第67話 図書館猫リブロス
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ワシは猫。猫に名前なぞ有る訳なかろう。ワシはあの太めな雌ニンゲンから魚を頂戴しようとし、格闘の末に敗れた。誠に口惜しい。しかしこれも定め。ワシはあの太めな雌ニンゲンに従う事にした。
太めな雌ニンゲンはワシにトショカンとか言う家まで与えワシを養う事にしたようだ。
まあ長年孤高の野良猫であった訳じゃが仕方ない。美味い物もくれるようだしここに住んでやろうではないか。
ほほう。頭に1本角が生えたこの魔物がワシの世話役担当なのか。
じゃがこやつ。
太めな雌ニンゲンよ。信じて良いのか?こやつはお主よりそうとう手練れじゃぞ。ニンゲンなどより高い魔力。隠しておるが見える角と短い尻尾。こやつはおそらく魔族とか言う奴じゃな。
「やあ図書館猫のリブロスくん。おトイレは必ずここでするんだよ。そこいらでやってはダメだからね」
こやつ、何故かワシにも分かるように言葉に魔力を乗せ言霊にしておる!ワシは返事をするしか有るまいな。
「にゃー」
「そうかい。宜しくね。ここでキミはネズミを捕らえて見せびらかして欲しいんだ。そうしたら美味しいご飯が貰えるからね」
「にゃー」
「でもまあ、そう簡単に納得してくれても困るな。なんたってお互い言葉なんか分からない筈なんだもの。だから3日一緒に居させてね」
「にゃー」
「フフ。いやがらないでくれよ。悪いことはしないからさ」
この様子を見ていた太めな雌ニンゲンとこの家の主の白髪の雄ニンゲン、その番ではない白髪の雌ニンゲンがワシらをきょとんとした目で見ておる。ワシと雌の魔族の間では話が通じておるが、ニンゲンには分からんのだ。
「あの。通じてるんですか?」
とうとう白髪の雌ニンゲンが聞いてよこした。ワシには何を言っておるのか分からん。
「通じてるわけ無いじゃないか。それでも語りかけ、伝える。コミュニケーションの第一歩さ。人間の赤ちゃんもそうやって育てるだろう?」
「ああ。なるほどですねえ」
白髪の雌ニンゲンは納得したようだ。そして魔族の雌はワシとの意志疎通に使った魔力と魔法を伝えたく無いようじゃな。
まあ秘密にしておいてやるさ。
なにせワシはニンゲン共と会話なぞ出来んのだからな。
「リブロスくんへのしつけは3日位かかるかな。図書館にはりついて教えなくてはならないからご厄介になるね」
トショカンのニンゲン共は『まあダンジョンにもなっているし』とか言いながらそれぞれ餌探しにもならない作業を始めた。ニンゲンのやる事は分からん。餌探しにもならない事に齷齪するのだから。
「さてと。これでもう良いよ。美味しいご飯を食べる為にネズミでも狩りに行くかい?」
「お主……魔族か?」
「そうだよ。怖いかい?」
「ああ。あの屈強な太めの雌ニンゲンより余程な」
「人間もキミも、私は誰も怖がらせたくないんだけどな」
「それをどこまで信じて良いのかも分からんのよな」
「まあそう言わないでくれないか。もう美味しいご飯は用意してあるからさ」
まあ魔力が高く角と尻尾の生えてるのにニンゲンに擬態する化物には逆らえまい。面倒でもネズミを狩り取ってやろうかの。
ワシらの嗅覚にかかればネズミなぞすぐに見つかるし、その本能故にネズミが逃げ出そうとしては追いかけを繰り返してしまうもんだ。
ネズミどもなぞ捕らえるなどお茶の子さいさいじゃ。ほれニンゲン共、ワシが直々に持ってきてやったぞ。どうじゃ?ほれ美味い餌を寄越すのじゃ。
あ、何これ柔らかくて美味しい!おい、ワシの集会所の仲間も連れて来て良いのかの?これはみんなにも喰わせてやらねばなるまいさ。
「そうだリブロスくん。他にも図書館と周囲の為に猫ちゃんを紹介してはくれないか?」
などと雌魔族も言ってきおった。ならば遠慮なぞ要らんな。次々仲間を集めて捕らえて来てやろうではないか。
「フフ。それはありがたい。出来れば図書館の壁の内側で始末してくれるかい?ご飯なら私からも支援しよう」
「それは気前が良い。だがニンゲン共に媚びなんぞ売らんぞ」
「構わないさ。人間にはきみ達の全てが可愛く見えて仕方ないのさ」
「何を言っておるのか分からんが美味い餌の為だ。どれ。行ってネズミどもを狩り倒してやるかな」
ワシは仲間を誘いに早速猫専用出入口から外に出た。どうやら雌魔族の言うことは間違いないようで、白髪の雄も雌ニンゲン共はワシの後ろ姿を柔らかい雰囲気を放ちながら見送っておった。さてと仲間を集めて楽しい狩りの時間だ。美味い餌出せよ。
「やあ、頼もしいね」
雌の魔族が話しかけて来る。
「お主、ワシらと話せる事を何故他のニンゲンに知らせない?」
「知らせたら動物係にさせられてしまうよ。それは生憎私の本意ではないからね」
「ワシもじゃな。話し相手にはもう少し弱いニンゲンの方がありがたいのう。お前さんはかなりの手練れなのだろう?」
「そんなこと無いよ。他の人間より少しばかり魔力が強いただの魔族さ」
ニッコリ笑う雌の魔族だが、魔力を抑え込んでいるようだがその恐るべき魔力が猫の目に見えないとでも?
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