第80話 子どもの日
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大分暖かくなってきた。領主さん一行は『鷺の住む沼』にやって来ていた。それには何故か私も随行する事になった。
「新緑の月は東方では皐月とか5月というらしいですわ。その月の五日は『タンゴの節句』と言うらしいですわよ」
婚約者のママーナ・モンダナエ子爵令嬢さんは相当の東方かぶれで、どうやら端午の節句をよく知っているようだ。
「まずは男の子を簀巻きにして川に流しますのよ。これにより尚武の心を養いますの」
それを聞いた領主さんの妹イーナさんが、上半身裸にした弟のフリコさんを、ござを巻いた姿にして連れてきた。
「あ……あにうえ~」
フリコさんはまた酷い事をされそうになって泣き出しそうだ。
ちなみに正解は粽を流すのだ。ちまきが簀巻きになり、挙げ句菖蒲湯に入るのが交ざったのだろう。かぶれ方が偏っている。
「お前達そんなこと絶対赦さんぞ!」
領主さんがフリコさんを抱き寄せて庇う。
「おお!お兄ちゃん尊い!」
「麗しい兄妹愛ですわ」
二人は何故か大盛り上がりしている。何だか字面とか方向とかおかしいけどコイツら止まらないのだろうか。
「メイド長、フリコ君に服を」
呼ばれたメイド長さんがはい~と呑気な声でも手早く大急ぎで服を着せていた。
「では次ですわ。魚を立てますわよ」
そう言いながらメザシをそのまま地面に突き立てた。多分鯉のぼりをイメージしているのだろう。まあ良いか。先程よりは実害が無さそうだ。
「という訳でカシワモチをいただきますのよ」
そう言って何処から用意したのだろう。柏餅を馬車から持ってきた。いや、柏餅そのものもよく見つけて来たものだとは思うが、それ以前に餅米とかアンコとかどうしたんだ?柏の葉はまだ分かる。俗に言うオーク材なのだから。
そんな中他と違い人の頭よりも大きな柏餅が転がっている。
「これだけ すごく おおきいですね」
「まあ!どうしたのでしょう?」
「どれ?中身見てみるか?」
領主さんがその大きな柏餅を包丁で半分にしたところ、中から緑色の液体と桃色の臓物みたいな物が出てきた。
「あら~。これはなんですかね~」
「まあ!腐っていたのかしら?」
「いや、こんな腐り方しない雰囲気なんだけどな」
その大きな柏餅は領主さんが別にして切ってくれたので他の柏餅には影響は無い。メイド長さんはその汚ならしいモノを片付けて紅茶を入れて柏餅の添え物にした。割と泰然自若としたメイド長さんだ。凄い。
柏餅の隣に何故か紅茶という変なお茶会の中、私はお母上さんとお話していた。
そこにメイド長さんをじっと見ていたフリコさんが急に皆に聞いてきた。
「めいどちょうの なまえって なんていうのですか?」
領主さん一家がぎょっとした顔をした。
「え?メイド長の名前か?あの母上?」
「まあオットーったら最愛の女性の名前を知らないだなんて酷くないかしら?」
お母上さんは何となく領主さんを攻撃しているが、何故か目が泳いでいる。
「実は私もメイド長さんのお名前知らないのですよ。教えを請うても宜しいですかお母上さん」
お母上さんは急にそっぽを向いて答えた。
「湖畔を楽しむのも良いものねぇ」
「いや、見ている方陸方面ですよ」
「……たのよ」
困惑した表情でお母上さんが口ごもった。
「忘れたのよ!ごめんねメイド長」
「メイド長、いつも頼りにしているのにすまない」
お母上さんと領主さんが一斉に謝った。
「ええ~、覚えてないとか酷いじゃないですかぁ~。で、私の名前ですけどね~」
それを邪魔するかのように声がかかった。
「逃げて!暴れ馬だー!」
そこいらを移動していた行商人の引馬が手綱を引きちぎり逃げ出したようだ。
「おう!俺に任せろ!」
「子供たちを守るのは母の至上の役目だわ!」
「主君を守るのは~、メイドの務めですぅ~」
領主さんとお母上さん。そしてメイド長さんが身を挺して若い子供たちを守りに立ちはだかる。しかし暴れ馬は二人を信じられないような跳躍を見せて飛び越えた。
で、馬がやった事は柏餅を一つパクっと食べただけだった。
「あらまあ。馬も大好き柏餅なんですのね!」
「アハハ。おいしい?」
「あねうえたちを おまもりします」
緊迫からのほっこり動画を見せられた気分になった。
「で、そろそろ私の名前なんですが~」
メイド長的には領主一家に名前を覚えて貰いたい一心だ。
「ああそうだったわね!皆、メイド長が名前を教えてくれるわよ!」
とりあえずお母上さんが皆を落ち着かせてメイド長さんの自己紹介を促す。ここら辺はさすがのお母上さん。鶴の一声で皆さん落ち着いた。
「はい~。私の名前ですけど~」
「わーい ねこちゃん かわいい~」
ここで質問主のフリコさんが野良猫を見つけて喜び出した。こちらは突き刺したメザシが気になるようだ。
「わーい。猫ちゃん可愛いねー」
子供組はもうメイド長さんの名前より猫に夢中だ。
「でぇ~。私の名前なんですが~」
「おい見ろ!あれはなんだ!」
突如領主さんが叫び出した。それに驚いた猫は逃げていった。
「なんですか~若旦那様~!今度はどんな暴れですか~?暴れ女騎士でも出ましたかぁ~」
メイド長さんは軽くぶち切れている。しかし暴れ女騎士って何だろう?ちょっと見てみたい。メイド長さんには気の毒だけど。
領主さんは空を見上げて答えた。
「見ろ!UFOだ!」
確かに空にはプカプカとアダムスキー型の空飛ぶ円盤が浮かんでいる。
「暴れ女騎士よりタチ悪いじゃないですかぁ~!」
メイド長さんの雄叫びが耳に残った。
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