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第69話 ママーナ・モンダナエ子爵令嬢の活躍

 見つけてくれてありがとうございます

 領主さんの許嫁は両親が決めたものだそうだ。お互い国境付近の守りの要として武門の誉れ高い父親さん同士仲が良く、友誼(ゆうぎ)の証としての婚約という側面が強いそうだ。

 しかし6歳年下の許嫁ママーナ・モンダナエ子爵令嬢は現在12歳。俺の事は半分自身の兄という扱いだし、お隣の子爵領から毎日遊びに来ている理由も別段領主さんに会いに来ているのではなく、半分は妹のイーナさんと遊ぶために来ている。


 残りの半分はまた別の理由だ。後で説明しよう。


 そして領主さんも一応許嫁と大切にしているが半分以上は新しく出来た妹という扱いだ。本来はいけないのかも知れないが今はそれでいい。とか思っていそうだ。


 貴族としてのたしなみも作法も見事なママーナさんだが、実は結構なはねっかえりな女の子であり、馬術と弓術は並みの戦士では敵わないほどの腕前だ。今は短弓しか持てないが今まで狙った獲物を外したことが無いし、馬術はかなりの曲乗りや障害もさらりとクリアできる腕前なのだ。

 その腕前たるや、先日国境を越えてきた敵の将軍を一擶で討ち果たしたのだからお察しだ。

 子爵領は伯爵家に比べて更に貧しいようで、厩舎にも経済的にもママーナさんに馬を与える余裕がないとのことだ。

 彼女が当家に足を運ぶ残り半分の理由は、当家で飼育しているポニーに会いに来ているのだ。ママーナさんはその馬にダイハーン号という、騎馬民族がよく付ける名前をつけて可愛がっている。


 そんなママーナさんが王都で主催される弓術大会に少年少女の部で出場するので、伯爵家と子爵家一同で応援に来ているのである。何故かそれに私も同行することになった。

「来てくれて嬉しく思いますわ。オットー様、ダンジョンお姉さま」

「君の腕前なら優勝も狙えます。頑張ってくださいね」

「ええ。王都の度肝を抜いてやりますわ」

 ニッコリと笑みを浮かべて気合の程を見せつけるママーナさん。彼女はどうしたことか馬車に乗るのを嫌がり、ポニーのダイハーン号に跨ってやって来ている。だからだろう。ママーナさんはいつ来てもいつ見てもズボンを履いている。


 弓術大会は大いに盛り上がる。3本の矢を放って得点を競う形式なのだが外せばため息が、当たれば大きな喝采がどの出場者にも送られる


 拡声魔法でママーナさんが呼ばれたがママーナさんはえらい所から返事を返した。

 的のはるかに右側遠方で、ダイハーン号を走らせ大きな返事をし、既定以上の距離から騎射して当てて見せたのだ。俗に言う流鏑馬だ。大きく駆け抜けたママーナさんは(きびす)を返し、弓を右手に持ち替えて反対側で今回も見事に射抜いた。


 最後は的の後方から前に走り抜け、既定の位置を超えたところで上半身をぐるりと返して叫んだ。

「必殺!ママナリアンショットー‼」

 あれは騎馬民族にしか出来ないという伝説の曲撃ち『パルティアンショット』ではないか。

 あっけにとられていた観客は全員ただ無言だった。呆気に取られたというより、信じられない物を見せられた思いだったのだ。

 余裕の笑みで弓を高々と上げたママーナさんの雄姿を見て、思い出したように観客が一斉に歓声をあげた。

 なるほど。王都は言い過ぎだが会場の度肝くらいは抜いて見せたわけだ。拍手は鳴りやむことなく、ママーナさんは歓声に応え騎乗のまま会場を周回した。

 これにはリブラ家、モンダナエ家の皆さんもご満悦だ。しかもパルティアンショットなどという遊牧民でなければ出来ないだろう大技を、挙句の果てには的のど真ん中を撃ち抜いてみせたのだ。しかも規定ラインより随分遠くで。

「見事だぞママーナ嬢」

「ママーナお姉さまやったー!」

 初めてお会いしたモンダナエ家の皆さんも大盛り上がりだ。本当にこれは凄い。練兵場が欲しいと言い出した意味が分かった。この大技をたった一人だけの隠し芸にしてはならないだろう


 的に見事3本の矢を突き立て、得点も恐ろしく断トツだったママーナさんだが、今回は『今大会は騎射の大会ではないから』という理由で失格になってしまった。

 しかしママーナさんは充分満足そうだった。1位の子よりもママーナさんに送られた歓声が大きかったのだから。


 余談ではあるが、騎射の大会を新設しようという話は出てきたがそれの実現には20年の時を要した。騎射が出来る人物をリブラ伯爵領以外で育成するまでに時間がかかったからである。


 この弓術大会がのちに『ズボン姿の女弓騎兵』という全25巻の長編小説の主人公『マリアナ・モンテス』のモデルとなったママーナ・モンダナエ子爵令嬢の物語の第一章となったのである。

 読んでくれてありがとうございます

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