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71 勘違いする人たち②

すまない。もう少し私スマトラに、話をさせてくれ。


私はユリナ様との再会を楽しみに、オルシマの街に帰った。


「スモールシルバー」の拠点は、我が家の離れとした。


私の配下4人も、ユリナ様の信者だ。


彼らはそろって、冒険者ギルド副ギルマス、ジェフリーも「スモールシルバー」に誘うべきと強調する。


ユリナ様の動向を聞くためにもジェフリーを拠点に招くと、私並のユリナ信徒だった。


ユリナ様は、オルシマの街を初めて訪れた日。ジェフリーの妻マーサを治療していた。


治療したのは、頭と左足。だか、大怪我は頭のみ。


左足は、怪我どころか、最初からなかった。


2年前、マーサは、ジェフリーと林の中を散歩していた。

その時に、ポアゾンスネークに噛まれ足首から先を切断。義足で過ごしていた。


ユリナ様から見て、足首がねじれていたのは、義足が外れていただけ。


なのにユリナ様の治療で、左足が生えた。


大きな対価を用意したが、請求は1000ゴールドのみ。恩に報いるため機会を探している。


私より1か月前に「奇跡」を受けたジェフリーは、ユリナ様を守るため、情報を集めていた。


「スモールシルバー」のメンバーを集め、ジェフリーに話を聞くことになった。



ここから、友人の指の欠損を治してもらった魔法使いオルガも加わった。


すでにユリナ様に身寄りはなく、さらに魔力ゼロ。


カナワの街で同じ「劣等人」と呼ばれた3人と、身を寄せあって生きていた。


高位冒険者6人組に騙され、仲間は死んだ。


ユリナ様自身は謎のスキルを発現し、ダルク特級ダンジョン10階から生還した。


生還後は冒険者活動を再開。仲間を助けられなかったことを悔いていた。


ある冒険者と恋仲になった。


しかし、数ヵ月で泣きながら別れた。


ギルド内、多くの人の前で、瀕死の恋人を助けた。


それが原因で欲深いカスガ男爵家、カナワの領主から逃げた。


そして姿を消した。



「壮絶ですねジェフリーさん」

「だけどなぜ、ユリナさんは姿を隠していたのに、突然現れたのでしょうか」


「再び姿を現すにしても、回復スキルを使う必要もなかったですよね」


「ルナ、なぜそう思う」


「私をオークの巣から救ってくれたとき、ユリナ様は自己回復をしながら戦い、オークの巣を潰しました」


「そんな力があるのか・・。確かに、回復スキルを隠して普通の冒険者として過ごしても、問題ないよな」


「そうだ。無茶苦茶な戦い方でも、すごく強いよな・・」


「あの・・」


「何か思い当たることがあるのですか、オルガ」


「ユリナ様をみんなが冒険者、そう見るから分からなくなるのでは」


「どういうことですか?」


「きっと助けを求める人間を放っておけない。ただ、そういう人なんですよ」


「!」

「あ・・」

「・・そうか」


「ダンジョン内を強行して進む。かと思えばセーフティーゾーンで丸2日も、何かを待たれている」


「僕らが救われたのは、必然?」


「そう。きっと、あの方は、私達の助けを求める声が聞こえているのです。たまたま、身分証明のため、冒険者になっただけ」


「・・なるほど」


「ダンジョン最下層でスマトラさんの病気を治し、疲れた体でルナさんの救出に向かっておられます」


「私、どんだけ感謝すればいいんだろ・・」


「そして数日後には、わざわざ混んだ食堂に現れ、私の仲間の、指の欠損を治していただきました」


「オルガさんは怪我はなかったのよね」


「仲間の指の欠損は、私のミスが原因。ずっと後悔しておりました」


「オルガさんは、ユリナ様に私は心を救っていただいたのですね」


「詮索してはいけないのですが、あの奇跡の技は何だろうか」


「私は知りました」

「本当か、オルガさん」


「ユリナ様と2日ほど過ごし、スキルを得た経緯を聞きました」


「経緯?」


「ご自分も死と隣り合わせの極限状況の中、先に瀕死となった仲間を助けるため、神にスキルを望んだようです」


「スキル・・。そういえば、魔力ゼロで使えるスキルなんて聞いたことがないよね・・」


「はい。だからユリナ様は魔力ではないものをお使いになり、スキルを強引に発動させています」


「何なの、オルガさん」



「スキル使用後のユリナ様を見て分かりました。聞く覚悟がある方だけにお伝えします」


みんなが息をのんだ。全員がオルガの言葉を聞かずにはいられない。


ユリナ様が他人の体を修復するために使う対価とは・・


「それは間違いなくユリナ様ご自身の、お体です」


「え」

「うそ」


「スマトラさん、ユリナ様の身長は?」


「確か、150センチくらいでかなり小柄だったような・・」


「違いますよ。155センチ」

「いや、150センチを切っている」


「どういうこと?」


「本当のユリナ様の身長は160センチ。しかし私の仲間の欠損した指を回復した直後は157センチ」


オルガの風魔法を利用した感知術で何度も確認している。


魔力ゼロ。発動しないスキル。自分の為でなく他人のため。


身を削って、人の体を治す。


「まさに究極の自己犠牲ではないか・・」


オルガがユリナ様を見ていると、時間か経てば体は元に戻っていた。


しかし、3人を続けて治したとき、スキル様の体は段階的に小さくなっていたという。


「連続使用。それは、ユリナ様自身の、消滅の危機に繋がると思います」


悪い貴族につかまれば文字通り、使い潰され、ユリナ様は死ぬだろう。


改めて確信した。


神は私スマトラをユリナ様を守るために生かしたのだ。


私は小銀貨1枚しか受け取ってくれないユリナ様に、せめて住居を提供する方法をみんなに問うた。


だが、ジェフリーから悲報をもたらされた。




「残念ながら、ユリナ様はオルシマの街を選ぶ気はないようです。スマトラさん」

「え?ジェフリーさんどうして」


「領主の娘アイリーンが、ユリナ様の奇跡を知っています」


戦って負けても懲りない、あの女。ユリナ様を奴隷にして使役する気でいる。


ユリナ様もそれを知り、この街に近づかないそうだ。



部家の空気が一気に冷えた。


4つのヒトガタをした影から、地面が震えるような、低い声がした。


「・・なんだそれは」

「あの方を・・」

「ユリナ様を奴隷だと・・」

「・・許すまじ」


私の4人の護衛が、純然なる怒りを示している。



「スモールシルバー」最初のミッションが決まった。



https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241


アルファポリスで先行しています

読んでいただきありがとうごさいます

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