第19話 領主さんの印象
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応接室の扉はメイド長さんが開けてくれた。
応接ソファーに上座下座が別れないように右側のシートに立っている領主さんに対し、私は左側のシートを案内された。
まずは立ったまま深々とお辞儀をしてからご挨拶の口上を。
「領主さん、お初にお目にかかります。私近頃この地に生を受けた魔族、ダンジョンマスターです。どうぞよろしくお願いいたします」
本来ならカッテージを切る所だろうが、今日の服装は華美にならないよう襞の少ない紺のリクルートスーツだ。右足を引き右手は胸元。そして左手は緩く遊ばせながらの礼になる。
「丁寧な挨拶痛み入る。領主オットー・リブラだ。えーとダンジョンマスターさん、お名前は」
「魔族に名など有りません。15872番目のダンジョンマスターにてございます」
お互いにお互いを観察するのに目線が動く。
私は領主さんの顔を失礼にならない程度に観察していた。思いの外野暮ったい服装に野暮ったい顔立ちだ。まあ若い分それも可愛らしいの内かもしれない。
一方領主さんは私の顔に引き込まれ、その後角をしげしげ眺め、それから胸元に視線を向けた。胸は大して自慢になる程ではないが、なるほど領主さんの歓心位は買えたようだ。
「まあ座ろうさ」
促されてお互い着座する。
「ダンジョンマスターか。ではあなたの事はダンジョンさんとでもお呼びすれば宜しいか?」
「はい。歓迎致します」
嘘は言っていない。今名前が付いた事で存在進化が始まったのだ。ダンジョンマスター族テーマパーク種だそうだ。魔力、体力共に急激にアップしている。
「さてダンジョンかぁ。生憎うちの領内にはまともな冒険者なんか居なくてな。ショボい街ですまないな」
領主さんは苦笑いを浮かべながら謝ってきた。
「いえ。全人口の1%にも満たない冒険者だの軍隊だのに興味は有りません」
「ほう?」
「むしろ私はダンジョンを市民の皆さんと楽しく過ごせるようにしたいと思っておりまして」
「ん?」
「市民の皆さんが何度も来たくなる。そんな楽しいダンジョンを目指しています」
「ほう」
「具体的には最高のアトラクションと素敵なお食事を提供してリピーターを増やし、顧客満足とお客様第一を追及します。それがダンジョンポイントの為には必要なのです。更に集めたダンジョンポイントを多くの人の更なる楽しいに還元するのです」
「なるほどなるほど。あれかな?経営コンサルタントの方かな?」
「え?あら。大変な失礼を!」
私は持論を訴える為に思わず立ち上がり、しかも声のトーンも大きくなっていた。
「いや構わんよ。なかなか面白いなダンジョンさん。さてダンジョンさん。それで私に如何なるメリットを提供してくれるのかな?」
ここで私は凝結した。しまった。領主さんに提示出来るメリットなんか考えてもいなかった。しかし私が固まってしまったのを見て領主さんは気さくに笑いながら続けた。
「ハハハ、まだ僕へのメリットなど早いよ。むしろしっかり領民を楽しませてやってくれ。そう言えばどの辺りに有るのだ?」
聞かれて隠す事など何もない。52開拓地の近所だと答えたら領主さんはにこやかに答えた。
「ああ。もしかしたらダンジョンさんが学者先生かな?お風呂沸かしてきれいな服をくれた」
「あは。これが学者の時の姿です。私は学者の助手兼パトロンらしいですが」
指を鳴らして角を消して学者の姿に服装も変えた。
「なるほど。そのお姿で学者と言い張る道も有っただろうに」
「そこは考えました。しかし後々魔族と知れて軍を差し向けられたら私は敵いません。それに、必死に領民に手を差し伸べる領主さんのお姿に。私は嘘をつきたくないと思ったのです」
領主さんは暫く言葉を選んだ後私に告げた。
「森の学者先生が何者だろうとも歓迎するともさ。領民に色々と。本当にありがとう」
ただ深々とお辞儀をする領主さんに私は恐縮した。
「いえ。むしろこちらこそ。魔族など会った事も有りませんでしょうに。この角は恐ろしくは有りませんか?」
「角よりも貴女の知識の方が余程。経営コンサルタントが来たのかと面食らったよ」
快活に笑う領主さんに私は大いに安心した。
「よろしければ領主さんもお越しになりませんか?楽しい一時をお約束します」
領主さんは暫く考えてから答えた。
「俺は良いや。それより色んな人を楽しませてやってくれ。それから、皆に風呂の提供、本当に感謝しているんだ」
「まあ、ご丁寧な挨拶を。ありがとうございます。正直もっと恐ろしい方かと思っておりました」
「へー?何故そう思ったの?」
私から外交の使者を斬り捨てたという話をしたところ、領主さんが逆に驚いていた。
「随分語弊が有るね。あいつらアポイント無しにほぼ30分のずれで両国から使者が来たんだ。同じ控えの間に放置しておいたら勝手に斬り合いを始めただけだよ?」
思いの外談笑は進んだ。私のダンジョンに人を呼び込む許可も軽やかにくれた。同時に私からは労働力を削がないよう、定住者等は募集しないことを確約した。
帰宅した頃、そこには図書館が居て領主さんを呼び込む事は出来なかった事を話した。
「もっと安全に、もっと楽しくしなくては」
「いいや、違うよ」
図書館の奴は余裕の笑みで答えた。
「ダンジョン君が為すべき事はここからいかに税を排出出来るかだと思うよ」
なるほど。領主さんが求めたい事はそれか。うん。一つ勉強になった。まだ多数のゲストを呼び込むにほ至らない。
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