第38話 これこそが53開拓地
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53開拓地予定地に着いた私が降り立ち、先にお嬢さん方をエスコートするために手を伸ばす。本来男性の仕事ではあるが、この地にはダンジョンポイントで出した盗賊しかまだ居ない。それがゴミを撒いて広げて土を被せてを繰り返しているのだ。
ちなみに図書館はここには居ない。用が有るからと逃げるように行ってしまった。用なら図書館にはいくらでも有るだろうが、出たがらないのは本人の資質なのか臆病なのか。はたまた人見知りなのか。
あれこれ思ったが領主さんとお付きの皆さんを放っておく訳にも行かない。開拓地作りの説明をしようとしたら、それぞれからワイワイと質問が飛んできた。
「皆さんが蒔いてるこの臭い物は何でしょうか?」
「この窪みには何を入れるの?お姉さん」
「あら~。早くもミミズが沢山居そうですね~」
それぞれに私が回答しなくてはならないだろう。
「婚約者さん。領都で出たゴミです。妹さん、それは溜め池です。メイド長さん、それが狙い目だそうです」
「ほう。溜め池?でもすぐに染み込むだろう?」
これこそ待っていましたというべき質問だ。ありがとうございます領主さん。
「溜め池は一番低い所を探します。そこを更に掘り下げたらこれを使います」
私が魔法収納から石灰とケイ石を混ぜた物を取り出した。
「これに砂と砂利を混ぜて水で練ります。成形した後乾燥すると固まり水を通さなくなるのです」
ふんふんと頷く領主さん。後で領内に石灰やケイ石が領内で取れないか調査したい様子だ。
「もちろんデメリットも有ります。人工的に作った溜め池はどうしても泥やヘドロが入りやすいものです。定期的に除去しなくてはなりません。また留まる水なので藻が発生しやすいです。灌漑や農業には使えますが飲料水にはなりません」
今度は悪さをしないダンジョンカタログから出してきた『盗賊』の方に歩み寄り、土壌改良について説明する。
「こちらは土壌改良工程の始まりです。生ゴミやボロ布、挙げ句トイレの物を集めて地面に巻きます。それに森で捕まえたミミズやダンゴムシ等を放ち食べさせます。それにより地面に養分の高い土が出来上がるそうですよ」
お嬢さん達は鼻をおさえながら聞いているが領主さんは鼻をおさえていない。むしろ『盗賊』達にお疲れ様と声をかけながらこちらに話を振ってきた。
「似たような事を東の森の賢者君もやっているが、あいつは森の落ち葉だけを入れているな。ボロ布に糞尿は聞いた事は無いのだが」
「そこが重要なんだそうです。都市部に送られ消費された一次産業製品のゴミを生産地に返し、循環させることによって農村を豊かにするのだそうです。ボロ布は少し分解が遅いですが雨水を溜め込むのに使えるそうです」
ここで領主さんが私の言い様に気付いたようだ。
「なるほど。ダンジョンさんの発案では無い訳か。どんな賢人なのか聞いてみても?」
「はい。私と同じく図書館魔族の女性です。この地では『森の学士先生』で通っています。今日も面会を誘ったのですが恥ずかしがりなのか人見知りなのやら。いそいそと出掛けてしまいました」
「それは残念だな。是非お会いしたいと伝えてくれないか?」
「ええ。成果は上がっています。一部は農地に、一部は放牧地、更には植林スペースにするのだと張り切っていますよ」
これにお嬢さん方も加わる。
「どんな人かな?会ってみたい」
「きっとダンジョンお姉さまみたいに素敵な方に違いありませんわ」
図書館は私にとって、自慢の友人にして協力者だ。
「ええ。齢500年以上でありながら可愛いお姉さんな顔立ちです。ご期待ください」
「まあ素敵ですわ!」
「お兄ちゃん、鼻の下が1マークも伸びてるよ」
「フフ、ご期待ください。さて孤児院と家々の工法も紹介しますね」
今度は建設中の家々を紹介する。ここには何人かのダンジョンポイントで出した『職人』と、私が雇い入れた街の大工さんが作業をしている。
「この開拓地では柱を釘ではなく臍により組み合わせます」
これに意外な方が反応した。
「まあ!遥か東方の木組みの事ですわね!」
「おや婚約者さん、よくご存知で」
領主さんの婚約者ママーナ・モンダナエ子爵令嬢はかなりの東方被れだ。
東方愛溢れるあまりに東方遊牧民がやっている胡服騎射まで上手いのだからなかなかな被れ具合だ。
ママーナお嬢さんは喜び勇んで作業現場内に入り込み、作業を羨望の眼差しで眺め、職人に色々質問してははしゃいでいた。
このはしゃぎ様にはさしものイーナお嬢さんも領主さんも着いていけない様子だ。
「見事な開拓地だな。ダンジョンさんプロデュースの53開拓地を手本にしよう。森の学士先生にもよろしく伝えてくれよ」
領主さんからこれだけのお言葉をいただけたのだ。プレゼンは大成功だと言えるだろう。
「だが良いのか?孤児達を自分のダンジョンに住まわせればダンジョンポイントになるのだろう?」
領主さんからの下問には答えなくてはならないだろう。
「それは出来ません。民とは領主さんの労働力です。生産力です。私がそれを奪い取る訳にはいきませんよ」
領主さんは「そうか」とだけ言って微笑んで見せた。まだお見せしたいものは有る。鹿取りの罠、熊や亥対策の数々。領主さんとお付きの皆さんを私はもう少し振り回す事になる。
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