母上さんは若すぎるわねーとかぼやきながらも合計8人の女性をメイド見習いとして雇う方針を固めたようだ。

 その決定事情は割と配慮しているけど酷い。

①メイドとして可愛らしい女性最優先

②その保護者も女性であれば誠に良し

③見た目が良い。多少の知性有れば尚良し

 見たところそんな感じだ。お母上さんは三家族8人を選び、連れていったのだ。

 で、小さな女の子には二組の姉妹も居る訳だ。

 お母上さんは何故か私にメイド服を注文した。内容はおよそメイド服らしくはない。ただ、私から家政精霊(シルキー)に頼めばその日の内に作ってくれるだろう。

 メイドとしての初歩講座は図書館の奴がやってくれた。約一週間でメイド見習いに仕立ててお母上さんに引き渡した。


 その御披露目は領主さんに行われる。それはそうだろう。領主さんの未来のお妾さん候補なのだから。

 で、何故かその御披露目に私も参加させられていたりする。

 お年寄りのお婆さんメイド。領主さん曰く冥土さん達の紹介は割と雑なのだが、少女幼女の紹介はやたらと張り切っている。

 それらは言われた通り家政精霊(シルキー)が赤、青、黄、緑、ピンクのメイド服だ。

 ただ見た目と性格の良さで選んだだけなので、適不適は問うていない。ほら。一番幼い6歳の女の子はボロボロになったウサギのぬいぐるみを小脇に抱えているし、二番目に幼い8歳の女の子は親指をチュパチュパ咥えている状態だ。どうするんだこれ?

 私の心配をよそにお母上さんから掛け声が上がった。

「さあ、自己紹介なさい」

 はーいと和やかな返事の後、若いメイド見習い達が挨拶を始めた。

「情熱と極炎のメイドレッド!ロザリア!」

「大海と蒼穹のメイドブルー!パレアナ!」

「花の色とパッションのメイドイエロー!マルグリット!」

「樹海のメイドぐりーん!どろしー!」

「かわいい めいどぴんく!りりかー!」

「「「「「我ら!美少女メイド戦隊!」」」」」

 

 ばっちりポーズまで決めての自己紹介だ。図書館の奴め、悪のりし過ぎだ。幻影(イリュージョン)の魔法で背後に五色の爆煙まで施している。


 暫く沈黙が周囲を包んだ。

「あの?母上?」

「オットーも好きでしょ?戦隊ヒーローもの。ダンジョンさんの所のアトラクションで見て着想を得たのよ」

「た……楽しそうですね」

 領主さんは美少女メイド戦隊に向き直り、言葉をかけた。

「みんな、宜しく頼むね」

 領主さんの笑顔は裏表が無い。新しいメイドさんに大いに期待しているのもよく伝わる。

「りょうしゅたま」

 ボロボロのぬいぐるみを小脇に抱えたメイドピンクのリリカさんが領主さんに上目遣いで声をかける。

「ん?なんだい?」

 領主さんは笑顔でメイドピンクさんの方に首を向けた。この時しゃがんで目線を合わせるのも領主さんの人徳の為せる技だろう。

「りょうしゅたまの おめかけさんに なると さんしょくひるねつきって ほんとうですか?」

「わたしもそれ聞いてる」

 思わず親指をチュパチュパ咥えているメイドグリーンのドロシーさんも加わった。

「君たちは何を言ってるんだい?」

「おめかけ~」

「おめかけ~」

「あけおめ~」

「あげあげ~」

 ピンクさんにグリーンさんのコントみたいなのが続く。

「君たち誰にそんなこと聞いたんだい?」

「おははうえたま」

「おやかたさまの おかあさんから」


 そんなこと言わせてる犯人がすぐにバレた。

「は……母上?」

 領主さんが顔を向けるとお母上さんはサッと顔を背けた。

「オットーが悪いのよ!早く孫を作らないから」

「孫が欲しいのは知っていますがこの幼い子供達で何をさせる気ですか!」

「早くナニをしなさいよー!」

 ぶっ飛んでるなこのお母上さん。あー。そうだこの家イーナさんにいママーナさん、マリアさんにメイド長さん。皆何処かぶっ飛んでたんだわ。お母上さんがぶっ飛んでるのなんか予測出来なかった私の落ち度だよなー。

「ここに居る若いメイド見習い達に出来るかー!」

 珍しく領主さんもツッコミが強めだ。

「黙れー!」

 何故か強めのツッコミをぶちかましでクリアしにかかるお母上さん。お母上さんは何故か凛とした姿勢で立ち、まだしゃがんでいる領主さんを見下ろして続けた。

「だってオットーがそういう趣味かも知れないじゃない。これで駄目なら今度は美少年戦隊をね」

「やめてくださーい!」

 あ。領主さんはそっち(・・・)の趣味は無いのかなるほどなるほど。

「ならこの子達で良いのね」

「それぞれに可愛い子達ですからね。元気に明るくお仕事に向かって欲しいものですよ」

「そう?ならお母さんね、この子達のメイドとしての育成頑張っちゃうわね。じゃあ行きましょうみんな」

 お母上さんとメイド戦隊は列を成して退室した。


「あー。なんか家の一家は変だよね。すまないな」

 領主さんが私に謝罪を入れてきた。

「何を育成する気なんでしょうね」

 領主さんはうつむきながら首を横に振っただけだった。



 読んでくれてありがとうございます

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 なども書いております。宜しかったら見て行ってください


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