第117話 勇者見参!
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国外からは難民が絶えないリブラ伯爵領なのだが、近頃は国内からも私が苦手とする者達がやって来るようになっている。
まあ、俗に言う冒険者の類いだ。
その冒険者が目指す所は何処かと言われたら、それはここだ。ダンジョンそのものだ。
リブラ伯爵領冒険者ギルドマスター、タイラー氏監修冒険者専用ダンジョン。これは凄い効果になったのだ。ギルド間を通して噂が噂を呼び、ダンジョンはどんどん活性化している。
タイラーもちょくちょくやって来て、同じ初心者向けダンジョンの新設、最初のダンジョンの増設。更に中級者や上級者向けのダンジョンも作り、監修させている。
その冒険者の中に見つけた集団が居る。勇者レーロンに二枚前衛のモンス。聖女ララティナと攻撃魔法のミリアーナ。そして神官ラオルというパーティーだ。
聖女に神官?へんてこなパーティーだなと思わされたが、多分相当強いパーティーなのだろう。
そのパーティーがダンジョン前に降り立った。
「必ず討ち取るぞダンジョンの魔王」
勇者レーロンが呟く。
「やめておきなさいよレーロン。この街はダンジョンと共に有る気がするもの」
聖女ララティナが宥める。
その様子から何から何までイービルアイ越しに見ていた私は当惑すらした。
「あーあ。そのダンジョンの魔王とやらが用意した馬車に乗って君たちはやって来たんだぞ」
コイツらその『ダンジョンの魔王』におんぶに抱っこじゃないかと。
で、ソイツらは何故か冒険者向けダンジョンではなく、ダンジョンランドの入口なんかに来ている。
係員として配備した『添乗員』というダンジョンの人型魔物にここではないと言いに行かせた。
「ここにダンジョンの魔王がいる筈だ!」
勇者レーロンさんが叫びながら侵入する。
ところが中はダンジョン臭くなく、挙げ句子供がワラワラ居る。
「あの。子供たちに物騒な物を見せたくないものでして」
そりゃランドに剣だの盾だのぶら下げた人が入ってくるのだ。よく目立つ。
教員に配備されてる剣士や魔法使いの女の子。老賢者やら保育士等も集まってきた。
そしてそれを遠巻きに眺める子供たち。
残念ながら怯えている訳ではない。
「剣士先生、You、やっちやいなYO!」
「お手合わせなんてどうですか」
「冒険者のお兄さんお姉さんもお風呂入りに来たの?」
「とりあえずお風呂よりアスレチック行こう」
子供たちは思い思いだ。聖女ララティナさんは子供たちのワイワイに丁寧に聞き返しながら笑顔を忘れない。あ。なんかこの子良い子だなぁ
他のパーティーメンバーもただの子供たちやお風呂上がりのお年寄りを見せられて武器をしまってくれた。子供を嫌う冒険者って居ないものなんだなぁ。
だが勇者レーロンだけは違った。
「ダンジョンの魔王はここに居るのだろう?討伐に来たのだ!」
どうにもこうにもコイツだけは私と対峙しなくては気が済まないようだ。そんな時の為に私はいたずらを用意してある。
瞬間移動の魔法を使い図書館に用意してある私の部屋に移動してやった。もちろんイービルアイが見たものを覗ける水晶を持ってな。
「ぼうけんしゃさん かっこいいね」
「おえねえさん このほんよんでー」
冒険者パーティーはなかなかランドでは見ないだけに大人気だ。
しかもここで勘が鋭いらしい勇者さん。私の存在が消えた事に反応したようだ。
「ん?ダンジョンの魔王の気配が消えた!」
それを聞いた子供たちも何故か冒険者パーティーにぐいぐい行く。
「冒険者のお兄さん、遊ぼうよ」
「ダンジョン楽しいよ」
「あら。ダンジョン楽しいの?どんな風に?」
割と善良なお人柄の聖女ララティナさん。子供たちにインタビューなどを始める。
「こっちが最高だよ!」
子供たちが案内してくれたのはアトラクション広場だ。なるほどここなら冒険者パーティーでも楽しんでくれそうだ。子供たち、ナイスだぞ!
「しかし俺たちはダンジョンの魔王を滅ぼさなくては!」
「もう居ないんでしょ?それより私はこのダンジョンに集まる子供たちから話を聞きたいわ。ねえ、ここのダンジョンは楽しいの?」
「スゴく楽しいよ」
コーヒーカップをクルクル回しながら聖女ララティナさんに答える子供たち。聖女さん目を回し始めている。
「ダンジョンマスターさんには会った事ある?」
「有るよ。毎日色んな事を教えてくれるよ」
「毎日?ふーん」
こんな事をジェットコースターに乗りながら話す聖女さん。まあ安全性は高いけど口の中切らないでくださいな。
勇者パーティーはその日の夕方まで散々遊び倒し、そしてミーティングを始めた。
「住民を取り込むとは姑息な」
「レーロン、それ串焼肉持って言うことじゃ無いわよ」
「しかしながらお人柄が伝わるダンジョン造りしていますな」
そこに添乗員の魔物が声をかけてくれる。
「あの。そろそろ閉館の時間です」
添乗員の魔物とは人間の姿をした自律胴人形なのだが、何故これを攻撃しないのだろう。
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