表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/120

第70話 謎の親切団

 見つけてくれてありがとうございます

 難民は少ないけど毎日やって来る。領主さんはその難民をダンジョンに送り、疫病や疾病をこちらで診るわけだ。野戦病院はどんどん忙しくなっている。

 そして近頃難民から話を聞くと、親切な自称盗賊団が現れては病人をいち早く病院に運び、一命を取り留めたという美談が後をたたない。

「この親切な盗賊団……親切団は何者なんだろうな?出会ったら褒美の一つもくれてやるのに」

 領主さんは呟く。

「これ、ダンジョンさんの計らいでは無いのだろ?」

「ええ。私も知りません」

 これは本当だ。近頃では来客(ゲスト)なり患者なりが多くなりすぎて訪問者を確認しきれていないのだ。

「よし。この謎の親切団を探そう。褒美だ。何より褒美だ」

 領主さん命名親切団を探し当てる事になった。

 私も探すふりくらいはしなくてはならないだろう。けど正直そこまで探す気にならない。だってポイントになるもの。それに多くの人間(ヒューム)が助かれば、再来客となりうるもの。

 

 てなわけで謎の親切団探しは遅々として進まない。神出鬼没にして本拠地も不明なのだから。

 来る日も来る日も、領主さんの元には謎の親切団から食糧だの医療だのの施しを受けたという報告だけが届いた。


 そんな中一人の女性が動いた。メイド長(名前は知らない)だ。

「若旦那さま~、お困りのようですねぇ~」

「困っている訳では無いよ。ただ褒美を取らせたいし、感謝も伝えたいよな」

「ならば~、私が見つけてみます~。報酬を要求してもい~ですかぁ~」

 何故か領主さんに報酬内容を耳打ちして伝えるメイド長さん。何を報酬に貰いたいのやら。

 読唇術は技能(スキル)として有るには有るが、興味が無いから使っていない。

 

 メイド長さんはまず町医者に訪問した。

 近頃では町医者のスキルアップと医療技術の向上を目指し、ダンジョンの野戦病院で研修会が行われ、町医者の質と知識の向上に努めている。

 町医者から研修会の日取りを聞きつけ、メイド長さんもそれに参加すると言い出したのだ。

 別段可笑しな話ではない。現状この世界では『医者』になるのに資格や学歴なんか必要無い。

 酷いこと言えば明日から医者になると言えばもう医者なのだ。ましてや本人が医者になるかどうかは別として、知識として医術を学びたいという人を拒む理由なんか無い。そこであちこちに探りを入れて、遂に元盗賊こと親切団を探し当てた。

 盗賊団という事も有り、あまり領主さんの前に出たがらなかった彼らではあったが「若旦那様は~是非褒美を与えたいと仰せです~」というメイド長さんの一言に従い、領主さんの前に立つ事になった。

 あの裏表の無い領主さんのやることだ。当初騙し討ち等を心配していた親切団に親しく声をかけた。

「多くの未来の領民を餓えと寒さと病気から救ってくれたそうではないか。諸君らに褒美を与えたい」

 こんな相手に対する領主さんはやけに気前が良い。

「まずお前達が居る場所はお前達の領土となす。そして我が前に(ひざまず)け」

 それは間違いなく騎士叙任の合図だ。

「いえ。脱走兵崩れの元盗賊にそのような」

「知らん。ここに居るのは領民になる者に慈悲を与えた者達だ。潔く跪け」

 遂にリーダー盗賊団のリーダーが跪いた。

「宜しい。貴様を騎士に任命する。さあ、名乗れ」

「あっしは盗賊団のリーダー。元ソンナ王国伍長、カネガ・ホッスィと申します」

「軍属とはありがたい。もうお前達が襲撃したモンダナエ子爵には俺が雇い入れる事を承認して貰っている。我が領初めての騎士として多くの民を救ってくれ」

 領主さんは土地に酒肴に爵位までプレゼントした。大盤振る舞いだ。


 さて、私は何故か居残りを要求され、応接室で待たされた。


 その頃謁見の間ではえげつない事を領主さんがさせられていた。

「さあ~、若旦那さま~、はやくはやく~」

「おい。ホントにそれを報酬として欲しいのか?」

「はい~。一生の思い出にします~」

 領主さんは小さくため息をつき、諦めたようにメイド長さんの前に両膝をついた。

「はやくはやく~」

「くっそ!」

 領主さんが諦めたようにやり始めた。メイド長さんの胸の辺りに顔を埋めて言い出した。

「わーい、ママありがとう。ママ大好きー!おい、これが報酬なのかよ?」

「うふふ~。私には息子は居ませんからね~。なんか息子が出来たみたいです~」

「息子じゃねーよ。ママは頼りになるねー」

「うふふ~。もっと頼って良いのですよぉ~。そうだいっそまたおっぱい触ります~?」

「ガキの頃の話じゃないか!ママありがとう」

「うふふ~。三つ子の魂、百までです~」

 何故か口では嫌がっているものの、領主さんはノリノリだ。背中に回した手に何故か力が込もっているし、口元は何故か笑みが溢れている。

 思いの外この美人でも可愛くも無いのほほんなメイド長(名前は知らない)を、領主さんは気に入っているようだが、何故アレを気に入っているのかはちょっと分からない。人間(ヒューム)とは不思議な生き物だ。

 読んでくれてありがとうございます

 もし良かったらブックマーク、評価、いいね、感想、レビューなど頂けましたら嬉しいです

 

 只今連載中

 犢端高校勇者部活動記録   https://ncode.syosetu.com/n0115ie/


 爆笑!元朝秘史

https://ncode.syosetu.com/n3161if/


完結作品

 素人集団!!国家連邦政府宇宙軍第6艦隊奮闘記

https://ncode.syosetu.com/n7603hp/


 ココチュのフェイクニュース

https://ncode.syosetu.com/n7689id/


各種短編

 伯爵閣下がホラ話で領地を盛り上げてみるようですので発表します

https://ncode.syosetu.com/n0773gs/

 

 精霊だらけインタビュー

https://ncode.syosetu.com/n9175hv


 SS 家元になろうよ

https://ncode.syosetu.com/n4840hw/


 なども書いております。宜しかったら見て行ってください


Twitterやってます。@kokochu539です。

大したことはしていませんが、フォロバは確実です。お気軽にどうぞ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ