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53 満身創痍のシクル

「はあっ、はあっ、はあっ」


風の曲刀をスターシャの胸に突き立てたターニャ。


彼女の荒い息づかいが聞こえる。


彼女も狩猟で生きるハンター。


倒すと決めた、獲物に憐憫などない。


でたらめなタッグ戦だったけど、土のスターシャに致命傷を与えた。


「ぐああ。雑魚2人にやられるなんて・・」


「答えは簡単よ。私達の方が強かったの。悪人なんだから正々堂々と戦わず、逃げれば良かったのよ」


「くそユリナ・・無能の分際で。シクルが助けてくれるわ」

「無駄よ」


シクルはスターシャの魔法で左腕に大きなダメージを負っている。


どんどん状態が悪くなっている。


それに・・


「ナリスと私に、嫉妬したスターシャが、殺す計画を立てた? わ、私のせいだ・・ナリス・・」



シクルは身体も心もボロボロ。ダメージを与えたのは、スターシャ自身。


「ごぽっ。あぐっ、くそっ、くそっ」



「ユリナさん、お姉ちゃんの仇をとらせてもらいます」


「・・うん、譲るわ」


ずぶ。「ぎゃ」


「ふざけた理由で、お姉ちゃんを殺したのね」


ずぶぶ。「ぎゃああ」


「死ね」




土のスターシャも収納指輪を持っていた。


風の曲刀と合わせて、ターニャに押し付けた。


「これで仲間の仇、6人のうち3人を倒した」



次は4人目だ。


「4人目」のシクルは立ち上がっている。


前屈みで、左腕は下に垂れ下がっている。


拾った剣を1本、無事な右手で持っている。


構えになってない。


「シクル、今からやるわよ」

「・・ええ。受けて立つわ」


「ユリナさん!シクルさんは戦える状態じゃありません!」



「ターニャ、あなたはスターシャを倒して、姉のナリスの仇を取った。シクルのことも昇華できた」


だけど私は違う。


「ユリナさん、どうしてもやるんですか」


「私は、そいつをぶん殴らないと前に進めない。ナリスの仇を取る」



「・・私がユリナさんを止めます」

「無理よ」


「借りた風属性の曲刀を使えば、私の方が攻撃力は上です」


ターニャが私を「止める」のは無理。


私は収納指輪から手甲を出した。


「止めてみなさいよ」

「え」


私はただ、中団に剣を構えるターニャに向かい、全力で走った。


そう、彼女が構える剣の先が、のど元に当たるように意識して・・


「ひっ」


頭では私が『超回復』で怪我が治ると知っている。


ても、ターニャが私を刺せる訳がない。反射的に剣先を右側に逸らした。


私は、彼女の左脇腹にビス付き手甲を食い込ませた。


どこっ。ターニャが吹き飛んだ。


「うげっ、うええ」


「ごめんねターニャ、私は急所狙いだけはうまくなった」


あばらが折れて、内臓も痛めてる。あとで治してあげるけど、今は寝ていてもらう。



再びシクルの方を向いた。


「お待たせシクル」


「はあっ、はあっ。待ちくたびれて、倒れて死にそうだったわ。早く始めましょう。ナリス達の仇を取るんでしょ」




シクルは、右手に持った剣を振りかぶった。


ただ上から、斬りかかってきた。顔にも生気がない。


魔力が完全に切れかけているのか、冷気さえ纏っていない。


応急処置だけした左腕は、肩の下で骨も砕けている。


どんどん紫色に変わっていっている。


私はシクルの剣を避けない。


ざく。バキッ。「あぐっ」


剣と拳のクロスカウンター。だけど、シクルの方がのけぞって倒れた。


『超回復』


「立ってシクル。ナリス達が味わった痛みはそんなものじゃないわ」


「そうね。裏切られた絶望と痛みの中で、ナリスは死んでいった」


「そうよ」ばきっ。ばきっ。


「や、やめてユリナさん・・ごほっ、ごほっ」


「ターニャ、それはシクルに言って。まだまだやる気よ」


「がはっ、そ、そうよ・・」


ばきっ、どごっ。ばきっ。私が一方的に殴る。


「ごほっ、ナリス、ごめんねナリス。私に智恵と勇気さえあれば。ごめんね。ごめんね」


シクルは泣いている。


それを見て、私も涙が出てきた。胸が痛い。


だけど許すわけにはいかない。


最後の力を振り絞った、シクルの剣が私の左肩に食い込んだ。


私は倒れない。


がら空きのお腹に向かって、力いっぱいに拳を繰り出した。


どんっ! からんからんと、シクルの剣が跳んでいった。


もう剣を握る力さえなくなったシクルは、仰向けに倒れた。


私は彼女に馬乗りになった。


左手でシクルの肩をつかみ、右肩が、これ以上回らないくらいに振りかぶっている。


「さあシクル。最後に言うことはない?」


「・・私には何も言う資格はない。・・ナリスのとこに行って謝るわ・・」


「やめてえ!やめてユリナさん!」



ターニャの叫びを無視して、私はパンチを振り下ろした。




https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241


アルファポリスで先行しています

読んでいただきありがとうごさいます

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