第122話 この作戦会議は何か間違ってる
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作戦会議が始まった。メイド達が会議に使っていたテーブルを片付け、そこに薄い板に書きつけた領地全図が用意された。軍務、財務担当の私は参謀モールを5本、将軍杖を7本用意するようにしていた。
領主さんにそれを渡して、それらを軍幹部に渡して貰う。領主さんからの下賜ともあれば、必ず領民なら発奮する筈だ。
まず会議室改め指令本部に入って来たのは幼女メイド戦隊の少女達だ。それがそれぞれのカラーに合わせた参謀モールをおもむろに取り付けた。最年少の可愛いミレーヌピンクちゃんは自分で付けることが出来なくて太陽のエチエンヌさんと蒼天のエスメラルダさんに手伝って貰っていた。うん。可愛い。
いやそうじゃないだろ?軍幹部の参謀陣が上が12歳下が6歳ってどういうことだよ?
「ダンジョンさん?こども店長じゃなくてこども参謀ですか?」
「ええ。領内で参謀に任命できる人材のトップエリートですよ」
「いやこどもだよ?」
「ええ。トップエリートですよ」
いつも理知的に話を進める私だが、ここばかりは平行線な話しかしない。
更に領主さんを仰天させたのは将軍杖を取りに来た幹部だった。エルフのエセンカマンダルさん、衛兵隊長。名前はまだ無い。救民騎士団のカネガまでは良い。その後なんで許嫁のママーナさん12歳に領主さんの妹のイーナさん、そして顔が真っ黒でお尻が大きな女の子エルカザンタさんと隻腕の女の子イリーナ・レンヌさんが将軍杖を握った?
「なんでお前たちが杖を持っていく?」
さすがの領主さんも声をかけずににいられないだろうな。
「私が弓騎兵団の師団長ですわオットー様」
素晴らしい程の笑みと挨拶をした許嫁のママーナさん。
「お兄ちゃん。わたし重騎兵隊の師団長だよ。忘れてた?」
ちっとも貴族っぽくないイタズラ小僧みたいな笑顔で妹のイーナさん。
「私、このほど魔道兵師団の運営を任されたエルカザンタと申します。さる家の奴隷頭をしております」
「ああ知っているとも。珍しく成人年齢だものな。期待しようで?君はマリアと仲が良いイリーナさんだったね?」
「そー」
イリーナさんは間の抜けた返事を返してきた。マリアさん曰く、このお嬢さんは見た目は成人しているが、普通の成人が当たり前に知っている事を知らずに居た人物だそうだ。
将軍に任命するのに不安を覚える領主さんのお心は当たり前だろう。
「何故将軍杖を取りに来たのだ?」
「は。マリア隊長に相変わりまして、孤児部隊186名の指揮を執るよう下知を受けました」
「ああ。そうなのかよろしく頼む」
「はーい」
間延びした返事が返ってきた。どうも軍隊の言葉にしかきびきびした返事をしないようだ。
各将軍のそばに居る副官も多くはこどもか女性かのどちらかだ。確かに青年壮年は貴重な働き手なので余ってはいないが、それにしたって異常だろう。
「概略を説明します。国境よりすぐにあるのは街道と野良サソリ平原のみ。先ほどセレクトさんの遠見の魔法でゴブリンを更に6000発見しているそうです。今回の戦いは相手が3割減って撤退するとかそんな話は無いでしょう。従ってただ敵を討ち果たすのみです。こんな戦いに作戦も参謀も何も有ったりはしませんが、あえて言うなら配置はこうです」地図の上に歩兵、魔道兵、槍騎兵、弓騎兵をモチーフにした置物を置いていく。関所に縦深陣を蒼天のエスメラルダさんが並べていく。
「幸い野良サソリ平原に一番近くの第8開拓村までは約半舎。まさに今日この日の為のような平原です。ご領主様のご慧眼に感服です。ここを3回から6回、徐々に後退しながら討伐していきます」
そこから各自が好き勝手ワイワイ言い出した。
「これです領主さん!ホチキスMle1914重機関銃です。これさえあればゴブリンどもがバタバタと倒れていきますよ」
「はははダンジョン、君は一度宇宙パトロールに処刑された方が良いかもな」
「魔道兵は後方なのか?俺の活躍の場が無いな。マヌア、将軍杖は任せた」
「もう。すぐにそんなこと言いだすんだから」
「えー?じゃあB-39ピースメイカーで空爆空爆!」
「ははは。捕まってしまえダンジョンくん」
「冒険者は各地遊撃で良いのか?」
「矢の補充は充分に頼めますかしら?ダンジョンさん」
「オットー君が10万本の矢を用意してくれるさ。諸葛亮も真っ青だよね」
「この慈悲と哲理のお兄ちゃんの敵を私が排除してやるんだぁ」
「あにうえの ごえいは おまかせください」
誰が呼んだんだよ領主さんの弟のスーゲさん?
「ふん。実際マヌアの方が魔法は上手いだろう」
「将軍の証はそんなに軽くはないのですよ。エルフには分からないかも知れないけど。ああ。私もエルフでしたね」
「見つけてきたぞ!毒ガス兵器イペリットだ!」
「君はダンジョンカタログチェック禁止な」
「でもでも。毒ガスならペロポネソス戦争でも使ってたじゃないか」
「無粋すぎだよダンジョン」
「槍が折れた後の補充体制と替え馬って絶対必要だよねママーナお姉さま」
「もちろん必要ですわイーナちゃん」
「落とし穴とかの陥穽はもう間に合わないかな?」
「これならどうだ?パリ列車砲!世界中のゴブリンを狩る列車旅行を」
「ははは落ち着け。どこにレールだのターンテーブルだのが有るんだい?」
「そうでした。私の父上が領兵120を連れて援軍に来ますわ」
「それは凄いねママーナお姉さま。張り切ってゴブリンどもを!クッ、殺さなきゃ」
「イーナちゃんが嫌なくっころ言い出した」
「衛兵はちょっと高齢者が多いです。一番奥が一番破られそうだ」
衛兵隊長から現実的な発言が有った瞬間皆が静まり返った。
「その為に魔道士を配してはいますが、私もそれが一番心配で、そして」
今度は参謀の太陽のエチエンヌちゃんが領主さんの顔をちらりと伺った。領都には未だ3個の歩兵と、王冠を被った駒が残っていた。多分これが領主さんの駒なのだろう。
「おい。俺をのけ者とは酷い話じゃないか」
領主さんはタイミングをどんぴしゃで測って、王冠の付いた置物を縦深陣の真ん中に移した。
参謀陣も軍幹部も目を丸くしていたが誰かが絶叫した。
「領主様ご親征!!」
「戦えー‼‼」
全員の士気が爆上がりし、歓声だけが響く中
『領主君、最高のタイミングじゃないか。よく頑張ったよ。な?上手く行っただろ』
俺の脳内にセレクトさんの声が届いた。
『いえ。ありがたいお知恵を頂き、感謝しています。でもこれで俺も最前線行きか』
『やあ、助けるつもりが追い込んでしまったかもしれないね』
図書館の奴はそっと魔女の帽子を外し、頭を掻きながらニッコリしただけだった。
後ついでに……なんで軍幹部が子供ばっかりなんだ?いい話にした感じではあるが、何か間違ってるよね?この作戦会議。
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