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第41話 領主さんの朝 再び

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

「オットー!起きなさいよ!早く起きなさいよ」

 マリアさんが伯爵たる領主さんの部屋にズカズカ上がり込んで叩き起こした。

 マリアは乳母の娘で領主さんと同い年の17歳。幼いころから一緒に遊んでいた同い年の娘なのだが、昔からとにかくムチャクチャな女の子なようだ。この行動自体お手打ちにあっても文句が言えない事だろう。

 本気で思うのだがこの人どうにかならないものだろうか?


 領主さんの心の声は誰にも届かない。誰もマリアさんを止められないのだ。もちろん私がそう思う事もマリアさんのムチャクチャなパワーの前には無力だ。

「で、どうしたんだよマリア?」

 思いの外領主さんはマリアさんには呑気だ。何度流血しているのか分からないが呑気だ。

「ワタシとオットーで組んで吟遊詩人になるのよ!」

 なんで?うん。意味が分からない。という顔を領主さんはしている。私も意味が分からない。


「で、どうやってなるのさ」

「簡単よ!歌って楽器を弾けば良いのよ!」

  

 随分ザックリな意見が出てきた。何を言い出すのだマリアさん。

「二人でデュオ吟遊詩人になって王国で人気になれば領地が盛り上がる事間違いなしよ!」

 

 そう言えば領都でそんな吟遊詩人さんを近頃見たそれに触発された訳だ。なるほどマリアさんは流行には敏感なようだ。

「あー。でも楽器も曲も歌詞もないなー残念だなー」

「楽器はワタシ持ってきたのよ!」

 そう言ってマリアさんは領主さんにタンバリンを、自分にカスタネットを装備した。

「こんな楽器で吟遊~~~?」

 領主さんの驚きは私も納得できる。楽器が打楽器だけじゃないか。

 マリアさんは更に止まらない。そこら辺の書棚から本を一冊引き出した。

「歌詞なんてこの中から適当に抜き出せば良いのよ!」

「え?哲学概論?」

 マリアさんは問答無用で開いては適当に書き写してあっという間に歌詞を(つむ)いだ。


   無題

 作詞/マリア


 万物の元の物は劇場のイドラ 神は死んだというドクサ

 産婆論法を生み出すに至る


 ルネッサンス時期のスコラ哲学 われ思う故にプラクマティズム

 社会契約論サルトル

 

 流れるものは流れヘーゲル 私が何も知らないというツァラトゥストラ

 もっと光をアリストテレス

 

 書き留めた物をわざわざ音読したマリアさん。自分でも何が何だか分からなかったらしい。

 しばらく首を捻って訳が分からないという顔をしていたが、突如領主さんに突っ掛かった。

「早く曲作りなさいよ!」

 その無茶振りはいくらなんでも領主さんも困るだろうに。


「あー。じゃあとりあえず……」

 え?領主さん曲作るの?タンバリンとカスタネットで?

 ゆっくりタンバリンを2回叩くとレーナがカスタネットを1回鳴らした


 トントンカン トントンカン トントンカン トントンカン トントンカン トントンカン トントンカン


「曲が始まらないじゃないのよ!」

「いやパーカッションだけ集めてもさぁ」


 全くあなたと言う人はと散々言い散らかして暴れ倒してマリアさんはやっとは帰った。

「今日の所はこの位で勘弁してあげるわよ!」

 なんか出来損ないの悪役みたいな捨て台詞まで吐いて行った。


「なんでアイツ通したんだよ」

 メイド長に聞いてみればメイド長の答えはずるい物だった。

「あの子の邪魔なんてしたら~、豆腐の角に頭ぶつけられて殺されてしまいますからねぇ~」

 

 私はイービルアイ越しに、領主さんは直接マリアさんを見送る事しか出来なかった。

 マリアさんは別段オシャレでも顔立ちが可愛くも美しくもない。言うなれば平凡で小肥りな女の子だ。

 そんな大したこと無いマリアさんの背中を見送る領主さんの目は優しい。側近が多くはない領主さんにとって、意外にも大切な存在なのかも知れない。


 そしてたまに思うのだが私は村娘のアレと決闘(デュエル)する事になったら再起不能になるまで追い込まれるだろう。

 私は出来る限り接触はしないでいたいものだ。しかし、この女性、思いの外この地域のキーマンになっていくのだから手に負えないのだ。

 読んでくれてありがとうございます

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 只今連載中

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 なども書いております。宜しかったら見て行ってください


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