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第121話 リブラ伯爵領は全般的に荒事が苦手な件について

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 朝の長閑な時間は大好きだ。

 何気に一番爽快な朝の過ごし方は領内を見回るイービルアイが映す水晶を持ち込みながら朝風呂を浴びながらどっぷりすることだ。

 この時はまだ誰も居ない。私は浴槽に顎まで浸かりながら「お気楽極楽~」とか呟きながら、手も足も投げ出したまま尻尾一つで身体を支えながら国境橋付近を眺めているのがたまらないのだ。


 しかし、その日は著しく様子がおかしかった。難民入国者数が総数372人。それは今までにない流入だ。

 普通の領主なら領内の治安悪化と防疫、そして急激な人口増加を食い止めるために領境を閉鎖するところなのだろうが、この領地は色んな意味で普通ではなくなっている。

 私からの提案を容れた開拓地にはどんどん溜池が作られ、子供たちが飲み水になる井戸を掘削(ディグ)の魔法で次々作る。

 救民騎士団が難民をどんどん救助し、次々に集まる観光客に宿泊施設が立ち並ぶため、今や人手が足らない状況なのだ。

 歓迎するのは個人的には良いのだが、今までとあまりに人数が違う。今までその日の難民数が20を超えた事なんか無かったはずだ。何かあるのではないかと思い難民の群れに瞬間移動(テレポート)した。


 そこにはおびただしい数の難民がそれこそ着の身着のままな状態で集まっている。どうも更に増えているようで、何故か来ていた炊き出しに来ている幼女メイドちゃん達も大忙しな様子だし、どこかで子供が泣きだしては連鎖して大泣きが始まり、周囲はパニック状態になっている。


「おはよう。どうしてこんなに集団で逃亡してきたのです?」

珍しく鎧を着込んだ兵士風の難民に話を聞いてみた所、驚愕の事実が判明した。


 国境の向こうからこの土地目指してゴブリンという魔物の群れが押し寄せてくるらしい。コイツもどうやらそのどさくさに紛れて併せて逃げてきたらしい。


 その日マリアさんは早朝に訪問された隻腕の少女イリーナさん。

 かつて脱いだ皮鎧(レザーアーマー)のサイズが合わなくてしまった事に困ってやって来たのらしい。

「マリアー、あたしデブったアー」

「太ってなんかいないわ。今が普通の女の子の普通の体型よ。今までが瘦せ過ぎていたのよ」

「鎧着れない」

 そんな事を言い出すイリーナさんはは左手一つで扱えそうなショートソードを腰に携えている。

「どうして武器を携えているの?」

「敵来る」

 最近は結構笑顔も多くなったイリーナさんが真顔でマリアさんに答えた。


「敵?」

「うん。きっと強敵」

 戦場に長くいた勘がそう思わせるのだろう。マリアさんは冒険者ギルドで皮鎧をレンタル出来るよと教えたら、イリーナさんは何も言わずに駆け出して行った。その日図書館にはそのように鎧を着込んだ旧軍人の孤児部隊がウロウロしだしていた。

 こんなにも皆が同じ反応をするなんて何かがおかしいと感じたマリアさんは反応せざるを得ないだろう。

 とりあえず孤児の皆が集まるワークショップの傍らに『強敵対策本部』と大書きし、そこを対策本部と定めた。


 このゴブリンの襲来はむしろ冒険者ギルドの方が正確に掴んでいた。難民の何人かが冒険者ギルドに駆け込み事情を説明したのだ。

「なんだって?そりゃゴブリンスタンピードって奴じゃないか!各冒険者とパーティーに緊急クエストの鐘を鳴らせ!」

ギルド長のタイラーの号令にたった一人しかいない受付のお姉さんが「はい」と答えて緊急クエストの合図をした。


 偶然居合わせた冒険者のお調子者の何人かがギルドの表に『ゴブリンスタンピード対策本部』と書いて貼り出し、緊急クエストの盛り上げに一役買った。


 衛兵隊国境詰所もその情報は掴んでいた。前日に各王国の国境警備隊がまずは一斉に亡命し、その後どっと押し寄せる難民の群れから事情を聞いていたのである。

「ほほう、腕が鳴るのうじーさんや」

「ワシの槍裁きを見せてやるぞい。ってかお前さんも立派なじーさんじゃい」

「ここには~ じいさんしかおらんよ」


 そんな数を合わせる為だけに雇われた衛兵の爺さんたちがまず国境詰所に『逃亡支援対策本部』を。そして衛兵隊本拠地である領都衛兵本部に『ゴブリン対策本部』が設置された。


 ダンジョン内に用意されている病棟にも傷病者から話を聞いたドクター達が顔を顰めて病人を手当てしながら話している。


「ゴブリンという有害鳥獣が何なのかは知らないが、そいつが何らかの疫病のキャリアーになっている可能性は否定できない。いち早くデータを収集したいものだ」

「僕はそのゴブリンという生命体にまつわる全てが気になりますかね。同じことが起こる前に上手に間引く手段とか、増やさない方法とか」

「抗体反応、薬物反応の他、遺伝病や放射線反応や病理、寄生虫なんか面白そうじゃないか」

「うむ。何匹か捕獲してみよう」


 かくして病棟に『有害鳥獣対策本部』が。更に救民騎士団も『対ゴブリン対策本部』が設置された。


 極めつけだ。領主さんは大急ぎで屋敷に戻り、緊急で主だった人物を招集した。家族と執事のセバスチャンにメイド長、私、図書館の奴、冒険者ギルド長、衛兵隊長、救民騎士団のカネガ・ホッシイ、東の森の賢者君とエルフ族の族長。そして何人かの村長ないしギルド長だ。


 ゴブリンが国境を侵犯した場合の対策を検討しなければならないからだ。その面子に領主さんが宣言した。


 「取り敢えず『ゴブリンによる領内治安維持対策本部』をここに設置しようと思う。皆の協力を頼む」


 かくしてゴブリンがやって来ても居ない内からその対策本部だけが領内に沢山出来上がったのだった。対策本部ってこんなにたてなければならないものなのだろうか。

 読んでくれてありがとうございます

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 なども書いております。宜しかったら見て行ってください


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