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第83話 マリア・ビブロテカーリオ作『人間再生』より 「少女は生きている!」

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 私の職場である図書館に気まぐれな戦力が加わった。領主オットー・リブラの母親『ベアトリス・ウチノイエ』様だ。

 孫欲しさにやたらとオットーに妾を斡旋したがるのだが、その候補が私と、夫を若い頃に亡くした私の母親、更に魔族のダンジョンさんにセレクトさんなのだという。

 で、お母上様は近頃頻繁に図書館の児童図書室を訪れては子供達に絵本を読み聞かせ、孫が沢山出来た時のシミュレーションをしているようだ。

 思惑はどうあれこれで私はイリーナ・レンヌに集中出来る。しかも新しく雇ったメイドさん達もなかなか優秀な読み聞かせの達人達だ。

 実はセレクトさんの魔法で絵本はいつでも別の場所に予備が有る。私はとりあえず何冊かの本をまず手渡してみた。

 彼女はそれを最初恐れ多そうにしていたが、笑顔の私を見て安心したのかやっと手に取り、そしてそれを私に渡して返した。これは読んで欲しいという合図だろうか。

 相変わらず小さな椅子に腰かけて読んであげると、やっぱり私を足と左手でホールドし、腿に顎を乗せて聞き入る。そっと頭を撫でてあげながら読み聞かせを始めると、何人かの子供たちもそれに集まる。読み聞かせも順調。イリーナもご機嫌だ。

 しかしそれはお気に入りの一冊『いろのえほん』という本を見つけてから変わった。朝私を図書館の前で待ち、一緒に上がり込み、朝から晩までその絵本を開いては「あー!」「あー!」と叫んでは喜ぶというサイクルを繰り返した。

 たまに私の所に持ってきては読んで欲しそうな顔をするから一回だけ読んであげると、やはり「あー!」「あー!」

 何の行動だろうと疑問に思っていた。


 ここまで約二週間。その頃何故か王都から侯爵令嬢より先に図書館研修生がやって来ていた。

 この研修生は彼女を見ては訝しい目を向けてあからさまな差別意識を向けたので、その場で思いっきりぶん殴ってやった。そいつは2ヵ所ほど骨折したとかでしばらく来なかったが、やわな奴だ。領主オットーなんかその8倍ぶん殴っても壊れないのに。

 

 遂に一人で本を開けていたイリーナが「あー!」の後が出始めた。「ッカ!」

 彼女は赤いページを見ていた。なるほど『アカ』と言いたかったのだ!

 ひとしきり喜んだ後次のページを捲り、青の色を指し「あー!」「ッオ」

 何をしていたも何もない。彼女はちゃんと勉強していたのだ。大きく出遅れているかも知れない。推定17歳の女の子が対象年齢2~3歳の本を読んでいる、そのような子かも知れないが間違いなく彼女は成長しているのだ。

「そうね!あかとあおよ!」

 そばにより読めた事を褒めたところ、彼女は大いに喜んで私をホールドした。この子はどうやら嬉しい時は私をホールドすることでそれを表現しているらしい。まあその内普通に喜びを表現出来るようになるだろう。

 

 尤もやっと読めたのは赤と青だけだ。きいろや緑は発音が難しいようだ。ちなみに次に読めたのはオレンジだった。

 頭に母音が来る物は読みやすいようだ。これは重要な発見だ。

 私は休日や夜を利用して母音から始まる物の冊子を用意し始めた。色、挨拶、果物、お店の名前等に大別して冊子にしていたところ、それを例の本の寄贈をしてくれたセレクトさんが版画絵師を紹介してくれ、そして本になった。

 この本の何冊かがやがて、同じように戦場しか知らない若者達の手引き書になるなど露にも思わなかったのだが。

 

 それらの本を最初は丸暗記していた彼女だったが、一週間たつと私がやるように字を指で追い始め、やがては普通にぎこちない発音で読み始めた。彼女は褒めれば褒めるだけ新しい言葉を覚えていった。

 

 久しぶりにやって来た研修生も、たまにお話していた領主のお母様もイリーナの成長ぶりに大変驚いていた。

「まあイリーナさん、随分読めるようになったのね。お母さん嬉しいわ」

 お母上様は手放しで大喜びしていた。しかしやって来た研修生の感想は若干違うようだ。

「大いに素晴らしい事ですが、果たして全うに働けるまで何年かかるやら。それにこれは図書館がやるべき仕事ではありませんよ」

 だそうだ。図書館がやるべき仕事ではないかも知れないが、それを頭で納得しても、感情が納得しなかった。

 やはり一発思いっきりぶん殴ってやった。

「黙れ!なら他にやるべき施設を用意してみやがれ!天があの子を見捨てても、私があの子を見捨てない!あの子は学び、成長してるんだ!ここに生きているんだ!分かったか!この糞研修生!」

 研修生はその声に答えるより先に再び病院送りになった。ふん!柔な奴め!

 ここでお母上が私にそっと近付き諭した。

「マリアちゃん。オットーにやるようにやってはダメなのよ」

 だそうだ。

 

 お母上様はそう言い残して私から離れ、子供達に本の読み聞かせに戻った。

「皆は領主オットーの子供達。そのオットーのお母さんである私は皆のおばあちゃんなのよ」

 お母上どうしが集まるお茶会の話題はどうも孫自慢なのらしい。

 このお母上のおばあちゃんムーブは全く板に付いていない。

 本人がおばあちゃんじゃないからではない。

 おばあちゃん名乗るには美魔女過ぎるんだこの人。

 読んでくれてありがとうございます

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