31 VS水のウイン
奇襲失敗。
倒すと誓った6人の2人目、水のウインが目の前にいる。
こいつら、何をやっても強い。
ウイン達は魔法使いばかりのパーティーを組んでいた。
変則パーティーで、その都度、前衛が交代してた。だから、近接戦闘の練度も高い。
魔法が決め手の、強い冒険者の思うべき。単独でも隙がない。
こいつは槍使い。
4メートル鉄の棒の先に首輪。しっかり拘束用の武器を持っていた。
「対して、私の収納指輪にはリーチが長い武器がないな・・」
そうだ!
あるにはある。
カナワの街を脱出するとき、武器コレクターのギルマスに渡された、他国の色んなアイテム。
それを使うしかない。
ウインは拘束具付き鉄棒を槍のように構えた。
「もう傷も治ったのね。魔力もないのに、理解不能な回復力ね」
「ウイン、あなたの魔法がしょぼいんだよ」
「安い挑発ね。私の魔法は拘束には使いにくい。首輪を着けて奴隷にしてあげるわ」
風のカルナは、私を舐めていた。だから、騙し討ちで倒せた。
ウインには油断がない。
先手必勝。という名のヤケクソ。
拘束されなければ、致命傷を負うのもアリ。
ギルマスからもらったアイテムその1。 蜘蛛の糸風の拘束ネット。
投げ付けて相手の動きを止めるやつだ。
「うりゃっ」しゅわわ~ん。
演劇の演出で使うような糸が、ふんわりと空を飛んでいる。
これはフェイント。
当たっても当たらなくても距離を詰める。
いきなり、ダメ。
空中で3メートルに広がった網を難なくかわされ、鉄の棒で殴られた。
ゴイイイン!『超回復』
「甘い。すごいタフだけど、動きはしょぼいわね」
もらった3個全部を使って、効果なし。
もらった立場だけど、ギルマス、蜘蛛の糸って本当に武器?
ギルマスにもらったアイテム。2、3、4はネタ商品ぽい。
すでに使えそうなのが、ひとつに絞られた。
エントリーNo.5、革のひも流星錘。「りゅうせいすい」と読むそうだ。
鉄の球に革ひもをぐるぐると巻いてある。
そのひも、5メートルに伸ばし、端っこをつかむ。
ギルマスには、私だけが適してる。そう言われた。
そりゃそうか。格上相手。これを使うなら、相討ちが条件。
それで十分。やりましょう。
ウインが、さすまた状の輪に私の首を捕まえる。そこまでは隙がない。
捕まえて、鉄の首輪を操作する。チキチキと締め上げるときしか、チャンスはない。
さあ、仕込みだ。
10分後。
『超回復』の作用で、体力まで全快。なにげに疲れはない。
だけど、無茶苦茶に動いて、少しずつ、動きを悪くしていった。
「意外にタフだけど、逃げ回って、体力もそろそろ尽きてきたのね」
水魔法「水牢」を出された。
大きな攻撃力はない魔法。
私はウインと同じフィールドに閉じ込められた。
行動範囲を7メートル程度に限定。間を詰められた。
鉄棒の先に付いた首輪が迫る。
普通ならひるむ。
だけど、私は感覚が壊れている。
この数ヶ月、私は相討ちばかり繰り返し、生き残ってきた。
鉄の輪っかなんか怖くない。
捕まる寸前、右手に持った流星錘を、横投げで飛ばした。
がしっ。
首を捕らえられ、首輪が作動。チキチキチキと鉄の継ぎ目から、音がする。
幼女変身で、身長110センチ。細い首でも逃れらないほど、首輪がぴったりに締まった。
無問題。
「ユリナ、相打ち狙いね。甘すぎるわ」
流星錘の鉄球がウインの顔めがけて飛んでいる。
右手で私を捕獲した鉄棒をつかんでるから、大きくは動けない。
馬鹿にした笑いを浮かべるウイン。
自分に迫った武器を避けるため、空いた左手で虫を払うような動作をした。
手の甲を柔らかく使い「流星錘」のひもに手を当てて軌道を外にそらした。
ほんの一瞬。
私↓革ひも↓ウイン。
この3つが「有機物」で繋がった。
「等価交換」ぱちっ。
革を通して音が鳴った。
「ふふ、何か言った? 捕まえたわよ。え、ええ? あぐぐ!」
ばしゃあっ。ウインの「水牢」がいきなり解けた。
ギルマスに大感謝です。
私の「等価交換」を数回だけ見た。そんだけで、使える武器をくれた。
鉄のチェーンのような力強さはない。
ミスリル糸のようなしなやかさもない。
中途半端。
ギルマス自身も「武器コレクター」の欲求で集めたもの。
見事な死蔵品なのに、私にマッチした。
ギルマスは私がワルダーのアゴを触って舌まで破壊したとき、考えたそうだ。
「有機物」でつながっていれば、大きく離れていても「等価交換」は有効なのでは?
そう推測した。
5メートルある革のひもは、私が栄養を奪う吸引器。
私がウインから栄養を奪い取る、伝達役。それを見事に果たしてくれた。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241
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