65 聖女って誰のこと
ルナさんを救出できた。
少し待ってもらい、オークの止めを刺しては、収納指輪に回収した。
まだ夜明けまで3時間はある。
私1人なら夜の森を歩くが、ルナさんの安全を考えて、夜明けを待った。
彼女を寝かそうとしたが、大丈夫だと言う。
そういえば『超回復』で、体力も全快してるんだった。
彼女、オークと集落の材木を回収してくれた。
オークは63匹。40匹近くに逃げられたが、大漁だ。
ルナさんは、私と同じ19歳。私も『超回復』を得たあと、一つ歳を重ねている。
「聖女ユリナ様、街に帰ったらお礼はします」
「・・ルナさん、同じ歳だし様はやめてよ。それに聖女って何?」
「けど・・」
「私、今度の街では、普通に生きたいの・・」
察してくれた。
「ごめんなさい。じゃあ、せめてユリナさんで」
「うん。ところでお礼は不要だよ。代金1000ゴールド。これが力を貸してくれる神様との約束なの」
この嘘ストーリー、しっくりくる。
今後も、これでいこう。
夜が空け始め、オルシマの街に向かって走っている。
時間を短縮するために、ルナをお姫様抱っこして「超回復走法」だ。
ルナ、しがみつきすぎ。ちょっと顔近い・・
オークの巣から森を抜けるまで5キロ。オルシマまでは街道を使って、さらに10キロ。
低級冒険者も活動するエリアが、オークの巣に近かった。
緊急事案を解決できてよかった。
オルシマの街までに残り3キロのとこで、前から馬車が走ってきた。
こちらに気付いて、止まった。武装した3人の男が出てきた。2人はルナの仲間だ。
もう1人の強者オーラを纏う人が名乗った。
「ユリナ様ですよね。俺はオルシマ冒険者ギルド、副ギルマスのジェフリーと言います」
「ルナさんの救出に来たんですか?」
「それもありますが、ユリナ様の手助けもしに来ました」
このジェフリーさんとは初対面。
ギルド副ギルマスといえば、一代騎士爵という貴族扱い。
低級冒険者の私に「様」付けは変。
「冒険者登録をされた日に、街の中で女性の治療をされましたよね。それが私の妻なのです」
げ、むしろ謝罪案件だ。
「いえ、こちらこそ申し訳ない」
頭を下げた。
奥様、私と冒険者の下らない争いに巻き込まれて怪我をした。
首と左足の怪我を治したけど、服も破れてたし迷惑をかけた。
「いや、妻の左足は・・」
そこでルナさんが割り込んできた。
「副ギルマス、オーク集落の話を」
「あ、ああ。そっちが先か・・」
「ルナ、無事に逃げたんだな」
「・・いえ、捕まったわ。オーク集落の中でユリナさんに助けられたの」
「なに?」
いかん、このままでは、オルシマの街に行く流れになってしまう。
詳しい話はルナさんから聞いてもらう。
「ダンジョンの中で、男爵家の次女に奴隷にするって言われました。当面は、オルシマの街に近づきたくないんです」
収納指輪からオークサージェント、オークソルジャー3体を出した。
売却ならノーマルオークと一線を画す値段。私の「等価交換」材料としては、ノーマルもサージェントも大して違いはない。
「ユリナさん、それは?」
「オークの巣の討伐証明に使って。私、次の用があるから行くわ」
「ユリナ様、妻の件のお礼が」
「次に会ったときにピッタリ1000ゴールド下さい。神様と、そういう契約なんで~」
「ユリナ様、オルシマの街には来てもらえないのですか?会いたがっている人間もいます」
「貴族絡みで、2枚目のギルドカードを捨てるのは避けたいんです。アイリーン問題がどうなってるか、一度だけ確認に行きます」
挨拶もそこそこで去った。
早く次のダンジョン前に行って、宿を取って3日ほど休みたい。
限界はきていないが、前のダンジョン下層から連続操業。
数えたら5日間、120時間くらい動き続けている。
◆◆
ノカヤ上級ダンジョンには2日後に着いた。
道中は「等価交換」の素材にゴブリン20匹、熊2匹の、ボア6匹を捕獲。材木も家一軒分くらい仕入れた。
幸い、ノカヤダンジョン前のホテルは3泊取れた。
朝昼晩のご飯付きで合計66000ゴールド。
最近は食費、宿泊費はゼロだった。贅沢してもいいだろう。
食堂にはダンジョン内で使う保存食、またダンジョン後に食べる嗜好品も売っている。
私は1本10000ゴールドのフルーツケーキ3本を買った。
保存食が必要ないから、この辺で贅沢だ。
ホテルに到着したのは夕方。早速食事で、ターキーのソテーを初めて食べた。
久々の美味しい食事。
食堂は混んでいる。3人組の女性冒険者と相席だった。
「へぇ~、ユリナはソロなんだ。上級ダンジョンに挑むってことは、高ランク?」
「いえ、Eランク。オルシマで登録して2ヶ月目。そっちは?」
「私らはみんなCランク。所属は、あんたと同じオルシマ。今回は13階まで潜った」
「ユリナって、Eランクでソロって大丈夫なの?」
「攻撃、回復兼用の気功術を手に入れたから、何とか戦えるの」
「気功ね・・」
「もうダチョウの中級ダンジョンはクリアしたよ」
「すげえ。気功って有能なんだな」
「他人も多少は治せるから、1000ゴールドで何人か治してるわ」
「マリイ、最後の一戦で足首をひねっただろ。治してもらえ。1000ゴールドなら、擦り傷治れば御の字だろ」
「そうねユリン。ユリナちゃんお願い」
収納指輪から出した霊薬。魔法使いのオルガさんが凝視している。
「ただの水ってばれたかな。ま、効果は本物だし、怒らないでね」
マリイさんに『超回復』ぱちぃ。
「はっ?」。オルガさんが、すっとんきょうな声出した。
ガタン!って、椅子を倒しながら、マリイさんに駆け寄った。
そしてマリイさんの左手を握った。
「マリイ、中指・・」
また治しちゃいけない部分、治したかなと思ったら・・
「マリイ、よがっだああ、ああ」
何とクール系美人ののオルガさんが、泣き出した。
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