67 ダンジョン攻略は計画的に
オークだらけの上級ダンジョン22~30階を進軍。
17日かけて進んだ。
ソロにしては、まずますのスピード?
いや、手こずったよ。
不眠不休で動ける特性を生かすから、日数が短縮できるだけ。
丸2日、つまり48時間もかけて22階スタート地点から、23階セーフティーゾーンに到達。
そこで丸1日の休み。
プラスして、セットになってきた冒険者治療を4人消化。
さらに3日で26階セーフティーゾーンへ。
ここのペースは早かったが、燃費を無視して『超回復』を使った。
72時間連続操業と、地上オーク12匹の消費である。
無茶しすぎた。
ダンジョンに入って、高レベルオーク、豚を各40匹ゲット。
代わりに「等価交換」用の素材で材木などは終了。
27階から地上オークに手を付けた。
地味に強くなっていく敵。攻撃に「等価交換」なし。
そのため、28階セーフティーゾーンでまでに3日追加。2日寝て、28階セーフティーゾーンから30階で4日もかかった。
30階ボス部屋前では、1日休んだ。
他の冒険者もいる。
端っこで毛布1枚で寝ているが、ノーガード。
低ランクダンジョンと違い、お互いにちょっかいはかけない。
こんな場所に来る奴は間違いなく、戦闘力が高いか、特殊スキル持ち。
トラブルは死に直結する。
エンカエント回数が一階層につき豚8回、オーク8回としても22~29階で128匹の高位魔物を倒している計算。
魔物より、冒険者同士のトラブルの方が危ない。
ただ、敵でない4人組が、私の起床を待っていた。
ポーションで治らないレベルの負傷を治す「気功治癒使い」。
早くも情報としてダンジョン内で出回っているそうだ。
ダンジョンに足を踏み入れて20日くらい経っている。早くはないか・・
生存確率を上げる「回復」につながる話。広まるには、十分な時間。
話は脚色されているようだ。
「こんにちは、聖女ユリナ様。僕はオルシマを拠点とするCランク冒険者カナタです」
仲間と一緒に頭を下げた。
「仲間の太ももの治療、10万ゴールドでお願いします」
「・・ふふっ。カナタ君。2点間違ってる。私は聖女じゃなくて、ただのユリナ。そして、治療費も違うわ」
「じゃあ、ユリナさん。幾らくらいなら・・」
「1000ゴールドよ。4人とも手を出して」
「え?」
水を撒いて『超回復』×4。
「はい、合計4000ゴールドよ」
「安すぎない?」
「はいはい、それで神様と契約してるの。儲けないのが、スキルを使わせてもらう決まりなの」
いかん、私は何を言っているんだろう。
太陽の光を20日も浴びてないと、テンションがおかしくなっている。
「けど何かお礼をしたいし・・」
「あなた、ボス戦の順番は?」
「俺たちの番は次だけど」
「お仲間さえ良ければ、ボス戦に私も加えて。早く地上に出たくなってきたの」
もちろんOK。
というわけで、ダンジョンに飽きた私はカナタ君達に乗っかる。
「パワーストレイダー」に寄生して30階を攻略することになった。
ゴゴゴゴ。
「情報では、ボス部屋はレベル51オークを先頭に、豚9匹・・。あれ?」
「ヤバい、ユリナさん下がって!」
「カナタ、お前はユリナさんを守れ」
「すまんユリナさん、いざというときは、あんたの回復をあてにしていいか?」
「慌ててるってことは、アレだよね」
「そうだ。年に1度のイレギュラーに当たっちまった」
「わ~お。オークソルジャーレベル65に、ブラック豚レベル60が3匹ね」
「・・だな」
「ねえ、男子3人は黒い豚と1対1で対戦して勝てる?」
「豚の攻撃は恐らく突進と噛みつきだから、タイマンなら勝てると思うが・・」
「じゃあ決まりね」
私は鎖かたびらだけになり、ブーツ、武器は収納した。
「私がオークソルジャーと戦うから、黒い豚をお願い」
言い終わる前に、ソルジャーに向かってダッシュした。
「ユリナさん!犠牲になる気かよ」
「大丈夫だよ」
ソルジャーは斧を持っている。初撃は、ぶん回しの一撃だけど速い。
避けたつもりで、腹に一撃を食らっていた。
『超回復』
「さて、スキル全開でいくか」
オークの次の攻撃に合わせて踏み込んだ。
こちらの踏み込みは浅い。左手で頭をガード。
だけど、クリーンヒットして、左手ごと首が切断される形。
「ユリナさん!」
斧が木の枝を切断するように、左手を両断した。
その感覚があった瞬間に唱えた。
『超回復』
バキイイン!音と共に斧が粉砕された。
力学を無視して、斧が急ブレーキ。オークが斧を持つ手首が曲がり、斧を手放した。
ぶっつけ本番となったが「破壊的絶対領域」の応用だ。
以前、風のカルナ戦。首を切断されたとき、瞬時にくっつき直した。
ならば、そこにも「破壊的絶対領域」は働くはず。
今のは、腕を切断した斧が切断面に残った状態。
そのとき『超回復』が作用。
「間にあるものは、何物も排除する」の法則が働いた。
ミスリル製の斧が、私の細腕に砕かれた。ように見える。
「金剛気功術かな?」
まさかの反撃に、オークソルジャーは手首を押さえている。
私は腕の修復で身長も縮んだ。
オークの懐に入って右パンチを出すと、左パンチを合わされた。
普通なら私は腕どころか、体ごと粉砕される。
がぎっ!『回復』&「等価交換」
私の拳、手首、肘が砕けた瞬間、その場に復元された。
不思議な空間を使って、私は当たり勝った。
オークの左手は中指、薬指が砕け、手首から先がミイラ状だ。
次の右パンチも合わされたが、当たると同時に攻撃用の『超回復』
ぺきっ。「ぶももももー!」
オークの指関節がずれた。
しかしまだ、オークの戦闘力は残っている。
素早い接近から私の左首筋に噛みついた。
ぶしゅっ。
もう最近、痛みがあることを心が忘れている。
「等価交換、『超回復』」
「ぶふゅ、ぷひゅひゅ」
体10センチ分の栄養は、オークの口からもらった。
ダンジョンボスは、普通の魔物や動物とは違う。絶対に逃げない。
私を蹴り、何度も踏み続けた。
すごい圧力に内臓、肋骨が損傷する。
腕、牙を奪ったのに、なお強い。
『超回復』「等価交換」『超回復』「等価交換」
足の裏から栄養を吸い取った。オークソルジャーがやっと、仰向けに倒れた。
男子達3人は黒い豚を倒し、こちらを見ている。
無言だ。
手、足、口がしぼんだオークソルジャーに、ミスリルソードを何度も叩きつけて止めを刺した。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241
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