35 身体は無事でも心は壊れる
大量のランドドラゴン系の鱗が手に入った。
ダンジョンのフロアをひとつ戻って3階層。ドラゴンパピーに挑戦した。
まずは火属性とタイマン。
一発火球を浴びて『超回復』
準備を終えて、用意したランドドラゴンの鱗で「等価交換」
「しなやかな茶色い鱗。これ、戦闘フォームっぽくなってね?」
ドラゴンパピーに向かっていく。吐かれた火が直撃。
鱗由来の皮膚に、それなりの耐性あり。
『超回復』
ドラゴンパピーのとこにやっとたどり着いた。
噛みつき攻撃を食らったけど、ここは私の領域。
左肩の肉を食いちぎられた。
こっちの攻撃は、体高1・8メートルの眉間に指をペタリのみ。
「等価交換」
感覚が狂ったパピーに反撃させ、必殺セットの繰り返し。
頭部か干物になった火属性パピーが、記念すべき1匹目になった。
「とったどーー!」
あとは、捨て身攻撃の連続。
コスパは最低。
小型ランドドラゴン1匹を使い切っても、ドラゴンパピー1匹の討伐は無理だった。
ランド4匹分の鱗を使って、パピーを3匹の計算となった。
それでも、大量の貴重た素材が手に入る。
残る仇は4人。
ジュリア達の属性は「火」「土」「氷」「聖」。
対抗するために水、風、火、その属性の鱗は最低でも各30匹分は捕まえたい。
精神が疲弊してきても執念で、休みなく戦い続けた。
獲得した属性鱗の個数は「火60」「風30」「水50」「土40」程度。
戦いの合間に鱗を削ぎ取った。
身体、体力を修復する物資は山のようにあり、補給もできる。
72時間ランドドラゴン、48時間ドラゴンパピーのマラソン。
3セット繰り返した成果だ。
プラス72時間でランドドラゴン100匹を捕まえた。
ここで精神に限界がきていた。
『超回復』で身体が縮む代わりに、眠気と空腹まで飛ばせる。
だけど、このダンジョンに休める場所が見つからなかった。
20日くらい、ぶっ続けで活動したら、気持ちが鬱になってきた。
「これは感じたことがない独特の疲労だ。どこかで3日くらい寝ないと・・」
6階。目の前には、4メートルのランドドラゴン。そいつの前で、座り込んで呟いた。
15時間かけてダンジョンを脱出し、久しぶりに陸地を踏んだ。
寝たら再びダンジョンに入る。
今度はダンジョンの7層以降に降りて、強いドラゴンを倒したい。
そして「有機物接触」をするために、耐性が高い革製流星錘を作っておきたい。
◆
陸地に戻った。
疲れてないけど、歩きたくない。
ダンジョン入り口がある滝の近くに、座ってパンをかじった。
20日ぶりの食事を取ると、身体を起こすのも、面倒になった。
「これは私だけが分かる精神疲弊。寝よう。魔物や獣に襲われても、私だけは致命傷を負っても間に合う」
もう一つ思い出した。
ここはナリスの故郷が近いはず。
キセの街から川沿いに南、大きな滝が目安。
確か、ここから1時間くらい歩いた、200人程度の集落にナリスの家がある。
起きたら、そっちに先に行ってみよう。
なんて考えていたら、日が暮れてきた。
そのまま寝てた。
◆◆◆◆
夢を見た。
どこかの村だ。
私は赤ん坊を抱いて、アリサ、モナ、ナリス、ダリアと笑いながら話をしてる。
やがて男5人が帰ってきた。先頭にボアを担いだリュウとオーグがいた。
リュウに赤ん坊を渡すと、その子が泣き出した。
みんなで、慌てるリュウを見て笑っている。
アリサは私と一緒に腹を抱えて笑っている。
モナは優しい顔で笑っている。
ナリスは・・・
ナリスは、何か言っている。
「起きて!」
「ナリス、どうしたの?」
そうナリスに返事返したとき、目が覚めた。
「起きて、お姉さん!」
夕暮れを見ながら寝たはずなのに、今は日が高い。
少なくとも12時間は寝ていたのだろう。久々に頭がスッキリしていた。
そういえば、誰かに呼ばれた。
横を見ると、ショートソードを持った15歳くらいの女の子が私に背を向けて立っていた。
背には弓と矢筒をぶら下げていた。
彼女の前には、オーク1匹が棍棒を構えていた。
「お姉さん、やっと起きたね。逃げるよ」
振り向いた彼女を見て、声が詰まった。
「ナリス・・」
そこには殺された親友の1人、ナリスの顔があった。
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