第2話 魔王とか言う小物
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私は人間を楽しませるのになにが必要なのかを聞きに、数有る魔族の一つ、図書館族という魔族に話を聞きに行った。
図書館族という魔族は図書館にまつわる感情や関心が溜まって産まれる魔族であり、何処の魔族よりも研究熱心な奴らだ。一人位私の欲しい『人間を楽しませるダンジョン』を提供してくれるかもしれない。
図書館族は私が居る世界とは別の次元の間で、とてつもない大きさの図書館を用意して暮らしている。というかそこの資料を元手に調べ物をしている。
私がその図書館の門を開けると、そこには受付カウンターがあり、カウンターには蜘蛛人間の見た目の女性が居てこちらに声をかけた。
「やあお客さんが来るとは珍しい。何か用でもあるのかい?」
柔らかい口調なのは有難い。
「ええ。調べたり教えを乞いたりしたいのですよ」
「それはここはうってつけだね。まあまあ。固くならずにお入りよ」
招き入れてくれたアラクネは右の人差し指をピョイと振って人間の姿に形を変えた。蟲っぽい顔をしていたそのアラクネは人間の姿になるとロングヘアーに柔らかな顔立ち。そして肉付きの良い、可愛らしい見た目の女性になった。
その可愛らしい見た目に合わせたのは黒いローブと魔女の帽子。何となくやぼったい。
「人間姿のそちらさんと行くならあの姿だと邪魔になるからね。じゃあ案内しようか。えーと名前が……」
「15872番目のダンジョンマスターです。よろしく」
「37番目の図書館魔族にして図書館魔族魔王だ。よろしく」
「魔王!?」
「いや。あまり驚かないでくれよ。私が一番若い図書館魔族で、私を含めてたった36人しか居ない魔族の長ってだけなんだ」
私は目を見開いた。
「一番若くして魔王就任だなんて。余程の実力者なのでしょうね」
「アハハ。違うよ」
37番目の図書館魔族こと魔王は苦笑いを浮かべて答えた。
「みんな自分の調べ物に夢中になりたいから、魔王の役職を丸投げしてしまうんだ」
なるほどと私は思った。端では図書館魔族とおぼしき者が資料に向かいメモをとっている。夢中そのものだ。魔王なんて肩書で外交だの受付だのをするなんて、図書館魔族にとっては邪魔なのだろう。
言うなれば魔王という名の若輩者。完全な小者だ。
「で?ダンジョンマスターくんは何が知りたくてここに来たんだい?」
「ああ。ダンジョンに来た人間に楽しんで欲しくてね。楽しく過ごせる色んな物を教えて欲しいのさ」
「なら図書館に来るまでもない」
図書館魔族は足を止めて答えた。
「酒と女と賭博と麻薬。人間なんかこれでいちころさ」
「ちょっと待てや!麻薬はダメでしょ。法令の遵守とか頭の中に無いのか?それにそのような歓楽街を用意しても楽しいのは大人の男だけじゃないか。女性や子供にも安心して楽しんで貰いたいんだ!」
しばらく図書館は私の顔をマジマジと見つめ、そして答えた。
「法令?」
きょとんとした顔をしながら続けた。
「ダンジョンマスターくん、何を目指してるんだい?」
私は多くの農民、職人が遊びに来れるようにしたいのだと滔々と説明した。何となく理解出来たようで、顔つきがはっきりしてきた。
「なるほど理解したよ。でもそれはそれで茨の道だと思うよ」
とは言いながらも再び図書館内を歩きだし、片隅で立ち止まった。
「この辺なら君に必要な知識が揃ってると思うよ」
そこにはテーマパークの施設や運営手段等の事が書かれた書籍が閲覧出来るようになっている。
私もあちこちの本を開いては人間が楽しめそうな物を知識として取り込んだが、少し中座していた図書館が帰って来た。
「とっさに作れる施設にこんなのはどうかな?私の蔵書なんだが良かったら差し上げるよ」
そう言ってアスレチック施設を紹介した本を提供してくれた。
「それからもう一冊これもあげるよ」
それはとある量販店で本当に有った話だった。
冒頭にとある老夫妻がそこを訪ね、自分たちのお墓をお店の片隅に用意して欲しいと懇願したのだそうだ。
量販店の対応係は首を傾げて何故そう思うのか聞いたところ、墓には曾孫の世代には誰も来ないかも知れないが、この御客様第一を貫くこの店ならば、何百年先でも子孫が客として来るだろうからと答えたというシーンから始まる書籍だった。
「何となくダンジョンマスターくんはお金ではなくダンジョンポイントが欲しいだろう?ならその本はうってつけだよ」
「おお?ありがとう」
「御客様第一は本当は良くないんだ。お客様は同じ物を金50ではなく金1で買いたがるからね。でもきみにお金は関係無い。活用してよ」
「本当に助かるよ。楽しいダンジョンを作るよ」
フフと図書館が笑って答えた。
「その内私も遊びに行くよ。行く先を見てみたいからね」
「ああ、歓迎するよ」
私は指を鳴らしてその2冊の書籍を異空間収納にしまい込んだ。
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