表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

164/188

164 ミシェルに会いに

無茶苦茶だったけど、ミールとノエルの初顔合わせは終わった。



今、初心者冒険者に干しオークを振る舞いながら談笑している。まだ昼前だ。



「じゃあ、ユリナ様とノエルは本当に友達なの?」


「今のところはね。これからユリナにアタックするの。あ、性別は女でなく男としてね」


「ノエル、余計なこと言わないの」


「いいじゃない。一緒に死線のさらに向こう側までくぐったし、まったくの他人でもないでしょ」


「悔しい。私もユリナ様とワイバーンに捕まって、空飛ぶ。ユリナ様、ワイバーン探しに行こうよ!」


初心者達はつぶやく。


「すげえ、どっちかっていうとブスのユリナ姉ちゃんを美女2人で取り合ってる」

「でも、女と女だぜ」


「ハーフエルフってどっちにでもなれるんだよね」

「母ちゃんが言ってた、ちじょうのもつれだよ」


「しゅらば、ってやつだね」



恥ずかしい。とにかく、恥ずかしい。


だけど浮かれられない自分がいる。



ミシェルのことを放って置けない。


私が帰ってきた。もう、ミールとミシェルが離れている理由はない。


私は土下座してでも、再び仲を取り戻してもらうつもりだ。


2人の仲がうまく行っても、ノエルと付き合うなんて考えていない。


とにかく謝りたい。


「ミール、ミシェルと別れちゃダメ」


「今後のことは決めてる。ユリナ様が戻ってきたら、一緒に会いに行くと言ってある」


まだ昼前。この3人なら、100キロ先のリキンでも夕方前に行ける。


私のスキルを有効利用して行く。


「じゃあユリナ、私はオルシマの街に入って、住むとこでも探すわ」


「ノエル」


「なに、ミール?」


「あなたも来るの。3人で一緒にリキンの街まで行くよ」


ミールの強い語調。有無を言わせない。


国境に近いリキンの街まで、オルシマから南に100キロ。


国境に向かう整備された南北街道。

一番スペックが低い私でも、時速45キロで走り続けられる。


ミールとノエルが両方とも私を抱えて走ると言った。


どちらかに頼んでも、再び戦闘が始まる。だから私に合わせてもらった。


危ないことにならないよう、必死に走った。一つだけ、ミールに言った。


「ミール、ミシェルと幸せになって欲しいってのは、本心だからね」


「ユリナ様もミシェルが好きなのは分かってた。2人の答えは決まってるんだよ」


「それって・・」


ミールは答えず、スピードを上げた。


ノエルも私達に遠慮するように、どちらからも距離を取って走っている。


わずか2時間半でリキンの街に到着した。


ギルド前に到着した。


ミシェルがどこにいるのか、今日は帰ってくるのか分からない。


だけど、ドキドキしている。


酒の流通が盛んな街だけど、アルコールを買いあさる、気持ちの余裕はない。


気持ちを落ち着かせるためにエールを出して飲んだけど、まったく酔えない。


一気に8杯ほど、木のジョッキであおった。


「ミール、正直に言うよ。やっぱりミシェルと会うのは怖い」

「ユリナ様、どうして」


「あんたとミシェルがくっつくのは嬉しい。だけど・・」


「ミシェルが好きなんだよね。男として」


「・・うん、好き・・」


「ユリナ様、私とミシェル、どっちが好き?」

「え、えーと」


核心を突かれた気がした。最近の心の中で沸いていた疑問なんだ。


なぜ、2人がくっついてうれしいんだろう。


そして切ないんだろう。


「そうか、2人が一緒になることより、私の前から好きな2人が一緒にないくなる。そっちが悲しかったんだ」


ミールが、また問いかけてくる。



「じゃあ、私とミシェルとノエル、誰が一番好き?」



おかしな質問。


だけど、私が最近考えていたことだ。ミールに心を読まれてる。


「女のミール、男のミシェル、両性のノエル、もうほとんど、好きって気持ちに違いがない」


ミールが微笑んだ。


「私、『超回復』の使いすぎで、頭がおかしいのかな」


「ユリナ様がおかしいなら、私も頭が変だよ」


どういうこと・・


ここはギルド前の噴水広場。


私もミールも、ノエルも黙り込んだ。


水の音、行き交う人の声、そして外から帰ってきた冒険者の装備の音がする。




「・・ユリナ」


陳腐な芝居の一幕か・・。知り合いの冒険者と一緒に、ミシェルが近づいてきた。


少し精悍になっている。シャツの上に鎖かたびらと魔鉄の胸当て、普通のズボン。


そして腰にショートソードをさげている。


私はミシェルに再会したら、どんな顔をするのか自分でも想像ができなかった。


笑わなければ。

それが出来なければ無表情。

とにかく泣くな。


自分で決めていた。


だけど。


ミシェルの顔がぼやけて見えない。


出会ってわずか数か月。その上に、1か月以上も逃げていた。


だけど、ミールと3人で歩いたこと。


特級ダンジョンに潜って楽しかったこと。


いいことしか思い出さない。


ミシェルがそっと、手を取ってくれた。


「元気だった?」


いずれは距離を置くことになっても、今だけはどうしようもできない。


体は超越者に足を踏み入れていても、心はただの女。



ただ、ミシェルを真っ直ぐ見た。


何も言えずに涙を流すだけだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ