表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/188

28 好きだからサヨナラ

突然の別れがきた。


リュウ達のパーティー「暁の光」は、すでに私の大切な居場所。ここに留まりたいが、今のままだとリュウ、オーグ、ダリアに迷惑がかかる。


無力化した男爵家のワルダーと騎士4人を利用して水のウインを先に攻めたい。


足取りが重いワルダー達を冒険者ギルドから出るように促すが、後ろから声がかかった。




リュウだ。


「すまんユリナ。みんな俺のせいだ」


「・・違うよリュウ。私は、ダンジョンでスキルを手に入れたときから、こうなる運命だったの」


「暁の光」の3人とギルマスだけ、私の近くに寄ってもらった。


ジュリア達にダンジョンで陥れられたことから、順を追って話した。


友達3人が無惨に殺されたこと。


炎を浴びながら、高い崖から落ちたときに、スキルを得たこと。


落ちた直後に立ち上がったところをジュリア達に見られたこと。


私を捕まえに来た風のカルナを殺したこと。


「ジュリア達はギルドの追及を避けるため、街を去った。だけど、私の捕縛を命じられたカルナは行方不明だし、いつかは私のスキルを探りに戻ってくると思ってた」


「く、尚更、俺が男爵家のやつなんかに関わらせなければ」


「ううん。たまたまワルダーと水のウインが繋がっただけ。ウインが隣街にいるってことは、すでに動き出してたってこと」


「それでも・・」


「いいえ。考えを変えれば、これでウインから不意打ちを食らわずに済む。それは結果的に良かった」


「・・ユリナさん、これからどうするんですか?」


「全員倒せるか分からないけど、ある程度の決着が着くまでは、ここにはいない方がいい」


「登録」

「そうです。もう私達は仲間です。出ていく前にパーティー登録をしましょう」


「・・ありがとう。けど、ダメよ」


「何でだよ、ユリナ」


「みんなが私も「暁の光」に入れって言ってくれたとき、本当に嬉しかった。だけど、このスキルのことがあるから先延ばしにしてきたの」


「ユリナさん・・」


「ギルドの記録では、私はソロ冒険者。他の街から貴族や有力者が来ても、パーティーを組んだ記録がなければ、3人との線は薄くなる。そうよねギルマス」


「・・ああ。私もギルマスとして、権力者に聞かれても無関係だと言える」


「でしょ。ダリア達が聞かれても、収納指輪持ちだから便利に使ってたって言って」


「そんな訳ないだろ!」


「リュウ、ガキね・・」


「何だと!」


「そんなことだから、みんなを危険をさらすのよ」


「ぐ・・」


「オーグみたいに冷静になりなさい」


「なってる!」


「ダリアみたいに周りをしっかり見なさい」


「見えてるよ!」


「馬鹿なガキ。 ダリアもオーグも危ない目に遇わせないために、引くことも覚えなさい。嫌でも嘘をつきなさい」


「うっせえ、ユリナなんか、どっか行っちまえ!」



「・・行くわ」


涙をギリギリでこらえている。


あと一晩だけでもみんなと過ごしたい。リュウの温もりを身体に刻みたい。


だけど、ここに止まることでリュウ達3人を危険にさらす。恐らく、この街の領主は間を置かず動き出す。


私のスキルがハイヒールやグレートヒールどころではないほどの回復力を秘めていることは、そろそろ伝わるだろう。



リュウとは、綺麗に離れたかった。


だけど、彼が私に未練を残すことは、それがそのまま彼のリスクになる。


嫌われるくらいの方がいい。貴族に彼らと私の関係性が悪かったと思わせるためにも・・



「俺が頼りないから、嫌なのか」


「そうよ。もうリュウが嫌いよ」


・・好き。


「もう、俺のことは嫌いか・・」


「大ッ嫌いよ!」


・・離れたくない。




「嫌いなら、何で革袋に入れて、収納指輪なんかくれた」


「・・」


「なんで、収納指輪に武器や防具だけじゃなくて、ユリナのギルドカードも入ってるんだよ」


「う、うう、うえっ」


「また帰って来たいんだよな。俺らのところに戻ってくる気なんだよな」


リュウが近付いて来た。離れなければ未練が残る。


「リュウ・・」


これからは何人も人を殺すだろう。だから、リュウ達を突き放すしかない。


だけど、私は元からそんなに強い人間じゃない。


『超回復』で体は治しても、心は疲弊していく。


リュウに抱き締められた。


「まだ、色んな意味で俺は力が足りない。今、一緒に行っても足手まといになる」


「そうよ。死なせたくないの・・」


「今回のことで痛感した。俺はちょっと喧嘩が強いガキのまんまだ」


リュウに会えて良かった。


仲間を亡くして、たくさん泣いた。だけどリュウがいてくれたから、涙が辛いだけじゃなかった。



「あなたは、オーグやダリアと一緒にのしあがって行ける。可愛い子もたくさん寄ってくる。こんな冴えない年上女なんか、たちまち忘れる」


「忘れない。だから、お前の持ち物は預かっておくだけだ」


「・・忘れて・・」



ありがとうリュウ。言葉に出さないように、心の中で呟いた。



そっとリュウの手を離して、カスガ男爵家の馬車の方に、ワルダー達と向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ