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第48話 ダンジョンマスターの欲目

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 図書館の館員、更に領主さんのご一家と一緒に昼食にしながら私からお願いをしてみる。

「この領内に図書館が有ることは知っていました。しかし街の人に文字が読める人が少ないのにもかかわらず、良く完成された素晴らしい図書館だと思いました」

 まず交渉は相手の耳障りの良いお話からしなくてはならないのは承知の話だ。

 図書館職員の皆さんが丁寧に頭を下げる。そんな中マリアさんが答えた。

「これは森の学者先生の意見だわ!そのお誉めの言葉はどうか学者先生に!」

 意外な名前を聞かされた。図書館の奴だ。図書館の奴が文字通り図書館を徘徊しては入れ知恵していたのだ。

「ああ、私はその弟子でパトロン役みたいな事をしているダンジョンと申します。皆さん宜しくです」

 努めて冷静を装いながら挨拶した。

「森の学者さんもお人が悪い。言ってくれれば良いのに」

 私は思わずそう言えば出てくる物だと思っていたが、今回図書館の奴は出てこなかった。

「先日お会いしたわね!ところでお願いってなんなの!」

 マリアさんの会話は謎に力強い。気圧されてしまいそうだ。そこは何とか踏ん張らなくては。

「実は私、森に学舎と遊び場を用意しています。学びの場に以前から図書室が欲しいと思っておりまして。ただ、これ程立派な図書館が有るならそれは必要すら無さそうです」

 うんうんと頷きながら聞いてくれる領主さん一家と図書館員。しかし次の図書館員が全員瞬間驚いてこちらを向いてあんぐりした。

 まずは魔法を解除し角を露にし、そしてお願い事を切り出した。

「私のダンジョンの一部になってください!」

 自分が魔族であることを証したのはこれが二回目だ。

「私は魔族、ダンジョンマスター族。本来の名乗りは15863番目のダンジョンマスター。そして領主さんに頂し名はダンジョン。どうぞダンジョンとお呼びください」

 領主さん一家と婚約者さんは承知の話だが、私がダンジョンの一部に欲しいという話には驚いたようだ。

 そして図書館員は私の魔族としての象徴、角に驚いたようだ。

「ダンジョンの一部になって下さればこの図書館がやりたいと思う事を提供します。どうか」

 これに真っ先に口を開いたのはマリアさんだった。

「子供達が屋内でも退屈しない遊び場と遊具が必要だわ!」

 私はダンジョンカタログをひっくり返して遊具になりそうな物を提示し出した。

「それと大きな紙芝居なんか欲しいわね!あと、お話を身体全体で演じる何かも欲しいわ!」

「全て提供します!」

 ダンジョンカタログにはスポンジで出来たカラフルな積み木、ボールプール、文字通り大きめな紙芝居、そしてエプロンシアター等をカタログページごと提示した。

「で?ダンジョンの一部になって私達に何か不利益は無いのかしら?」

「有りません。むしろ会議室や講堂、それに拡張等も見た目を変えずに用意出来ますよ」

「もっともっと図書館にメリットを提示しなさいよ!」

「ならば私からチョイスした書籍2万冊寄贈するのはどうでしょう?」

 ここでこの打ち合わせの席上に図書館の奴が現れて追加を足した。

「私からも2万冊だ。宜しくお願いするよ司書くん、それと館長くん」


 突然の『森の学者先生』が現れた事に驚いた一同ではあるが、図書館は淡々と説明した。

「領主くんのご一家の皆様には初めまして。私はダンジョンくんの付近に遊びに来ている森の学者先生こと、37番目の図書館魔族、そして図書館魔族の魔王なんだ。宜しくね」

 ここでメイド長さんがお茶を提供した。それを「ありがとう」と受取り一口入れて続けた。

「図書館の役目は1つ目、社会教育施設として来館者が欲しい知識を提供すること。2つ目、様々な思想や文化、学術を書籍として保管、管理すること。そして忘れやすいのだけどもう一つ」

 全員がピタンとして聞いている。

 そんな中メイド長さんは優雅に一礼して図書館の奴から離れた。なんかこのメイド長さん、泰然自若として凄いな。

「三つ目、宗教、文化慣習等の違いからその知識や思想を赦さんとして起こる書籍の

排撃『ビブロテコースト』から書籍を守る事なんだ」


「お……おう。それから初めましてになるな」

 やっと領主さんが声をかけた。図書館はいつもの魔女の帽子(三角帽子)を取り深々と挨拶して続けた。

「三つ目の図書館の役割についてはね、2番目の図書館魔族がしつこく言うんだ。確か……さる初代皇帝の書籍保管庫なんだけどね。そこでとある思想の書物が焼かれ、その学者が(あなうめ)にされたそうだよ。何はともあれ気に入らないからと焼いてはいけないよね。だが、ダンジョンくんのダンジョンの一部になればその可能性はぐんと少なくなる。悪くない話だと思うんだ」

 図書館の奴は私に助け船を出す為に来てくれたのだ。

「やりたい事はまだまだ沢山有るわ!願ったり叶ったりだけど魔族ってなんなのよ!本当に利用者さんや私達に被害は無いのね!」

「有りません!むしろ私はダンジョンマスターとして、人間の皆さんに楽しんでいただきたいのです!」

 何故か私にまで『!』が乗り移った。非常に嫌な感じではあるが、こちらの熱意は伝わったようだ。

「まあ……ダンジョンさんなら反対する理由なんか無いがな」

 熱意に圧されたのか領主さんが首を縦に振ってくれた。

「図書館が魔物の巣窟にならないようなら。なあ」

 館長さんも頷く。

「宜しい!最後にダンジョンさんが色々出したけどあなたのメリットを聞きたいわ!」

 マリアさんの質問は尤もだ。

「簡単です。私のメリットは来館者と来館者さんの感情の動きが私のダンジョンポイントになるからです。これらの品々はダンジョンポイントで私が用意するのです。そのダンジョンポイントの一部をいただけるならそれが充分メリットです」

 私は洗いざらい説明した。マリアさんは前のめりだ。納得を買うまであと一息だ。

 読んでくれてありがとうございます

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