第47話 図書館!
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Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました
領主さんは今朝の授業参観に対して逆授業参観をしてやろうと心に決めたようだ。
領主さんのご一行が図書館に出向くおりに私も合流してみようと考えたのだ。
領主さんご一行の馬車はすぐに分かる。派手さや煌びやかさは皆無だけど、歴代領主さんの旗指物、ヒヨコと月桂冠という、何とも勇ましくも力強さもない紋様が翻っているからだ。あれが家紋ならリブラ家は代々何を考えているのだろう?あれ別段可愛くもないし。微妙過ぎる。
私が図書館前に瞬間移動 した頃、領主さんご一行の馬車も到着した。
「おはようございます領主さん。このような所でお会いするなんて奇遇ですね」
「ああダンジョンさんか。近頃よく会うな」
領主さんのお母さんとメイド長さんがこちらに笑顔で目礼をし、領主さんの弟妹と婚約者さんが私と偶然会った事を喜んでくれる。
「これから図書館を視察するんだ。共に来るかい?」
領主さんの目は、大概私の角を確認するために頭に目線をやり、顔を見てちょっと心を踊らせて、それから私の胸元に目を移す。これは年頃な男性なら仕方ないとは思う。
「まあ、それではご一緒させていただきますね」
正門の奥で早くも白髪交じりの図書館長と、眼鏡の女性副館長が領主さん一行を出迎えて待機していた。
「領主様、ようこそお越しくださいました」
「やあ。運営は順調かい?」
「ええ。ご紹介いただいた司書補のマリアさんは敏腕ですよ。それから……このところたまにお越しになる学者さん。どこであんな逸材を?」
「なに?マリアは優秀な司書なのか」
「はい。お陰で利用者も増えました」
「ほう。期待出来そうですね、領主さん」私まで興味津々だ。あのけたたましい女性が優秀とは。
図書館はそこにマリアさんが居ると思えないほど静かで、何人かの領民が書籍を楽しんでいる。どうもあちこちに小さなおすすめカードも刺してある。
『司書マートンのお勧め 小説・ケンテル帝国攻防記 合計18の国家が立ったケンテルの歴史小説 この中に出てくる人は3000人 誰一人同じことはしていなく、誰一人同じ結果になってない。 そんな歴史上の人物たちの軌跡を追い あなたも覇者になろう』
「ああ。これ帝王学の書に分類されますね」
私が思わずそのボソリと零した。横に居た領主さんはギョッとした顔をしていたが何故なのだろう。
『司書マリアのお勧め マチウス短編集 古代の戯曲作家マチウスの短編戯曲集 マチウス文学の入門書的存在のこの本から マチウス戯曲の名文達に触れて行こうよ!』
マリアさんのおすすめ札だ。マチウスという人物は約200年程前の戯曲家で、名作が多いと有名な人物だ。
『館長ミハイルのお勧め 鉄工学 いろんな所に使われる鉄という金属 知らない人は居ないでしょうがその奥行きと可能性は無限大です 鉄のノウハウにふれてみましょう』
ほう。館長はミハイルさんと言うのか。
『副館長エレノアのお勧め 冬の星座アラカルト 夜を彩る美しい星々を世界の星座や星の名前と併せて紹介する まるで星の宝石箱のようなシリーズ この本を片手に星々の世界に遊びに行ってはいかがでしょう』
「メルヘン「だな」ですね」思わず私と領主さんの声がハモる。この本たちが以前は作者名別に並んでいたが、マリアが有る程度分類し、小説/文学・歴史・科学・魔法学・錬金術・宇宙・生活・論文他きちんとジャンル分けされ、利用者からも好評なようだ。
以前だと本のタイトル順か作者の名前順の分け方が精々だったようで、探しにくさに拍車がかかっていたようだ。
「うん。あの方かなり優秀な方なようですね」
「ああ。予想外だ。で?そのマリアはどこに?」
「はい。児童図書室に」
児童図書室?そんな物用意した覚えないぞ?という顔を領主さんがしている。
しかしそれは図書館の会議室を潰した形で作られていた。図書館らしくない淡いオレンジの壁と様々な子供たちが描いた絵を飾り、3段位の書棚は小さい子供たちが手に取りやすいようになっており、そこにはたくさんの絵本や童話が置いてある。
更には角を丸めてクッションまで当て、出来るだけケガなどしない配慮が為された部屋だった。
「なんだこれは?子供の為の図書館なのか」
「私、今日来た甲斐がこれだけで有ったと確信出来ます」
図書館そのものに大して興味を示さなかったママーナさん、イーナさんにフリコさんは楽しそうに童話や絵本を手に取り、お母さんはフリコ君に頼まれて読み聞かせをしている。
「あ~。これこれ~」
メイド長までが絵本を手に取りこれ若旦那様に何度も読んでくれとせがまれた絵本です~と懐かし気にしている。
「ああ。覚えているよ。恥ずかしいから言わないで欲しいが」
「もう。うちのオットーはメイド長にべったりだったものね。悔しいからイーナとフリコはしっかり自分で子育てしたものよ」
「ふふふ~」と、笑うメイド長。すっかりノスタルジーに浸ってしまったが、マリアさんはどこかの子供にせっつかれ、絵本を読んで欲しいとせがまれている。
「じゃあ、みんなにも読んであげようね!」と、マリアは子供に言い聞かせ、急遽読み聞かせ会が始まった。無邪気な子供たちが集まる。俺もダンジョンさんもそっと近寄るとマリアさんは領主さんをを見てニコリと微笑み、私をを見て一瞬キョトンとしたが目礼して読み聞かせが始まった。
マリアさんの読み聞かせは実に表現力豊かで子供たちもそして私たちも引き込まれていった。びっくりなシーンでは本と自身を揺らして臨場感を高め、アドリブでキャー等と入れる。ページが変わるとみんなに良く見せてからそれに合ったアクションをしている。なんだこの人。実は凄いんじゃないか。
読み聞かせが終わってから私は思わず領主さんに相談を持ち掛けた。
「はぁ。図書館は欲しいと思っていましたが、私の近場に作るのは諦めます。こんな良い物私には作れません。そこで領主さん。館長さん副館長さん。それにこの天才司書さん。マリアさんでしたっけ?を追加で交えてひとつお願いを聞いてください」
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