第105話 ダンジョンマスターだって見せたくないモノはある!
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約一週間にも渡る軍務卿さんの視察を終えた領主さんは、私やら図書館の奴やら今回頑張った子供たちを集め、慰労会を行うことにしたわけだ。
それこそこの領主さんのやることだ。自分という伯爵様から奴隷頭のエルカザンタさんまで同じテーブルに案内し、食事と飲み物をガンガン振舞い、親しく声をかける。
「まずはダンジョンさん。いつの間にあんな精鋭を揃えた事は称えられるべきだ。ささ、どうぞどうぞ」
領主さんがジンジャーエールみたいな物を私のジョッキに注ぎ入れる。本来これはメイドさんや執事さんのお仕事だ。それを敢えて自ら行う領主さんは『私を下に置くつもりは無い』というアピールなのだ。
「恐れ入ります領主さん」
私も上機嫌だ。
「エルカザンタさん、君王都の魔法師団も行けると思うよ。手続きするかい?」
「いえ。私は奴隷頭がお似合いにございます」
「キリルくん。見事な弓騎兵ぶりじゃないか。報奨は弾むぞ!」
「領主さまの領民でいられる事が何よりの報奨です」
キリルくんは胸を張って答える。
「おやおや。ダンジョンさん良い飲みっぷりだね。さあ無理はしない程度に楽しんでくれ」
「たーのすぃーでーすぉ~」
「そうか。それは何より」
ジンジャーエール美味いな。なんか微妙に酸っぱいけど美味いな。
「ところでイーナ?あの口上は酷すぎないか?ちょっと酷すぎないか?」
「えー?慈悲と哲理の顔容だよ。お兄ちゃんの妹だよ。だからこれ貰ったよ」
そう言ってチノパンのポケットからヨレヨレになった羊皮紙を取り出した。
「なんだそれは!お兄ちゃんちょっとイーナに怒ってるんだけどな」
「リチャードくんからのラブレターだよ」
「リチャード『くん?』っておまえ公爵家に連なる家の者にそんな言い種有るか!ってラブレターだとぉ!」
「うん。今度両親連れて正式にお婚約の願いに上がりますって」
「な?どうしてそうなったよ?」
「女の子に負けたのは初めてだからだってさ。でもお兄ちゃんには勝てないのに何で婚約しにこないのかね?」
「イーナ男同士で結婚はせんだろ」
「良いじゃん。you!やっちまいなYO!」
ここのご一家は変なのが多いが家族仲は大変よろしい。個人的には親も兄弟も居ない私にとっては、とても羨ましい。
そんな兄妹の会話を聞きながら美味いジンジャーエールを私はパカパカ手酌で飲んでいた。
「フリコくん。見事な行進だったね。お兄ちゃんフリコくんにお礼を言わなきゃな」
「あにうえの おちからに なれて うれしいです」
「フリコくんとお友達のみんなに報奨しなくちゃね」
領主さんはお酒も入ってご機嫌そのものらー。私もジンジャーエールでご機嫌なのらー。歌だって歌っちゃうやー。アハハハハハハ。はにゃにゃ~はにゃにゃ~はにゃにゃにゃにゃ~♪
ーーー
あー。皆さんお見苦しい物をすまないね。ダンジョンくんがこの辺りでお酒にめちゃくちゃ弱い事とかが領主くんにまで判明して相変わらずの様子なんだ。
しばらく私、図書館魔族のセレクトがお送りするよ。
「りょーしゅさーん。このじんじゃーえーるすっぱおいしーにゃー」
陽気に領主くんに持ちかけるダンジョンくん。
コレ、本当に暴れるタイプの酔い方しないから笑い話で済むけど、エールというお酒を今度はジンジャーエールなんかと勘違いしているんだ。
「おいダンジョンくん。私お酒飲み慣れた方が良いよって言ったよね」
「にゃーにゃにゃー」
「あー。ダメだわ。仕方ないから連れて行くね」
「うーん。ごめん。なんかもっと酔わせて色々聞き出したくなっちゃった」
領主くんがいたずらっ子みたいに笑いながら言うじゃないか。これは仕方ないよね。
「領主くん。これ以上飲ませないでね」
苦笑いしながら答えるしかなかった。魔族が酔いどれた位で急性アルコール中毒で亡くなる訳ではないが、翌日面倒見るのが大変だからね。
「家で面倒見るよ。酔っ払いの相手は任せてくれ」
余裕だな領主くん。でもコレがこんな陽気に酔いどれていられるとも限らないんだぞ。
しかしこの酔っ払いは思いの外好印象なのだ。
集まっている子供たちも大いに盛り上がっている。完璧クールなお姉さん先生が、今ここでへべれけなのだもの。これを見たくないという人はそりゃ少ないだろうな。
参ったなこれは。こうなると何を言い出すやら分かったもんじゃない。
「わたしゃー、みんなうらやましいのらー!つながりがあるらー。いとなみがあるらー。そんでかぞくがいるらー。」
呂律の回らない口調で何やら人間を羨ましがる。
「落ち着きなよダンジョンくん。人は自分に無い物を欲しがるものさ。羨ましいのも当然なだけなんだよ」
「『人は自分に無い物を欲しがる』これ名言だね。凄いよセレクトお姉ちゃん」
ダンジョンくんは私の言い様にだけはカチンと来たようだ。
「ちがーうもーん あたしまぞくらもーん」
そう言って角を隠す魔法を解いて角を顕にした。まあ、ダンジョンくんを魔族と知らない人はもう居ないから構わないんだけどね。
「領主くん。これはもうそろそろ……」
「そ……そうだな。メイド長、客間を用意してくれないか」
仕方ないね。身体強化の魔法をかけて、私がダンジョンくんを客室に送り届けたよ。
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