第18話 領主さんにご挨拶
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糞が!ダンジョンバトルのせいで危うく忘れる所だったけど、私は領主さんにご挨拶したいのだ。出来ればダンジョンに遊びに来て貰い、当ダンジョンの楽しいアトラクションで優雅な一時を過ごして欲しいのだ。普段からお疲れな様子だし、それで私の存在を認めて欲しい!貴族のお友達をバンバン呼んで更にその貴族の領地住民も来たら良い。シャトル馬車ならいくらでも出してやる。
この考えはとんだ『取らぬ狸の皮算用』になるのだが、今の私には全く分からなかった。
ダンジョンバトルが終わり、早速集めた4万ダンジョンポイントをふんだんに使い、ジェットコースターだのウォータースライダーだのを用意し、更にアスレチックを第2階層として移動し、保育所、公民館の他に自力で作り上げた『四季の庭園』も用意した。この庭園では春のエリアが最高の見所だろう。何処かの世界で一年を通してただ一週間だけ咲き狂う『サクラ』という木を植えて広場にしてみたのだ。
満開も散り行く姿も美しいので、年間通して53のサクラ広場を用意し、毎週入れ換えるつもりだ。
その他多数のアトラクションを用意し、遊びに来たらおもてなしする体制は万全だ。
私の中でいつまでも困っているのは、自分が魔族である事を明かすべきかどうかだ。学者の助手兼パトロンというポジション、いつまで維持出来るだろうか。
子供達を満載した馬車が到着し、皆に挨拶をする。個人的にこの時間を大切にしている。
その日の様子と調子が見れるからだ。
そんな朝のお出迎え挨拶を終えた私は開いた馬車に乗り込んだ。行く先は領主さんが住んでいる領都『スケール』だ。まだ行った事が無い街なだけに瞬間移動の魔法が使えない。だから舗装も均しもされていない泥の道を、でこぼこ揺れながら行く。途中で何人か難民のような人が居たから乗せてやった。領主さんの館前で降ろす時には行商人と取り替えた大銀貨を一枚渡してあげた。難民はこれだけ有れば今日位はお腹いっぱいになってくれるだろう。出し過ぎに気付いたのは随分後になってからだが。
と、ここまでは学者の助手兼パトロンとして私はやって来た。魔族特有の角は魔法で隠してある訳だ。凄く悩んでいる。学者として出向いてやがて魔族と知れたらどうなるだろう?
かといって今魔族と明かして後顧の患いを絶てば今、どうなるだろう?
私は領主さんの貴族にしては珍しい性格に期待して、意を決して魔法を解いた。2本の角が露になり、魔族として呼び鈴を鳴らした。
領主さんは城塞のような館をいざというときのスペースとしていて、普段は小さな洋館で執務をしている。私が訪問したなら呼び鈴をならすべき所も通される控えの間も応接室もこの小さな洋館な筈だ。
呼び鈴を鳴らすとのほほんとした顔立ちの手慣れた感じのメイドさんが出てきた。メイド長さんだ。
メイド長さんの誰何には堂々と答えた。
「突然のご訪問誠に申し訳ありません。私はこの地の森でダンジョンマスターを始めた者です。是非一度領主さんにご挨拶をと思いましてやって参りました」
「それはそれは~。お客様をむげに扱うつもりはありません~。どうぞ中へ~」
ここのメイド長(名前は知らない)さんは発言が間延びしやすい。どうしてメイド長など出来たのだろう。実際顔は年齢以上に可愛らしいがバカっぽい。
控えの間で少々。お茶などいただく時、そのメイド長さんではなく別の方が私の元についた。メイド長さんは領主さんに話に行っているのだろう。
「手土産はどうしたら良いかな?」
「オットー様は直接貰うと大層お喜びになりますので」
と、言うからアイテムボックスの中に入れておいた。手土産には自信が有る。
「そうか。領主さんは本日忙しかっただろうか?」
「いえ。本日は手空きとの事でした。今頃ほら話のネタでも探しておりましょう」
「ほら?」
私は領主さんが手開きなのは知っていた。だから今日にしたのだ。しかし手開きの日にほら話を作っているとは一つも知らなかったのだ。
「あら。領内では有名ですよ。図書館にほら話の全集がありますよ。」
「それは意味が有るのです?」
思わず私が聞いてみたらなるほどな答えが返ってきた。
「文字を読める人が居ないから無いですね」
「あーあ」
納得したし、残念にも思った。文字が読めない人々に図書館かぁ。しかし必要なのかもしれないよな。いつか読める日との為に。そして今ある書籍の保存の為にもだ。
「今は亡き祖父様の道楽図書館と聞いております」
「ほお」
道楽で図書館とは思いきった事をしたものだ。ただその維持費は現在の領主さんに負担としてのし掛かるだろうな。
そんな事をぼそぼそ考えてると控えの間の外が慌ただしくなってきた。領主さんが応接室に飛び込んだのだろう。魔族の身体能力は高い。本人達は静かに移動しているのだろうが、耳も強化された魔族にはよく聞こえてくる。
それが証拠にさっき報告に走ったメイド長(名前は知らない)が控えの間に再びやって来て私に告げた。
「若旦那様は~、お会いになるそうですぅ~」
ほう、あの領主さんは『若旦那』と呼ばれているのか。確かに若い人ではあるが、前領主は何処にも居ないのにその言われようはどうなのだろう。
「さぁ、若旦那様がお待ちですので~」
私は促されて立ち上がり、領主さんが待つ応接室に向かう。
ご挨拶は始まったばかりだ。
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