第50話 種蒔きの季節
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種蒔きの季節がやって来た。私が招待して53開拓地の種蒔きの様子を領主さんにお見せする形になった。
53開拓地は完全な捕虜と孤児による集落となる。実のところ捕虜には案外女性も多く含まれており、気の合った者どうし交際が始まった者を集めて住民にした。この新夫妻が20組といつかの偽奴隷商人が連れてきた子供を養子にして貰い、新しい家族とした。
交際が始まったとは言え割と四十代カップルも多く、子供が望めそうにも無いならと、縁組みは順調だった。
とまあ、私からのこの街について説明する事なんかこの程度しかない。残りの説明は図書館の奴に丸投げだ。
領主さんは手ぶらで来ても良いという程土の状態も良くしてあるし、ましてや離れた窪地では先日の夜に降った雨が早くも貯まっている。
畑の種蒔きが始まった。1つ目の畑では慣れない手つきでザルに入っている種をばらまいている。
「あれは蕎麦という作物の種蒔きなんだ。ばらまいておけばその内実になる便利な作物だよ。楽で良いよね」
領主さんに説明をする図書館。
「楽で良いならもっと広めたいもんだな」
領主さんの言い様は尤もな話だ。しかし図書館はそれに答えず、次の畑に案内した。
「ここはジャガイモという作物を植えてるんだ。芋を切って処理したらそのまま地面に植えるのさ。貧しい土地でも良く育つし寒さにも強い。ただし虫害には気を付けないといけないんだ」
「ほう。ならば街中植えまくれば良いじゃないか」
「それはダメだよ。これは連作が難しいんだ。一応裏作に長ネギを植えるつもりなんだけど、それしか作れないと麦が取れなくなるからね」
感心しきりな領主さんが首を縦に振りながらじっと見ていた。
働いている元捕虜の住民達が深々と頭を下げる。それを制止して領主さんが声をかける。
「諸君らは俺が愛すべき領民なのだぞ。ここの領民と来たら敬意よりもからかいを向けるのが好きなんだ。気にするなよ。楽しく暮らしてくれないか?」
元捕虜達は本人達の話によると、領軍が弱小と見たリブラ伯爵領を通過し、そこを経由して敵軍の背後を襲う気で居たらしい。幸いにして開拓地や村等が無かった為、略奪暴行の類いが無かったようだが、もしかしたら村を見かけたら襲撃して食糧を略奪しただろうと言う。気が気でならないのは本音かも知れない。
さて領主さんと図書館に目を向けると今度は3枚目の畑の説明をしている。
「この畑にはもう少し暖かくなってからカボチャの苗を植えるんだ」
「苗?何故苗なんだ?直接蒔けば良いのに」
苗の育成場所に案内しながら図書館が答える。
「カボチャの育成には広いスペースが必要なんだ。1個芽吹かない種が有ったら被害が大きいからね」
やはり感心しながら領主さんが頷く。
「ああ、そう言えば貴殿とは図書館でお会いしただけだったね」
「やあ、名乗り遅れたね。私は37番目の図書館魔族。そして図書館族で魔王をしているんだ。怖がらないでくれないかな?」
「このような可愛らしい上に600年余りを生きた人生の大先輩魔王を拒む門なんか無いさ。それに図書館への贈呈……」
「本のセレクトは順調だよ。3日後には贈呈出来るさ」
「贈呈前に一言欲しいな。派手な贈呈式を行おう。本のチョイスは貴殿お一人で?」
「ああそうさ。この世界の科学、錬金術、魔術体系に見合う本を選ぶんだよね。植物学だとこの地にはない花や草を注釈を付けたり前書きを付け足したり。まあ楽しくセレクトしているよ」
「そうですかありがとう。では魔族さんと呼ぶのも失礼だし、セレクトさんとでもお呼びしようか」
一瞬図書館が動きを止め、それから返した。
「それは素敵な名前だね、ありがとう」
鑑定で覗き込むと図書館は名前を得て状態進化したようだ。名前にセレクト、種族がアラクネからアラクネクイーン、更に図書館族・教育学種という訳の分からない魔族になっている。
本当に嬉しそうにしている図書館の奴に領主さんが声をかける。
「セレクトさんが言う通りにすれば皆が潤うのだろう?何なら領民に布令を出すが」
「領主くん。私は農民の皆に納得した上でやって欲しいんだ。ニンゲンという生き物は時に頑なで、自分のやり方を変えたがらない。やり方が今までの生きざまだからなんだ」
「うむ」
領主さんは頷くしかない。
「だからこそ模範を用意した上で『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』ってもんだよ」
「ほう」
良く分からないながらも感心が買えたようなのを見て図書館が続けた。
「だいたい私達は成功物語の主人公なんかじゃない。相手にしているのは柔軟性と既知に富んだ物語の作者の都合に合わせた住民なんかじゃない。長年の経験を持ったヒトなんだ。そのヒトの経験を軽くいなして否定しようとしているんだもの。おいそれと靡きはしないさ。じっくり焦らず行くしかないんだよ」
外は青空。たなびく雲がポッカリと浮かんでいる。それを表すかのように図書館の顔は晴れやかだ。
近道って無いものかと領主さんの顔は雲ってはいるが。
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