第10話 領主さん観察会
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52開拓地の子供達の預かりの他に、その近所にある36開拓地の子供の預かり保育も、実のところトントン拍子に進んだ。理由は簡単だ。52開拓地の皆さんが話を通してくれたからだ。
ざっと調べた所、若い夫妻が2組居るが、これは52開拓地の何年後かの未来なだけだ。子供達が大きくなり、結婚した姿だろう。
子供の数が62人だという。これは逃亡中に壊滅した村々から子供を集めた、当時現役軍属だった逃亡者が居るからだ。
貧しい時期も必死に乗り越えたのだろう。軍属の者は30代だと言うのに、顔には年輪のように皺が刻まれ、白髪も多く痩せぎすで、それはまるで枯れた老人のようだ。
そんな間も無く子供が増えるという時に、52開拓地の子供達が明日は全員来る事が出来ないと告げて来た。
「それは構わないよ。何か明日あるのかい?」
その日勉強を教えに来ていた図書館が、私の許可も無く答えた。おい図書館!私のダンジョンポイントをどうしてくれるんだ?まあ、来れないなら来れないで私も同じ応対をしたとは思うがな。
「領主様がお越しになるんです。先生方も会ってみては?」
「あら。領主さんが来るのに子供を追いやらないの?」
私が思わず聞いてみた。貴族って生き物は時々そんなのが居るからだ。
「領主様は『子供たちは未来の宝』と言って大事になさいます。そしてじーさんばーさんを『年寄りは国の宝』と、やはり大事になさいます」
思わず私と図書館は顔を見合わせた。
以前聞いた話では外交の使者を斬り捨てたという話も有る苛烈さと、弱者を庇う仁厚さがアンバランスな人物だと思わされたが、今日聞いている段階では苛烈さが成りを潜めていく。
「愛される資質に満ちた領主様だねえ。明日の件は気にしなくても良いけど、領主様に会うなら身なりを整えておきたいものだね。開拓地の大人の方々にもお風呂と服を整えておくべきじゃないかな?交代で来たら良いよ」
またしても図書館が勝手な事を!服を出すのもただではないのに!ダンジョンポイントを使うんだぞ!え?風呂?交代で来る?あ。それならダンジョンポイントとはとんとんだな。よし。赦す。
「そうね。是非皆さんの身なり整えたいかな。馬車は何往復でもするから全員服もきれいにしておきましょう」
私も前のめりに賛成した。訪問者が増えればダンジョンポイントが貯まるのだから。
「パトロン先生の様子は怖いけど皆にお話してきますね」
思わず怖がられた私ときたら。みっともないな。
その日の夜は馬車と御者が忙しく立ち回った。開拓地の老人達も私が学者のパトロン兼助手で客好きなのを認識していたらしい。
まあ、確かに客は好きだが、何故か図書館の方が上に見られているようだ。忌々しいが仕方ない。
何故かその日は図書館は帰らず、ずっと何か調べ物をしていた。時折私に領主さんの事を詮索してはぼそぼそと予想を話していた。
翌日、私から図書館に提案してやった。
「そんなに領主さんが気になるなら一緒に行こうか?」
それに対して図書館は変な反応をした。
「それはもう少し領主くんを見定めてからにしたいかな」
確かにそれはそうだ。これで苛烈な人なら割と血まみれ案件になるかも知れない。
領主さんが開拓地で何をする気なのかも気になる。
行ってお会いすることが出来ないなら、やはりここは一つ目の浮遊する魔物、イービルアイの出番だ。水晶球に目で映した物や声も送ってくれる上、高い気配隠蔽スキルも有る。
こいつを送り込んで様子を見てみよう。これに図書館も同意し、早速開拓地に放ってみた。
イービルアイが映したのは早くも開拓地にたどり着いた領主さんだ。
年の頃は二十歳未満だろうか。思ったより若い。ほっそりした見た目ににこやかな顔立ち。完全に単なるボンボンだ。
「やあ、元気だったかい?ケント、ジェシカ」
領主さんは定年者に子供達の頭を撫でた。全員の名前を覚えていた。
4歳の女の子が領主さんがかがんだ時に頬にキスをした。本当に慕われているらしい。
「おやリリアン、嬉しいプレゼントだ」
領主さんが女の子を抱き抱えて立ち上がり、そのままお年寄り達を督励し始める。
「イシドロ爺さん、義足の継ぎ目は痛むかい?どうにかしてあげたいのに」
「レベッカ婆さん、まだ目眩はあるかい?」
「皆が長生きすることを願うことしか出来ない。なんと非力な領主だろうな」
黙って見ていた図書館が呟いた。
「これ、どこでもこうなのかな?全員の名前を覚えていたよ」
私も驚いていた。
「どうも病状もおさえてるみたいだな。病院の用意を急がなくてはな」
領主さんに付き従ったお付きの者も居る。
白髪の老人は執事、おばさんメイド、そうしてそこそこ綺麗なドレスをまとった領主さんの母親らしき人物に、妹とおぼしき女の子が2人。内一人は騎乗してズボン姿だが、その美貌はお見事な女の子。もう一人は髪の毛が短い男の子かと思ったら、スカート姿の女の子。
そして幼い弟のような男の子。
これ完全に貴族と護衛ではなく、領主ファミリーだ。
「護衛無しか。余程護身術に覚えがある……ようにも見えないなぁ」
このろくな護衛も連れていない領主さんは、この後黙々と開拓地の為に働くのだ。
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