第102話 馬上試合
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翌日行われた馬上試合で、一回戦で登場したのは領主さんの妹イーナさんであった。
「どう考えてもおかしいだろうが?最近馬に乗れるようになったばかりなんだぞ?馬上試合は死ぬことだってあるんだぞ?」
領主さんは大騒ぎをしている。それを領主さんのお母上さんとメイド長さんが宥めて取りなして貴賓席に押しやる。
集まった領民は大盛り上がりしているし、反面軍務卿のお付きの騎士、戦士たちは文句を言いだしている。それはそうだろう。まさかの女の子が試合に出てきてしまうのだから。
「リブラ卿?これは何かの余興で?」
軍務卿さんも訝しげに聞いてくるがそれを聞いてる余裕なんか与えない。
既に名乗りが始まってしまっているのだ。
「公爵家嫡男リチャード・ウチノマチである!鎧を纏ったからには礼をしないのも礼儀の内。女子供とて遠慮はせぬぞ」
「やあやあ遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!世の為人の為、日夜難民救済に心を砕くリブラ伯爵が妹イーナ・リブラ。この慈悲と哲理の顔容を、見事受けられるものならば受けてみよ」
酷い煽り文句だ。可愛い顔の攻撃をどうにかして御覧なさいと言っているのだ。それだからかイーナさんはヘルムもしていないじゃないか。
「イーナ非常に失礼だぞ」
領主さんはイーナさんの言い様を咎めるが、しかし隣に居る軍務卿さんは「確かに可愛いね」と目を細めている。
イーナさんの口上に会場がどよめき、イーナコールが巻き起こる。公爵の嫡男リチャードさんのコールも決して負けてはいない。
両者が高く武器を掲げ、どよめきやコールがピタリと治まる。鐘の音と共に騎馬突撃をし、当たり具合や落馬状況などを3本勝負で競うのだ。
1本目、両者の武器が派手に音を立ててぶつかり……合わなかった。リチャードさんのランス刺突をイーナさんは上体を反らして躱し、すれ違いざまに右手のトンファーでリチャードさんの右肩を突き刺し、それと共にトンファーが砕けた。
馬上試合専用の武器は衝撃を和らげる為に当たると砕けるようになっているのだ。
リチャードさんにとってランスが壊れないまま残ったことがショックだったろう。
「リチャードが相手に当てなかった所を俺は見た事が無い」
思わず領主さんが呟く。イーナさんが初めて躱したし、そのイーナさんは馬上試合が初めてなのだ。「どうなってるんだこの試合?」とは領主さんの呟きだ。
「見たかわがトンファー捌きを」替えのトンファーを高々と掲げてイーナさんが1本目の勝ち名乗りをする。
「おのれ小娘、不覚」
もはやイーナコールが止まらない。見に来ているのは何故か難民や領民の子供たちが多い。多くがイーナさんとママーナさん
が集めているうちのダンジョンの練兵場に集合している少年少女練兵団の子供たちだ。
信じられないかもしれないが17歳のリチャードさんが10歳のイーナに良い様にあしらわれているのである。
2合目が始まる。お互いの騎馬が突撃を始め、ランスチャージを今度は左手のトンファーでイーナさんがいなす。お互いの武器が派手に飛び散り、残った右手のトンファーでリチャードさんの胴を薙ぎ払う。そこで更にイーナさんのトンファーが砕ける。1本が認められもはや会場は割れんばかりの歓声に満ちる。元より人気者のイーナさんがその人気度を最高潮に高めた形だ。軍務卿の武官たちもその実力をもはや褒めない訳には行かなかった。
「リブラ伯爵家の隠し球」「可愛く強い美少女重騎兵」「これはこれは」もはや話題の中心に居る。リチャードさんがゾッとした顔をしているのが見える。
しかし、リチャードさんは次回イーナさんから落馬を取ればポイントでは並ぶのだ。絶望はしていない。しかしイーナさんに先にそれを言われてしまう。
「やっぱり薙ぎ払ってもダメかぁ。次こそ落馬を狙うよ!」
「クッ、負けるかぁ!」
3合目が始まる。両者の馬が最後の突撃をかける中、今度はイーナさんが仕掛けていく。左手のトンファーをランスに先にぶち当て切っ先を逸らした。その衝撃では両者の武器は壊れることは無かった。
そしてそのまま左手のトンファーを放り捨て、左手まで右手のトンファーに添えてリチャードさんの胸を突き刺す。落としたトンファーだけが砕けた後、ランスを持ったままのリチャードさんがその刺突に耐え切れずランスを天に掲げて落馬した。イーナさんは宣言通り落馬させてしまったのである。イーナさんはそのままウイニングランとして闘技場内を一周し、リチャードさんは落馬の影響で軽い脳震盪を起こし、そのままタンカで運ばれた。
「妹君お見事!わしの息子は大丈夫なのかのう?」
「お任せください。医者とスタッフは優秀です」
私から答えておいた。ダンジョンの病院からドクターを呼んであるのだ。
正直なんでイーナさんが勝てたのか理由が分からないという顔をしていた領主さんに、こっそり打明けた。
「ダンジョン内の練兵場なのですが、習熟度が著しく高くなるようなんです。イーナお嬢さん、あれでで練兵場内では中程な成績なんですよ」
「そうなの?」
しかし公爵家の皆さんはそれを知らない。
後程回復したリチャードさんはイーナさんの手を取り勝利を称え、事もあろうに将来の結婚を申し込んでいた。イーナさんはジョンさんからの全てのお誘いや贈り物は有難く頂戴しても結婚の約束だけははぐらかし続けた。
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