30 ヤバいお姉ちゃん
友人達の仇。
2人目、水のウインににらまれている。
私の体は今、110センチまで縮んでいる。
奇襲してウイン体のどこかに触れさえすれば勝てる。
逆に、接近戦に持ち込まねば勝ち目はない。
なのに、向こうの警戒度はマックスだ。
いきなり正体がばれた。逃げるか、戦うの二択で、早くも混乱している。
最初に倒した風のカルナは言った。
ジュリア達は、お互いに自分だけが優位に立とうとしている。
信頼関係はない。
そして仇の6人全員、貴族の関係者なのに、大事にされていない。
あふれる魔法の才能に対し、弱い立場を強いられる生まれ方をしている。
美しく火魔法適正Aのジュリアでさえ、貴族の女遊びで生まれた子。
魔法適正は最高なのに、侯爵家での立場は低い。
ウインの男爵家も、時代遅れの古いしきたりに支配されている。
女だから。それだけで、政略結婚の道具としか、見られていない。
カルナの言葉は、あながち間違いではないだろう。
こいつら、実家の貴族家さえ、出し抜こうとする。
みんな、私のスキルの片鱗を見た。
火を浴び、100メートルの高さから落ち、直後に歩くことを可能にするスキル。
回復にしろ、防御力増加にしろ、中身は破格だ。
奴らが考えることは二つ。
新しい候補地を探し、私と同等のスキルを狙う。
または私を捕縛して使役する。
いずれにせよ、「分け前」を減らさないため、単独か少数で動く。
そこが私の強みになる。
ウインは水魔法の準備をしている。すごい圧だ。
「ウイン、弟君の顎と両手の指は、私が治療しないと治らないわよ。騎士4人の手と一緒に腐り落ちるわ」
「でしょうね。御者も入れて6人の異変かある場所には、魔力も流れていない。まるで、そこだけミイラよ」
「可愛い弟のことなのに、無関心ね」
「裏で操る気だったのに、馬鹿すぎて廃嫡されそうなの。最後に私の役に立ってもらっただけ」
こいつも優しかったけど、偽りの仮面だった・・
「ユリナ、あなたのスキルがよく分からないけど、ワルダーを再起不能にできる力はあるのね」
「仲間になってあげるわ」
「遠慮する」
「なぜ?」
「あなた、感情を隠すのが下手よね。ナリス、アリサ、モナ、3人の仇を取ってやるって顔してるわ。寝首をかかれるの嫌だもん」
「それなら逃げたら?今なら引いてあげるわよ」
「それもダメ。あなたって、破格の『何か』を手に入れたのに、相変わらず魔力がゼロなんだもの。逃がしたら、魔力感知では見つけられないの」
やっぱり魔力は最低レベルか。
「以前も笑ったわ。ユリナと、モナ、ナリス、アリサの4人が一緒にいても、ゴブリン1匹分以下の魔力。ふふふ」
「・・うるさい」
「私達の感知でも見つからないほどの無能。逆にすごいって、スターシャと大笑いしてたわ」
「仲間を馬鹿にするな!」
思わず駆け出していた。
簡単に挑発に乗った。
分かっていても、死んだ仲間を馬鹿にされるのが嫌だった。
「ウオーターランス」
ドリュリュ!「ぐっ」
『超回復』
慌てて跳ぶ前に、右脇腹に食らった。3メートルは飛ばされた。
私は倒れたままになってる。
「もう終わり?駆け寄って来たってことは、射程圏が短いスキルかな」
近付いて来い。
ワンパターンだけど足首つかんで、カルナみたく干からびさせてやる・・
「毒魔獣拘束用の鉄製首輪でも使うか」
なぬ? ヤバい。
鉄の棒が付いた、開閉式の首輪が収納指輪から出された。
先がU字の刺股状になっている。
輪っかに獲物が入ると、手錠のように相手の大きさに合わせて閉まる仕組み。
毒を持つ爬虫類、大型獣を捕獲するための拘束具だ。
仕方ないから立った。
「あらユリナ、しぶといわね」
鉄には「等価交換」が使えなかった。あれは無機物だろう。捕まったら窮地に立たされる。
私は左側にある川に逃げたいが、ウインは魔法の準備も終えている。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241
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