表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/188

91 最弱スライムパンチ

リキンの街のエヒス騎士爵に招かれ、領主邸に行った。


3階の部屋↓いきなり床ぱっか~ん↓落下↓石造りの牢屋に幽閉。


無警戒で、罠にはまった。


「油断しすぎた。オルシマの領主邸を簡単に切り抜けられたから、有力者を甘くみすぎてた」



反省はあとでする。まずは脱出だ。


床は10メートル四方で上は10メートル以上。


上は開いたまんまだけど、人の気配はしない。


だけど、ツルツルに磨かれた石の壁で登れそうにない。


ごつ、ごつ。目の前の石壁を叩いても反響はない。ここは恐らく地下だ。

床から3メートルのとこに食事と空気入れ用だろうか、縦10センチ、幅40センチほどの隙間がある。



「いひひ領主め、完全に閉じ込めたと思っただろう」


今は、新たな技がある。というか、1個しか引き出しはない。とりあえず裸になった。


そしてスライムを収納指輪から取り出した。


「そうです。「等価交換」でスライムボディーになって、空気穴から逃げるのです」


空気穴までの高さは3メートル。先にスライムボディーだと踏み込みに不安。


「よいしょっと」


ダチョウ3匹が足場。そこから跳んで、3メートル地点の穴に手をかけた。


「このまま、穴から逃げよう。「等価交換」スライム変換」


ぱちっ、ぽよ~ん。


久々の水の膜に包まれ、骨が浮かんだスケルトンボディーだ。


だが・・


ぷちっ、じゃばっ。


「ぶへっ」


あまりの耐久力のなさに、スライム腕の膜が破れてしまった。


「うおお、やべっ。『超回復』!」


逃亡手段がいきなり役に立たず、途方に暮れてしまった。


「参った。次の手を考えよう」


思案と言う名の現実逃避。エールを出したが、わずか2杯では考えがまとまる前に飲み終わった。


「これじゃ酔えねえ!エヒスの野郎、絶対に許さねえ」


久々にランドドラゴンのドラゴニュートに変身。渾身の右ストレートを石に向かって打った。


ガンツ!「閃いた・・」


石は傷付かなかったが、「火剣のアグニ」を倒したときのこと、思い出した。


スライムを再び出した。

「スライム変換」


ぱちっ、ぽよ~ん。



実験では、細い木の枝で私のスライムボディーは破れた。


だからこそ、私の最強の武器になる。


「撃てるのは、ハエさえ殺せない世界最弱のパンチ。しかし、これが最強に至る道。なんてね」


強固な石壁に向かい、腰だめにした右正拳の構え。


「砕けろ、スライムパンチ!」


ぺちゃああん。


石の壁を殴った。


私の指、手首、肘、肩、胸、右腰。石に吸い込まれるように砕けていく。


そして、あの作用が働く。


「超回復&破壊的絶対領域」


ゴッ! ゴゴゴゴ。


「成功した・・」


スライムパンチを撃った私。外から見れば身体の右半分が、石の中にのめり込んで見える。


本当は身体がのめり込んでない。


なのに、左半身に合わせるために『超回復』で石壁の中で右半身が構築された。


ご、ごご。パラパラ。


石があった空間は、私の柔肌によって押し退けられた。


身体を石にできた穴から抜くと、早くも周りが歪み出している。


「これは、思ってたよりヤバい・・」


ダチョウを「等価交換」し、荒業で90センチまで縮んだ体を戻しながら、「スライムパンチ」の効果を見ている。


これは怖い。


破壊的絶対領域で石の欠片が、牢の内側に少しだけ飛んでいる。だけど、大半の威力が、建物自体に破壊エネルギーとして向かっている。


「空気口も上に歪んでるよ」


しっかりした土台の中に、瞬時に子供半分ほどの膨らみができ、全てを押し退けたのだ。


だが、今の状態では脱出はできない。


スライムは残り124匹。


「大砲」の弾丸は山のようにある。同じ場所に「スライムパンチ&破壊的絶対領域」をぶちこんだ。


ゴツ、ゴッ、ゴッ、ゴッ。


4回目に地下牢が崩壊を始め、3階執務室の机に置かれていた書類やペンが落ちてきた。


建物自体が危ない。


代わりに私が壊した穴の上から光がみえた。今度は上向きにスライムパンチを使い、地下から1階への脱出口を作った。


1度は捨ててしまうかと思った最弱生物スライムだけど、「等価交換」で誤作動。その応用で私限定の「最強」に変わることが分かった。


これで大型ドラゴンも倒せる目処もついた。

ただ、ドラゴンを倒して私が得られる経験値はゼロなのだろう。


スライムパンチは燃費も悪い。わずか6回の使用で、3・2メートルダチョウをほぼ1匹使い切った。



服を着て外に出ると、騎士爵邸の1階は使用人がてんやわんやだった。地震と思ったようだ。土台の一部が歪められた邸宅がどうなるかは知らない。


エヒスに仕返ししたが、私には何の得もない。


イラつきながら厨房の前を通りかかったとき、ワインが見えた。


「うしっ、慰謝料ゲットだ」


厨房にいたコックを脅し、ワイン80本、ウイスキー14本に大量のチーズを強奪した。



厨房の人間に通用門の位置を聞いて外に出た。衛兵にユリナが館を破壊して帰ったと伝言だけしておいた。


この「戦力」を見て、再び襲って来るのだろうか。




領主に害されそうになったが、私はオルシマに帰っても何も言わない。


この街は必要だ。帰りにジン20本、ラム10本、ウイスキー30本、エール200杯を仕入れられた。


「食」の欲求が減り「飲」が大切な私は、危険であっても何度でも訪れる。


そう思いながら、盗んだチーズをつまみにワインを飲みつつ街を去った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ