第77話 領主さんに深夜の訪問者
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珍しく領主さんが夜遅くまで執務に明け暮れる事になっていた。
大して計算が上手い訳でも無い領主さんではあるが、領地運営の決算書はどうしても付いて回るようだ。
領内にはそれらしい文官など居ない。決算書も自力でやらなくてはならないようだ。言ってくれたら私がやるのに……
先程メイド長さんも領主さんに明日に堪えるからもう休めよとか言われ引き下がり、自分の家に帰っている。
静まり返った執務室には領主さんしか居ない。もう誰も起きていないお館に、何故か足音が響く。領主さんがそれに気付かない訳がない。
領主さんは立ち上がり、足音に誰何した。
「何奴だ?ここがリブラ伯爵家領主館と知っての狼藉か?」
領主さんは丸腰のまま足音に立ち塞がった。
「これはとんだご無礼を。どうか釈明の時間を頂戴出来ませんか」
領主さんは物腰と着衣の縫製を見て、領主さんはそれなり以上の人物と感じたらしい。
「いや、要件は何であろうか」
「はい。我々はこの世界での言い方で言えば異世界人となりますでしょうか。実は空を移動する乗り物が攻撃を受け、お庭に不時着しまして。修理の間の約1刻、滞在許可を頂ければと」
声の主はアリタだ。何故現地の文明保持種族である人間とコイツは会話しているんだ?
と、思っているのだが、どうやら領主さんは選ばれたのらしい。比較的に柔軟性が高く、そして後世にこの邂逅をおとぎ話として残してくれる人物にだ。
世界の神話とかなんちゃらなんかは大概コイツら見守りパトロールが残した言葉だったりする。やれ世界の滅亡とかやれなんちゃらなんかはコイツらが文明が滅びる前に修正させるためにおとぎ話に様々な話を提供するのも役目なようだ。
確かに外には宇宙船が煙を吐いて停止している。しかしコイツらの技術水準なら何の苦もなく修理出来るだろう。
「ああ、あれか。俺の目にはグリフォンに見えるのだがな」
「あれは星まで届くグリフォンです。異世界人同士の虚空合戦に巻き込まれましてね」
「それはお気の毒に。何か必要な資材は有るのかな?」
「いえ。お庭をお借り出来れば充分です」
「そうか。それにしては音も振動も無く着地出来るのだな」
「ああ、それは重力制御回路についてはダメージが当たっていませんでしたので」
領主さんは何が何やら分からないという顔をしたが、やっと答えた。
「なるほど凄い技術だな。どうだ?この技術を使ってこの領地はおろか大陸を制覇してみてはどうだ?空から攻撃されて手が出せる相手なんかワイバーン宙空騎兵隊くらいだろう」
「我々はそのような事に価値を見出だしません。むしろ皆さんが我々の世界に旅立てる日が来るのを待ちわびているだけです」
アリタはにこやかにそう言う。
「俺たちにもそれが出来るのか?君らから見たら陳腐な世界だろうに」
「待てばおよそ2000年後には」
「それはアレだな。未来に期待するしかないな」
「そうですね」
アリタは笑顔を見せながら続けた。
「しかしながら多くの文明を保持した世界がそうなる前に滅亡してしまうのですよ」
「ほう?」
アリタは魔法・科学・錬金術によって発達したそれぞれの文明が、何故か温暖化と自壊叛逆を起こしてやり直しになったり、文明保持種族が死に絶える事を話している。
「何にせよ良くあるのが『ソドムの光』とか呼ばれる国を丸ごと呑み込む煉獄の焰に世界を焼かれるのです。その灰は大半の生きる物に疫病をもたらすのです」
などと科学文明なら核兵器、魔法文明なら素粒子回帰、錬金術文明なら原子崩壊術式を説明している。
そうならない為にもその知識を持ったとしても、それを世界に使わないモラルと優しさ。それを育成するのは今からでも早すぎる事は無いのだと言う事。そして世界の為になることなのに、それが一人ひとりの心掛けなのだと言う事を説明している。
領主さんに言わせればどこまで本当の話かは分からないが。
「ところでそんな大事な事話して良いのか?見守るのが役目なのだろ?」
「レールの修正は必要ですからね」
「まあ、人に話しても狂人扱いされるだけか」
そう領主さんが笑うと、アリタは首を横に振った。
「確かに単に話せば狂人ですね。しかしながら伯爵閣下はこの出会いを面白おかしく残してくれますでしょう?」
「なんだ?そう思って話をしたのか?まあ間違いなく面白い話だな。そのまま残してもほら話で済みそうだけどな」
領主さんとアリタが快活に笑い、ひとしきり時を過ごした頃、宇宙船の修理が完了した。
「軒先をお借りして大変な失礼を。お礼替わりにお受け取りください」
そう言って拳位の大きさの金剛石を差し出した。
「こ……こんな大変な物を!これどうやってこんな形にしたんだ?」
金剛石は見事なブリリアントカットになっている。
「これですか?人工的に作り上げたのです。ちなみに皆さんの世界では高額だとは思いますが実際の価格はこの世界で換算して大銀貨6枚程度なのです」
領主さんはしばらくきょとんとしていたが、あまり遠慮するのも失礼だと思ったのか、受け取る事にしたらしい。
「とびきり面白おかしくこの邂逅を残しておくさ」
アリタはニコリとして宇宙船という名の空飛ぶ乗り物に乗って出発した。
ちなみにその金剛石を婚約者さんの指輪にしようとしたが、勿論大きすぎるし重すぎる。結局それはダンジョンの一部である図書館の大ホール前に、ガラスケース入りで展示されることになった。
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