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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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172/188

172 ミシェルのデビュー戦

アマク伯爵家を訪れる予定だった。


ところが、その家の馬車が襲われている。


襲撃者は盗賊。だけど、妙に動きの統制が取れていて、数も多い。


ノエルの判断では、アマク家の誰かをピンポイントで狙っている。


ここにいるのは、単なる野盗ではなく、計画を立てて動いている組織だ。


私達は、ノエルに従うだけ。


「ノエル、私達に指示して」


「ミールは馬車の後方、馬車と盗賊の間で戦って。ユリナとミシェルは馬車へ。私は前に行く」


「了解!」


ミールが火遁の術。小さな火の玉を沢山飛ばして敵を牽制。

その間に、私達は自分の位置に走った。


敵40人。貴族家護衛8人。馬車内の戦闘員人数不明。私達が4人。



私とミシェルが馬車に到達。4人の盗賊が馬車の扉を空けていた。


いきなり馬車から誰かが飛び出して、盗賊の1人が斬られた。


その剣を抜いた貴族風男子が若い女子をかばいながら、馬車から下ろした。そして混戦。


「メリンダ、道を開くから君は逃げろ」


「アンソニー兄様、ダメです」


ずざっ。「ぐあっ」「きゃあ!」


貴族風男子が腕を切られ、メリンダと呼ばれた方の美少女が、盗賊風に捕まった。


「待った」

「誰だ!」


まだ「アイリス」は名乗らない。


誰だと聞かれて困った。


「え~と、通りすがりのソロ冒険者ミシェルだ」


「そうよ、私も無関係のソロ冒険者ユリナよ」


かなり間抜けな自己紹介である。


「邪魔するな。この女を刺すぞ」



「ミシェル、初の盗賊退治にトライよ」


距離4メートル。メリンダ嬢をミシェルにお願いして、私は男の人を治療に走った。


「よし。やっと俺も役に立てる」


若い方の女子が人質に取られたが、奥の手がある私達は余裕だ。


それを考え、ノエルは役割を決めた。



ここは、ミシェルのデビュー戦だ。


初の対人戦で、相手は殺意を持っている。


ミシェル、推定レベル70、HPは420をミノタウロス変換で底上げして推定HP588。魔法「ダーク」


敵は3人。ミシェルは人質を取った男に向かって走り出した。


「ダーク×3」


素早く3人の男の頭を闇の雲で包んだ。タイミングがいい。


相手にステータスで勝るものがいるかも知れない。

だけどミシェルはレベル90~100の魔物と戦ったばかり。


練ってきたものの、濃さが違う。


ミノタウロスさえ止めた的確な魔法。魔法と連動して繰り出される大剣技。


「ぐわっ」


人質を取った盗賊の剣を跳ね上げて、メリンダ嬢を奪回。


左手で抱き寄せ、回転しながら盗賊の首に大剣をたたき込んだ。


無駄がない、綺麗な動き。


見とれてしまった。


ミシェルも必死に頑張ってきた。


元来のパワー不足を補うため、回転技を練習していた。


休憩中も、こっそり剣を振っていた。


私達と生きていくために、必死になってくれた。


『超回復』を何度も頼まれた。それは、努力をするため。



私達と出会う前から磨き続けた技。

そこに短期間で上昇した身体能力が加算された。


ミシェルの「スピンソード」


残りの盗賊2人も、華麗に舞うミシェルに斬られた。


そして自分の首にしがみつくメリンダ嬢を抱えたまま、柔らかく着地した。


左手でメリンダ嬢を抱え、右手に長剣を持っている。



まだ盗賊は、ほとんど残っている。


だけど私、ノエル、ミールは、敵など見ていない。


格好よく戦ったミシェルを見ていた。



そして、私、ミール、ノエルは心の中でハモった。



『なんで、嫁3人以外の女を抱いて、華麗に舞ってるんだよ!』



メリンダ嬢が恐怖からミシェルにしがみついた。


それを見たノエルが「サラマンダー」を放った。森が近いのもお構いなし。


メリンダ嬢が離れない。


それを見たミールが火遁を放った。すでに無力化された盗賊風の頭に火が付いた。


「ふっ。ミールもノエルも大人気ないね・・」



けど、メリンダ嬢が目をつぶってミシェルの腕の中から降りない。


それを見た私は、スライムを出した。


ノエルとミールの大雑把な攻撃を掻い潜ってきた盗賊風2人が犠牲者だ。


「八つ当たりのスライムパンチーー!」


ボムっと鳴った破裂音が、私の心の叫びと知れ。



何かを感じたメリンダ嬢は、ミシェルの腕の中から降りた。


生き残った盗賊の男5人を『超回復』で治し、拷問用に連行している。


幸いに護衛騎士、御者に死者はいない。



「あなた、アンジュの妹のメリンダよね。こんなとこでどうしたの?」


「ノエルさん、みなさん、ありがとうございます。だけど、大変なことになっていて、急いでいるんです」

「何があったの」


「すみません。アンジュの婚約者、ヤシラ家三男アンソニーです」


かなりの慌てようだ。


「みなさんに大変お世話になりましたが、アンジュの命が危ないのです。ここは失礼させて下さい」


私の出番だ。


「待った。命が危ない人がいるなら、私が行く」


アマク伯爵家までの30キロ。私のスキルを使えば1時間もかからず行ける。


「ミール配列を決めて」

「了解」


ミールがメリンダを抱える。

ノエルはアンソニーを背負った。

ミシェルと私はサポート係。


慌てた護衛騎士を置いて、私達は走り出した。


私の全速が人間を抱えたミール、ノエルより遅くて時速45キロ。


「超回復走法」で同じペースで走る。

誰かが遅れ始めて私が追い付くたび、『超回復』をかけた。


走りながら事情を聞いた。


今回のアンジュとアンソニーの婚姻に反対する親戚がいる。


アマク伯爵家、ヤシラ伯爵家の結びつきが強くなることを良しとしない。


そいつが毒を盛ったそうだ。


犯人のことは後回し。とにかくアンジュの命を救うために、解毒剤が必要だ。


解毒剤の材料になる、ポイズンシクラメンという植物。


それを襲撃地点近くの実験農場で栽培している。


アンジュの元に届けるため、アンソニーとメリンダが馬車を走らせていた。


ちなみにアンソニーは、アンジュを通してノエルを知っていた。


さらに、ワイバーン騒動の流れから、私の存在も認識している。


何より時間がない。


私達は走り出して45分後、アマク伯爵家に到着した。




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