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ダンジョンで『』を手に入れました。代償は体で払います  作者: とみっしぇる


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161 やっぱり私は馬鹿だ

私とノエルが2人で旅をして3日が経った。


ノエルとはやっぱり気が合う。


他愛もない話もたくさんした。私の生い立ち、ノエルの生い立ちの話もした。


そして、ハーフエルフと人間の寿命の違いから死に別れたノエルの旦那さんの話も聞いた。


だけどノエルは、2歳で亡くなった娘さんの話はしなかった。


早朝の海岸沿いを歩いている。


ノエルの冒険者ランクはD。


ステータス、実力はAランクでも、ランクアップ試験が面倒。そんな理由で60年も据え置き。


私はEランクに降格して5ヶ月くらい。


「ノエル、冒険者ランクはどうすんの?」


「こだわりはないけど、ユリナはEから上げないの?」


「えへへ・・。私はしくじり降格でEなんだ。あと半年くらいで自動的にCランク昇格。そのまんまBランク狙うよ」


「そっか、じゃあ。私は、オルシマ到着後から一番早いCランク試験受けるよ」


私に合わせるそうだ。


ミールが認めてくれれば、ノエルも「アイリス」に入る。


パーティー内に高ランクが多いほど、イーサイドのような貴族への牽制にもなる。


ノエル、ミールは基礎能力からして、飛び抜けている。


問題はミシェル。


彼にも、ランクを上げてもらいたい。私の次にスキルに恵まれてない。


だから、レベル120でHP720になってもらうのが理想。


平凡なステータスは非公開。驚異のレベル120だけ公開すれば、簡単に手を出す相手もいない。


方法は、私の強制レベリング術。特級クラスのダンジョンに潜るのがいい。


だけど、アプローチのやり方を考えねば。


私はミシェルが好きだとバレているのだから。



海岸線沿いの南側に小さな港町が見えて来た。


その街のギルドでレベル測定をする。


ミールとミシェルの討伐履歴が気になってきた。


おそらく「アイリス」にミシェルも加わっているはず。情報は開示してるだろう。


一緒に、どんな活動をしているか、確認したい。


「ミールの伝言もあるかも。久々にギルドで確認するかな」


「ユリナって、私と会う前から、ギルドカードを更新してないの?」


ノエルの声が尖っている。


「もしかして、ミールちゃんから逃げる前から・・」


「うん、何の履歴も残してない」


「パーティーを組んでる相手に、生存確認させる意味もあるんだよ。分かってる?」


「私、簡単に死なないのはミールも知ってるから・・」


「違うでしょ!」


語気が強くなった。


「ミールちゃん、あなたを本当に慕ってるんでしょ。ユリナがそんなじゃ悲しいでしょ」


痛いとこ突かれて、反発してしまった。


「いいんだよ。今は私が邪魔なの。ミールとミシェルで仲を深めればいいの」


ノエルは黙った。


私も自分が言い返したくせに、次の言葉が出なかった。


ノエルと会って初めて、テンションが下がった。


しばらく、無言で歩いた。


そした海辺の村に入り、ギルドに向かった。


「ノエル」

「ん」

「ごめん」

「うん」



ギルドに行くと、カウンターは空いていた。


まずはレベル測定。ノエルはレベル91、HP1274。


魔法職。魔力が突出するタイプのくせに、物理戦闘でもBランク剣士を軽く上回るステータス。


私はレベル65でHP195。世界最低クラスのレベル65だと思う。


「ユリナって、出会ったときレベル62。ワイバーン、ゴーレム、その他諸々で65って足りなくない?」


「私のスキルの効果は、現象として扱われ経験値ゼロ。ショボいパンチだけに、経験値が入るんだよ・・」


さすがのノエルも驚きである。


「超強力スキル。そんな落とし穴があったのね」


受付嬢に「アイリス」で伝言がないか尋ねた。


『ユリナ様、待ってる』


ミールからのメッセージが2週間前に届いていた。


「ごめん、ミール。・・・・えっ」


討伐履歴を見て驚いた。



声も震えてしまった。




約1ヶ月前、ミール、ミシェルでペルセ中級ダンジョンを攻略。私が逃げる直前だ。



だけど・・


私が逃げた日から先は・・


その後のミールは、オルシマに日帰りで行動している。


私に無事を知らせる意味だろう。ウサギ1、2匹が毎日のように換金してある。


それだけだ。


「な、なんで」


それに・・それに。



パーティー「アイリス」は更新ストップ。ミールとミシェルで活動した痕跡は皆無。


動揺しながら、ミシェル個人の開示履歴も見せてもらった。



ミシェルは・・。


オルシマから100キロ南のリキンの街。そこでしか、素材換金などの記録がなかった。



私のせいだ。


一緒に行動し、愛を育んでいるはずミールとミシェル。

同じ街にさえいない。


「ユリナ、どうしたのよ。顔が青いよ」


「私は馬鹿だ。馬鹿すぎる」



逃げてうやむやにしたくせ、私がミールとミシェルから離れたら、2人はくっつくとか思っていた。


浅はかだ。



私は「超回復」で助けた人が、私をどう扱うか知っている。


特に闇属性の子は、聖母を見る目をして、慕ってくれる。


私はミールとミシェルと、気さくな関係になれた。


けれど、その前に、窮地から救った恩人だったことを忘れていた。


ミールが、私との時間を、どれほど大切にしていたのか忘れていた。


ミシェルのことが好きな私が消えたとき、義理堅い2人がどんな行動を取るのか。


そんな簡単に分かることを浅く考えすぎていた。



「きっと2人は、私のために距離を置いたんだ。ごめんよ、ミール、ミシェル」


私は、2人を引き裂いただけだった。




ギルドのカウンター前だということも忘れ、下を向いて泣いた。



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