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第11話 領主さん素行調査

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 ひとしきり子供達と老人を励ました領主さんは荷車に乗せた(すき)を、馬車を引いていた馬に取り付け、開拓作業を始めたのだ。


「あ。もう畑がダメだって知ってたんだね」

 保育所に集まっている子供達はお昼の感想に『ハツカダイコンより美味しい!』というのが基準になっている。

 要するにそれしか食べてないし、それしか作ってない。だからそれが食卓のメインになるのだ。ハツカダイコンは収穫が早く、栄養価も悪くはない。しかし連続して作付すると土を痛めてしまうのだ。


「さて、新しい作付地ができたからにはここからが私の役目かな」

 図書館は自分からは何かをしてあげようとは言わない。

 それは薄情とかそういう訳ではなく、観察したいという気持ちが先であり、いざどうにもならない時には私に泣きつき、そして自腹を切ってでも救済しにかかるだろう。

 

 馬車を引いていた馬は、寧ろその為に連れてきたのだろう。脚が太く、俗に言うばん馬と勘違いしそうだ。馬車を引くより犁を引く姿の方が絵になっている。

 その馬を制御するのが領主さん自らというのが面白い。

 確かに一番の適任者だとは思うが、領主自らとは。寧ろ誰かを雇ってやらせる方が良かっただろうに。

「ところで、皆やけにきれいにしているね。皆で小川にでも行ったのかい?」

「あのね りょうしゅたま、まいにち おふろに いれてくれるの」

「え?本当かいリリアン?誰が用意してくれるんだい?」

「せんせー」

「ほう。来てくれたら感謝の言葉でもかけるのだがな」

「せんせーは美人さんだよ」

 10歳の女の子がおしゃまな感じにそう言った。

「へー、美人さんか。でもエリザベスちゃんほどでは無いだろうさ」

 領主さんはそう言って10歳の女の子の頭を撫でる。女の子も撫でられて嬉しい様子だ。

 そんな戯れ言を言いながらも領主さんは犁を引く馬から手は放さない。お急ぎのようだ。

 

 領主さんは瞬く間に大きな畑2枚を新設し、その辺りでお昼になった。

 前日に保護者の一人にお昼ごはんを渡してある。

 日持ちがしやすいようにと干し肉とチーズやらビスケットだのガレットだのである。飲み物にはワインも入れておいた。

 領主さんはそれらを味見程度に一つづついただき、後は開拓地の皆の物とした。領主さんの持ち寄ったお昼は麦粥みたいな物で、寧ろ貧相だ。


 領主さんは民に近くなかなかの人気なのだが、一緒に着いている妹とおぼしき女の子達も垣根が低くおおよそ貴族っぽくない。イービルアイから送られてくるデーターでは伯爵一家と、ズボン姿でお姉さんっぽい人物はどうも領主さんの婚約者なのらしい。子爵令嬢なのだという。

 

「ふーん。変な取り合わせだね。婚約者くんもよく留め立てしないものだよね」

 相変わらず図書館がぼそぼそ言う。私に話しているのかも疑わしい。

「およそ型にはまらない領主さんだな」

 仕方なく私も相槌をしてあげた。

「そうだね。この領主くんはなるほど。だがその道もまた辛いだろうね」

「どうすれば楽だと?」

「捕らえて奴隷市場に流せば一番楽さ。お金にもなるし」

 図書館の奴は思いの外現実主義者だ。自身の人柄の丸さに比べて発言には時々刺が有る。

「お前それは酷いな」

「だね。でもそれが他の領主のやり方さ。でなければ締め出しするよね。疫病とか恐いもの」

 締め出しにはなるほどなと思わされた。疫病は人間(ヒューム)には恐ろしいだろう。

「領主さんはどうやって疫病を回避してるのかね」

「確かに気になるね」


 お昼を食べ終わり、少し休憩した領主さんは自ら他の荷車に乗せた肥料の類いを巻き始めた。茶色の何かなのだが、 私には分からない。しかし、図書館には分かるようだ。

「肥料は動物の糞だね。でもちゃんとぼかしてある。よく知ってるね」

 動物の糞が肥料として有効なのは知っているが、ぼかすとは何だろう。図書館の言うことはたまに分からない。

「発酵させるのさ。そのまま巻くと糞の栄養価が高すぎて作物が取れないんだ。そうならないように発酵させて使えるようにする。それをぼかすと言うのさ」

 図書館が丁寧に解説してくれた。

 

 その肥料を土と混ぜ合わせてその日の作業が終了した。混ぜ合わせ作業には母親らしき人物以外は全てのそこに居る者が加わり、わいわい言いながら混ぜ合わせていた。

 この人柄が良く、そして若い領主さんは、多くの領民だけではない。戦災難民から愛され、そしてそのまま開拓民から愛される。外交の使者を斬り捨てたという噂が物凄くちぐはぐ(・・・・)だった。つい先程までは。


「さて、これで追加の開拓民を送り込めるな。新しい人達はしばらくテント暮らしだが、大工さんの派遣は急ぐよ。さて、エリザベスちゃんが言ってた美人さんでお世話好きな学者さん、来てくれたら良かったのにな。どんな方か見てみたかった……ね!」

 領主さんが『ね!』と独り言を放った瞬間、隠蔽スキルで隠してある筈のイービルアイの方を向いたのである。

 この領主、隠蔽を見切ったのかよ?

 何故か領主さんの目がイービルアイの向こう側に居る私と図書館を見ているかのようだ。偶然とは思えない。民に優しい領主さんのようだが、何かが侮れない。今のところの領主さんへの感想である。

 読んでくれてありがとうございます

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 なども書いております。宜しかったら見て行ってください


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