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75 スライムは謎の生物

学がない私だが、スライムが気になる。


今、夜の草原。


子供達と街に帰ったあと、用事があると言ってギルドで別れた。


「孤児院の晩ご飯に誘ってくれたな。すごく後ろ髪を引かれたけど、早くやっておきたいんだよね」


ギルドで偶然に、博識な風魔法使いオルガさんに会った。友達の指を治したら泣いた人だ。


そういや最近、ダンジョンで治療した人と、ばったり会うことが多い。


みんな、酒に付き合ってくれるし、楽しい。


さてスライム。


オルガさんに教えてもらったが、謎だらけ。


「物体か生き物か」。王都の偉い学者の間でも、結論がまず出ていない。



夜の草原で、学者も分からないことを判別しようとしている。


「超回復全力走法」で3キロほど街から離れた。身長5センチ減にしている。


いつもの川沿い。


「等価交換」で栄養に使えれば有機物で生き物になる。使えなければ無機物で物質。


スライムを出して唱えた。


「結果は誰にも教えられないけど、世紀の一瞬だ」


「等価交換」ぱちっ、ぱちっ。


ぽよ~~~ん。


「ぽよ~ん? なんじゃ、こりゃああああ!」



月明かりの下、自分の手を見て驚いた。どう見ても手が透けている。


血管も筋肉も見当たらない。骨に水の輪郭をかぶせたような手。


「足も同じだ・・。じゃあ顔は?」


ぽよっ。何となく手で触った顔もプルプルになっている。


「ええ、この感触だと頭蓋骨に膜がはってるだけかな」


完全にアンデッドモンスターのスケルトン状態。


「超回復システム」で取り込めたからスライムって有機物だ。


「だけど、これは完全に誤作動だよね。スライムって何者なのよう!」


このままスケスケボディーのままなのか。


死霊ダンジョンの奥でユリナからスケナに名前を変え、隠れて生きるしかなくなる。


愕然として膝を突き、地面にスケルトンハンドをたたきつけると、またも怪奇現象が。


べしょっ。びよ~~~ん。


「えええええ?」


地面にたたきつけたとこから手の膜が破け、骨と一緒にぷるぷるゼリーが飛び散った。


「うおおおお、『超回復』『超回復』『超回復』!」


ぱちっ。


『超回復』は正常に働き、両手は元に戻っている。恐らく顔も大丈夫だろう。


だけど身長マイナス50センチ減。大幅に減っている。


「・・・あせった。それに消耗も半端じゃない。すげえよスライム。神がかった技能「等価交換」を誤作動させるって、一体何でできてるんだよ」



人には言えないが、確かにスライムは学者が調べても本質が何なのか分からない訳だ。


使い道は考える。


この体があれば、狭い所に入れそうだ。


有力者につかまったとき、鉄の檻から脱出できる。


だけど変身すると、恐らく顔が骸骨になる。


頭を隠せる服、マスク用意して実験しないと。


明日もエキサ初級ダンジョンに行く。


私は子供達からサポート係として、多くの「予約」が入っている。


モテ期なのだ。


なので、夜のうちにダンジョンに入って追加100のスライムを集めた。



オルシマの街に帰ってきても、まだ夜明けまでには時間がある。


オルシマ帰還2日目で早くも野宿。


縮んだ体を元に戻すため、落ちてる木の枝を拾って「等価交換」


体が元に戻った頃、2日前に見つけた、お気に入りの木のところに行った。



そこには意外な人がいた。


「あれ、先客だ。アルバさん?いや弟さんよね」


「末の弟のジェルバですよ。ユリナ様」


彼は隣町への依頼から帰るのが遅くなり、大きな木の根元で朝を待っていたそうだ。


酒は大丈夫だそうで、エールのストックを出した。


朝まで付き合ってくれる。


やっぱり彼ら4兄弟は、苦労していた。


ジェルバさんが生まれたあと両親が死去。


身寄りもなく、悪い人間に捕まっていたとき、スマトラさんに、助けてもらった。


助けられる寸前に、4人そろって、敵に火傷を負わされた。


しばらく私達は暗闇を楽しみながら、乾杯した。


「ユリナ様」

「はい」


「あなたはなぜ、リスクを冒して私達の火傷跡やスマトラ様の病気を治したのですか」


「そんな熱い目をされても・・私も分かんない」


「え・・」


「あえて言えば、自分が見ず知らずの人に助けられたことがあるからだね」


私にはかつて、カナワで3人の仲間がいた。


4人で頑張ってたけど、合流したのは私が一番遅かった。


身寄りがなくなった。

知り合いもいないカナワの街に行った。


不安ばかりだった。


「そのとき、ナリスが手を差しのべてくれた。モナとアリサが歓迎してくれた。それが本当にうれしかった」


『超回復』のことを知られ、一度は逃げた。


だけど、この街に来ていきなり、スキルを使わなければ、助けられない人に遭遇した。


「その人を助けられたら、本当に良かったと思えた。あとは、その勢いだね。えへへ」


「し、しかし、あなたの安全が・・」


「危険はあっても、これっぽっちも後悔してないよ」


「なぜなのでしょうか」


「昨日孤児院でお兄さんのアルバさんとご飯を食べてたら、泣いていた」


「え?」


「悲しみじゃない涙を見せられたとき、スキルを使って本当に良かったと思ったよ」


「兄が涙ですか・・」


「思い上がりかも知れないけど、私の行動で、アルバさんの心も癒せたと感じたわ」


「強い兄しか知らなかった・・」


「痛みを隠して頑張ってたんでしょ。やっぱ、辛かったんだよ」


ジェルバさんに言った。


お兄さん達も、他の知り合いでもいい。


怪我や病気で辛そうな顔をしてる人に見つけたら、私のとこに連れて来てと。


「偽の霊薬を頭からかけて、インチキ呪文を唱えてあげるよ」


「インチキ呪文ですか・・。でも効果は本物でした」


「呪文の料金は1000ゴールドね」


「わずか、エール2杯分ですよ」


「治すのは、名もなき神様の仕事。適当なこと唱える私自身には、エールくらいが分相応よ」


「くくく、なんですかそれは」


「私も解んないよ。あはは。お酒、まだイケる?」

「まあ、飲める方です」


「たまに、街の酒場にも飲みに行こうよ」


「喜んで!」


オークだらけダンジョン再挑戦に備えてナイフ術を教えてもらう約束をして、朝になって別れた。




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