16 気のいい若手冒険者
「必殺技のようなもの」
私のスキルは、他人に分かりにくい。
とにかく、体高1・5メートルのボアの頭の中を破壊した。
猫パンチの一発で。
パワーが大して上がっていなさそうな私の技。
それでも地上の魔物なら何とかなった。
そこに現れた、若い冒険者3人が驚いている。
「素手だよね。武術家?」
「ボアの鼻と目から血が吹き出してる。初めて見た技だわ」
「驚異」
「私はカナワの街の冒険者でユリナ。あなた方も冒険者?」
「あ、私達は南の村から出てきた新人冒険者です」
「まだ、カナワに来て半月だけどね」
「Fランク」
アーチャー女子は細身美人のダリア。背丈は160センチ。
男子は180。均整が取れたちょっとハンサム寄りの剣士リュウ。
そして、同じ180センチ。だけどカッシリワイルド長髪の斧持ちのオーグ。
いずれも農家の子。
長子ではなく、冒険者になることを決め、村でも3人で狩りをしていた。
一攫千金を狙い、村から出てきたそうだ。
「3人とも16歳なのね。改めて私はユリナ。Eランクで18歳」
「初めて会いましたよね」
「入れ違いかな。半月ほど行方不明になってたから・・」
「あっ、もしかして噂の生還者」
「噂とは?」
どうやら私は、ちょっとした噂になっているらしい。
高ランクダンジョン内で仲間とはぐれ、奇跡の生還を果たしたEランク冒険者。
高位ダンジョン1階から10階への落下から生き残った。
そこから自力で8階まで上がった、自己回復スキルの持ち主。
驚異のできごとの連続。
この辺は、私がギルマスを通して公開している情報通りだ。
今日の彼らの獲物はスモールボア1匹と一角ウサギ3匹。
街に帰る途中でミドルボアに襲われる私を見つけ、獲物を置いて駆けつけてくれた。
「ごめんなさい。気を使わせたわ。獲物も投げ出させたし、あっ」
ゴブリンが2匹いる。
彼らが投げ出したウサギ3匹を盗んで、すでにダッシュしていた。
「ああ~」
「せっかく多めに捕まえられたのに」
「減額・・」
申し訳ないっす。
「私のせいでごめんなさい。良かったら、このミドルボアをもらってくれない?」
「拒否」
「だめですよ。私達はまだスモールボアがあるから、いいです・・」
「そうだ。獲物の管理も自己責任だって、ギルドの人に言われてる。お姉さんは気にすんな」
本来、冒険者が戦っているときは自己責任。
私が殺されようと手助けする義務は彼らにない。
冒険者になって日が浅く、暗黙のルールを知らないなかも。
それを差し引いても、駆けつけてくれたのは彼ら自身の人の良さによるものだろう。
「だったら、お詫びに手伝うから、もう少し狩りをしない?帰ったらご飯もおごるから」
人恋しい私。こんな提案をしてみた。
「お姉さん、見た目より強いからな。まだ日も高いし、こっちからお願いしたいくらいだけど、獲物を置いて行けない」
「収納指輪があるの。容量に余裕があるから運べるわ」
「へえ。意外にお金持ち?」
私が倒したミドルボア、彼らのスモールボアを収納。草原と森の境界を越え、危険地帯に入った。
そういえば、アリサたち3人と偶然に出くわした一角ウサギを倒したことがある。
いつかは4人で普通の狩りをしてみたいって、話したな・・
結局、ミドルボア1匹と一角ウサギ4匹をつかまえ、4人で街に帰ることになった。
私が魔物の攻撃を正面から受けた。盾役です。
その隙に3人が獲物を倒す、奇妙なフォーメーションだった。
私は一角ウサギの角が太ももに刺さり、ボアに飛ばされた。
宙にも舞った。
だけど年上のプライドがある。
ギリギリで跳んで避けたと言い張った。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/295429334/506718241
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読んでいただきありがとうごさいます