第52話 賊だ!領主軍出撃!
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その日は領主さんにお茶会に招かれている。私と領主さんの関係は概ね良好だ。領民というよりいわゆる名士の一人として迎えられている感じだ。
そのお茶会での話だ。
「うーん。盗賊退治の武勲をダンジョンさんに取られてしまったからね。こちらも考えたんだ」
「考えた?何をどのように?しかも領主さんほどの方に盗賊退治の武勲など」
そんな話のおり、執事さんとメイド長さんが急いでやって来た。
「若旦那様、賊が出たそうにございますぞ」
執事とメイド長が血相を変えて報告に来たのだ。
「賊だと?どこに!どんな相手だ?」
ちゃんと血相は変えてくれてもメイド長ののほほんぶりは相変わらずだ。
「はいー。西の村近辺でレンダさんのニンジン畑を穴ウサギが食い荒らしましたぁ」
「メイド長、ちゃんと演技して!」
領主さんの下知が飛ぶ。そしてこちらを見て言い出した。
「春になると野生動物が動き出すからね。盗賊と呼ぶことにしたんだ。ところでメイド長、穴ウサギではなくちゃんと盗賊とか言って!」
のほほんとした顔のメイド長さんに更に声をかける。
「うむ。敵を知り己を知れば百戦危うからずだな。正確な報告大義であるぞメイド長」
「ご褒美くれても良いですよぉ若旦那様」
とか言いながらメイド長が手の甲を領主さんに差し出す。そこに接吻をしてくれということだ。メイド長さんは王女様なのか?
しかしそれもそれで面白がって領主さんはメイド長の御前に跪き、挙句手の甲に接吻している。
この領主さんと近習達は何をして遊んでいるんだろう。
「ふふふぅ。今日この日の思い出は墓の中まで持っていけますよぉ~」
とか言いながらメイド長さんはくねくねしている。
「領民の財産はそれを徴収するしないに関わらず領主たる私の財産だ。賊を討ち果たすぞ。領主軍総数3万を出撃させるぞ」
「3万?」
「あー。ダンジョンさん、実際は俺と執事のセバスチャンとそれから門番のゴンザの事だよ」
「御意」
「若旦那様、留守はお任せくださいませ~」
そこに今回は援軍も来てくれた。
「オットー様、私も加勢いたしますわ」
許嫁のママーナさんが助成を申し出た。実はこの美少女、馬術と弓術が人並み以上に上手い。
「おお、子爵領より1万の援軍が」
「お兄ちゃん、私も遊びに行く」
妹のイーナさんも姉のように慕うママーナさんと出掛けたいようだ。
「ああ。来るかい?でもイーナはちゃんと安全な所で見ているんだよ」
「はーい」
元気な約束もとりつけたところで馬を揃えて出撃となる。ママーナさんの馬は当家の馬房に居るし、イーナさんは領主さんの馬に一緒に乗ればいい。
「各地で賊軍討伐の義勇軍や散開勢力を拾いながら進むぞ、出撃」
「狩人さんや現地の方々の事ですわね」
唯一のツッコミ役であるメイド長さんがお留守番なのでママーナさんがちゃんと方向修正してくれる。
本当にこの領主さんチームは楽しそうだ。私はというと馬ゴーレムを乗馬用にしたものをダンジョンカタログから引っ張り出して跨がった。服も赤いメルトンジャケットに黒いズボンにした。某国の近衛兵の装いだ。
あっという間に開拓村には辿り着ける。何の事は無い。開拓村と言うより12年前にもあった他国間の戦争で流民が流れ込んできたので、領都の西側で畑仕事をしてもらう実験農場の成れの果てだ。
話を総合するとそれこそが第1開拓地なのだそうだ。
被害状況の報告を聞くと賊の数は15万(穴ウサギ15匹の事)、ニンジン畑の被害は1割ほどだという。
捜索をしてみれば早速賊の一部と遭遇した。ママーナさんがすかさず矢を射掛けたが賊はこちらに気付いて逃げてしまった。
「いえ、手応え有りですわ」
ママーナさんが賊の消えた方に走り出す。全軍(?)でママーナさんを先頭に進むと深々と矢が刺さった賊が倒れていた。
「今夜はウサギの鍋ものですな」「一番槍は頂きですわ」「お嬢さんが仕留めたぞ俺たちも負けるな」
ワイワイと皆が称賛したり督励したりしている。士気はうなぎのぼりだ。勝てる!領主軍はこの賊に勝てるぞ。とか領主さんは手に力を込めてガッツポーズなんかしている。
ついに賊の本拠地(穴ウサギの巣)をつきとめた領主軍は義勇軍の所持していた攻城兵器(穴ウサギを狩れる犬)や毒ガス攻撃(穴のそばで火を燃やして燻り出しているだけ)で全ての賊を殲滅し、更に周囲の魔物の群れ(近辺に居たオオカミ4頭と鹿12頭猪6頭)まで討伐できた。
勝利の栄光と興奮冷めやらないまま開拓村に帰還した領主軍一行は領主さん主催の祝宴に突入し論功行賞まで行った
「戦功第一、一番槍他7万撃破。ママーナ・モンダナエ子爵令嬢。銀貨5枚と毛皮3枚、矢15箭を下賜」
「嬉しいですわ。オットー様」
「戦功第二、3万他オオカミ1万撃破。義勇軍ポクテ。銀貨5枚と矢15本を下賜」
「義勇軍じゃなくて狩人ですが感謝します」
「戦功第三……」
その日は開拓村の宿に宿泊し翌日帰ることになった。祝宴も大いに盛り上がり、開拓村の住民たちにも親しく声をかけて回る。
村長一同から
「自分たちのような元異国民にまで優しくしてくれて感謝します」
とホロリと涙を落とした。
「異国民じゃないぞ。もうお前たちは俺が愛し守り慈しむ領民なのだ」
みんなの酒も適度に回っているようだ。逃した賊軍(有害鳥獣)の話や狩った賊の利用方法で宴もたけなわだ。
「領の平穏を取り戻せた事は素直に嬉しい。そう思って付き合ってくれよ」
領主さんはこちらに笑顔で言ってきた。
「この領民を愛し慈しむ素晴らしき領主さんのもとに来れた事は非常に嬉しいですよ」
私はそう答えた。
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